コラム

夏に戦力外通告され試合に出られない

2012年12月18日

池上正さんが子どもに対する悩みや、保護者・コーチの子どもを取り巻く大人に関する疑問や悩みに答えるこのコーナー。今回のお悩みは戦力外通告を受けたお子さんのご相談です。

◎自宅(ピッチ外での子育ての悩み)

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(質問者:小学6年生の保護者)

 息子は小1からサッカーをしてきましたが、6年生になった今夏、チームから戦力外通知を受け、試合に出られなくなってしまいました。練習はできますが、試合は選抜メンバーだけで行くことになります。今後選抜メンバーに選ばれる可能性はほとんどありません。息子は、「万が一の可能性にかけてみる」と言っていますが、周囲の情報によると選抜メンバー以外の子は卒業記念の1試合に出場できるくらいだそうです。まだ半年あるジュニア世代を試合なしで過ごすのは、かわいそうです。何より試合なしでは上達できず、他のメンバーとさらに差がひらいてしまうのではないか心配でもあります。6年生で今さら移籍するのもどうなのでしょうか? 息子は試合には出たいけれど、移籍までは考えられないようです。でも、試合が今後ないのは辛いと言っています。親子で本当に悩んでいます。

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練習試合で技術向上に専念しよう
焦らなくても大丈夫!!

 6年生の夏で「戦力外通告」はひどいですね。要するに、例えばAチームとBチームに分けてしまってすべての公式戦をAチームだけで戦うため、Bの子は試合には出られませんよ、ということなのでしょう。小学生で戦力外通告するなんて、私からすれば本当に許し難い行為です。おそらく登録人数などの関係で、ここで切ってしまった方がメンバーを編成しやすいと大人が判断したのでしょう。

 夏の時点でこのようなことを行うということは、子どもに向かって「君はうちのチームに必要のない選手だよ」と言っているのと同じ。夏、秋、冬と、体が大きくなる6年生は最後にぐっと変化して成長していくものなのに、小学生に戦力外通告をするとは、同じ国で育成に携わっている者として恥ずかしいくらいです。残念ながら、子ども一人ひとりを伸ばすことよりも、大人が勝利を追求することを優先するクラブに加入してしまったようです。
 中学でプレーするまでまだ半年間以上ありますし、実戦を経験できないのは痛いですね。サッカーは試合をすることで上達しますし、何より楽しくありませんね。考えられる改善策はチームを移籍することですが、規則上移籍してすぐに公式戦に出られるのかどうかを確認しておくことが大切です。また、温かく迎えてくれる移籍があるかどうかもクリアすべき点でしょう。

 ただし少なくとも、公式戦に出られなくても練習試合をたくさん経験できれば実戦経験は積めます。ご相談内容には記載がありませんでしたが、練習試合についてはどうなのでしょうか。「選抜メンバー外」でも出られるのでしょうか。もし、それができるのであれば、新たな中学のステージまでそこで試合を経験して技術を磨くことに専念しましょう。

 息子さんの戦力外通告は、私も胸が痛みます。でも、焦らなくても大丈夫。この半年と少し試合に出られないからと言って、あきらめることはありません。私は高校からサッカーを始めました。いくらでも追いつきますよ。焦らずにできることを積み重ねて、中学からプレーするクラブは背伸びせず試合に出られそうなところをぜひ選んでください。

 最後に。「戦力外通告」といったハッキリした形でなくても、低~中学年から早々にA、Bチームに分け、公式戦はAの子しか出さないクラブや少年団は存在するようです。3年生くらいから試合にはほとんど出ずに卒団する子も出てきます。練習試合でも出場時間の差があるようで、圧倒的に実戦経験に格差が出てきます。

  前述したように、子どもは変わっていきますし、どの子も可能性を秘めています。もし、ご自分のチームがそのような方法を取っているのであれば、大人たちで話し合うべきです。また、これから入団先を決める方は、そのようなチーム運営や指導法についてもあらかじめチェックしたほうがいいでしょう。

プロフィール

池上 正(いけがみ・ただし)

1956年大阪生まれ。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼年代や小学生を指導。02年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。同クラブ下部組織の育成コーチを務める。03年より小学校などを巡回指導する『サッカーおとどけ隊』を開始、千葉市・市原市を中心に190カ所におよぶ保育所、幼稚園、小学校、地域クラブなどで延べ40万人の子どもたちを指導した。2010年1月にジェフを退団。同年春より「NPO法人I.K.O市原アカデミー」を設立。理事長としてスクールの運営や指導、講習会、講演をこなすかたわら、大学や専門学校等で講師を務めている。2011年より京都サンガF.C.アドバイザー、12年2月より京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターに就任。08年1月に上梓した初めての著書『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(08年・小学館)は、11年12月現在で7万部に迫るベストセラー。11年9月には指導現場で、その実践例を大公開した『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』が発売。U-12の育成に携わる指導者や保護者には必見のDVD付き書籍となっている。

近刊情報

『サッカーで子どもの力をひきだす オトナのおきて10【DVD付き】』

指導者や保護者から多くの支持を得ている『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』の著者・池上正氏が普段からよく使う象徴的な言葉(フレーズ)を取りあげながら、どのように子どもと接すればいいのか、言葉をかければいいのか、子どもとの距離のとり方……子育てやサッカー指導に悩む方々の具体的な解決策として、 “オトナが守るべき10のおきて”を伝授します。

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