コラム

一生懸命走っているように見えない息子

2012年11月27日

池上正さんが子どもに対する悩みや、保護者・コーチの子どもを取り巻く大人に関する疑問や悩みに答えるこのコーナー。今回のお悩みは手を抜いて走る姿のお子さんについてご夫婦間で起こった相談についてです。

◎自宅(ピッチ外での子育ての悩み)

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(質問者:小学4年生の保護者)

 幼稚園からサッカーを始めて現在小学校4年になる息子のことです。チーム練習で走るトレーニングを行うとはじめの50メートルはトップグループで行けるのですが、その後明 らかにスピード落ちて下位グループでゴールします(手を抜いて走っています)。走りは子どもの通う小学校の同学年の中ではトップです。休日も時間があれば5㎞のランニングをしています。しかし、いつも下位グループでゴールする息子の姿を見て嫁がサッカーを辞めなさい、サッカーは向いていないと息子に言います。確かに同学年のチームメイトは一生懸命に走っていて、息子の手を抜いて走る姿を見るともどかしい気持ちなります。どうして手を抜いて走るのかと息子に聞くとしんどいからと言います。試合でも以前比べ1対1で抜かれたあとなどすぐにあきらめてしまいます。
 息子はサッカーが好きで続けたいと言いますが、嫁は辞めさせるつもりです。嫁は再三同じこと(技術には個人差が有 り差を埋めるのは難しいが一生懸命走ることは誰にでも出来るのにしない)を注意し、その度にサッカーを辞めさせると息子に言います。息子は泣いて今度は頑張ると言っては同じことをくり返します。そんな息子に嫁としては我慢ができないようです。私は、子ども自身がしんどくても一生懸命に走らないといけないと考えてくれる日が来ると思い息子をかっばてサッカーを続けさせてきましたが、最近は辞めさせることもひとつの手かなと思うようになりました。息子にサッカーを続けさせる方が良いのか、ご意見を伺えますでしょうか。

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走れた達成感や自信は自分から追求して生まれます。
乗り越えるチャンスを親が奪わないで

 結論から言いますと、子どもが好きでやっていて、その子自身が「続けたい!」と思ってやっているなら、続けさせた方がよいでしょう。親の価値判断や感情でやめさせてはいけません。

 奥様が「一生懸命走ることは誰にでもできる」とおっしゃっているようですが、誰にでもできることではありません。ややもすると正論のように聞こえますが、私は違うと思います。きついときに精一杯走る大切さに気づいたり、走れたときに達成感や自信を得ることは、自分自身で追求しなければ達成されません。

 息子さんはまだ4年生。そういったことに対してまだ覚醒していないようですが、サッカーを続けていく間に目覚めていくものです。それなのに、そのチャンスを親御さ んがつぶしてはいけません。

 ご相談のメールを読むと、親御さんがサッカーをする息子さんに対して攻撃的な印象を受けます。怒っているように見えます。攻撃的になるのは、その前に感情を乱されているからですね。どんな場合でも、親が感情的になって「もう、やめてしまえ!」と怒鳴って何かをやめさせると、次にまた何かを始めたときに同じことが起きるものです。他のスポーツや習い事を始めても「また一生懸命やってない!」となります。同じことの繰り返しですね。そういったことが続くと、子どもはどうなるか。自分で何かを乗り越えるチャンスをことごとくつぶされるので、自信を得られず無気力になる可能性も少なくありません。

 お父さんは「サッカー を辞めさせるのもひとつの手かも」とおっしゃいますが、さきほど述べたように、辞めた後に息子さんがたどる道を想像してみてください。幸いにも「このまま辞めさせていいのかな?」と疑問を抱いてメールをくださったようなので、ぜひいま一度よく考えてみましょう。

 子どもの心は、将棋の駒のように親が勝手に動かせるものではありません。好きになるのも、立ち向かうのも、子ども次第。成長の速さも時期も一人ひとり異なります。身守ることが一番大切な親の役目だと思います。私の意見をそのまま奥様に伝えてもよいので、一度ご夫婦で何が大事なのかを話し合ってみてはいかがでしょうか。

 最後にもうひとつ。小学4年生が5キロのランニングなどしては身 体に悪いですよ。こちらはすぐにやめさせてください。身体の成長を阻む「活性酸素」についてご存知でしょうか?運動をやり過ぎると体内にたまってしまいます。また、何よりも、サッカーは陸上競技ではありません。

プロフィール

池上 正(いけがみ・ただし)

1956年大阪生まれ。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼年代や小学生を指導。02年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。同クラブ下部組織の育成コーチを務める。03年より小学校などを巡回指導する『サッカーおとどけ隊』を開始、千葉市・市原市を中心に190カ所におよぶ保育所、幼稚園、小学校、地域クラブなどで延べ40万人の子どもたちを指導した。2010年1月にジェフを退団。同年春より「NPO法人I.K.O市原アカデミー」を設立。理事長としてスクールの運営や指導、講習会、講演をこなすかたわら、大学や専門学校等で講師を務めている。2011年より京都サンガF.C.アドバイザー、12年2月より京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターに就任。08年1月に上梓した初めての著書『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(08年・小学館)は、11年12月現在で7万部に迫るベストセラー。11年9月には指導現場で、その実践例を大公開した『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』が発売。U-12の育成に携わる指導者や保護者には必見のDVD付き書籍となっている。

近刊情報

『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』

指導者や保護者から多くの支持を得ている『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』の著者・池上正氏が普段からよく使う象徴的な言葉(フレーズ)を取りあげながら、どのように子どもと接すればいいのか、言葉をかければいいのか、子どもとの距離のとり方……子育てやサッカー指導に悩む方々の具体的な解決策として、 “オトナが守るべき10のおきて”を伝授します。

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