受け継がれるべき志を知る ジュニアサッカー パイオニアたちからのメッセージ

2013年02月05日

インタビュー

自分で考えて工夫するための
ステップを作っていく

――今でこそJリーグがこれだけポピュラーになってクラブチームというのがスタンダードになっているんですけども、当時はすべてのサッカー指導が学校体育にある中でクラブチームを立ち上げようと思ったこの発想はどこからこられたんでしょうか。また学校体育の指導要綱と異なるサッカー指導の方法論、練習メニューはどのように体系立てて構築されたのでしょうか。

「それは、まず小学校の先生に頼まれましてね。それで教えようかということでやってるうちに、次の学年が入ってくるということでだんだんこうなったわけです。その前に大人のクラブチームをやってましたので。その中で、勉強したことがあるんです。おたくらご存知かな。昔、『チャナディのサッカー』(アルパド・チャナディ著、竹腰重丸監修、村岡博人訳、窪田登訳)という本、こんな分厚い本がありましたね、ハンガリーかな(編集部注・原著はハンガリー人Arpad Csanadiによる”Labdarugas”、日本語版は1967年にベースボールマガジン社より発行)」

――ハンガリーが世界最強だった時代。50年代ですかね。ハンガリー動乱でスペインに亡命してレアルマドリードに行ったプスカシュが率いたマジックマジャールですね。

「あの頃の人の書いたこんなに分厚い本なんですよ。練習法がいっぱい書いてある。それを見ますと、基本的なことは別にして、例えばセンターフォワードであれば、後ろからボールが来た、迎えに行って向き直ってシュートをする。そういうふうな練習ね。そういう試合に即した具体的な方法がいっぱい書いてあるんですよ。それを見て、あ、なるほど。あの人らはこんな練習してるから上手いんやと。上手くなったんやと。
それがヒントですわな。それで私なりのアレンジを加えて、いわゆる試合の一部、ゲームの一部のような場面を作って練習したわけです。それまで、日本の練習というのは基本が中心。いわゆる日本の教育の原型で言えば、お茶、お花から柔道から剣道から、とにかく型ですね。型をやって、柔道、剣道であれば乱取り、1対1をやって、それで試合でしょ。サッカーでは、1対1をやっている学校とやってない学校でものすごい差がありますね。遊びでやっているとかでも全然違う。そういうふうな試合の一部のようなことが日本のサッカーの練習ではなかった。だから、僕が考えるのは、数学とかで定理、あるいは公式、いろいろあるでしょ。そうすると、それをものにするために例題というものがありますね、簡単な問題。その次にちょっと凝った問題があって、それから応用問題がある。それから試験がある。そういう方式と同じで、日本の場合は基本的な定理と公式しか習わなかった。で、例題もほとんどない。ましてや、練習問題とか応用問題とかないままに試験を受ける。経験全然ゼロで試合に出るようなもの。後からつけた理屈ですけど(笑)、それに気がついた。だから例えばワンツー。ぽんぽんと繋げての壁パス。誰でもワンツーを教えることはできます。けど、それだけではダメ。ぽんぽんと相手なしでやって試合に出る、下手やったら、ダメやなと笑ってるだけではね。僕の考えでは、ワンツーを教えたら、その次は相手をつける、それでワンツーをやる。マークするやつ、マークはあまり邪魔しなくていいから、それでワンツーをやってみる、もちろんシュートへ入る。それをある程度やって、こんなもんやなと、例題ですわな。その次、実際に使わなければいけない。ミニゲームをやります。ミニゲームも人数多いとできませんから、4対4、5対5、せいぜいそれぐらいの人数でやって、普通にやって、まず、普通にフリーなのでやって、5分、10分経てば、これからワンツーで得点したものだけを認める。これをやるわけです。そうするとゲームの中でどうやったらワンツー使えるかと、みな、自分で考えなしょうがないわけですよ」

――選手自らに考えさせると。

「そうそう。だから例題のもうひとつレベルの高い練習ですよね。練習問題。それを入れるから、やたらに型通りやったってできないわけです。できる形、あるいはやろうと思ってないとできない、そうやってやっているうちになんとか本当に試合に使えるワンツーができるようになる。それから、バックパスのシュートとかね。バックパスのシュートだけ得点を認めると。他の得点はなしということでやるでしょ。それから持ち過ぎの選手なんかが入れば、2人抜いたら3人目はアウトと。一般にやるのはツータッチパスとかそういうのありますが、それに似てますけどね。それからちょっと広いところであればセンタリングだけの得点を認める。あるいは、味方にシュートさせる、得点させるためのいわゆるチャンス作りの発想のために、5対5、4対4で得点する選手を決めるわけです。必ずAに得点させる、こっち側はZに得点させると。そうやってやるわけね。選手は、これに得点させるために何とかしてこうパス出してやろう、こちらも得点するためにどうにかしてやろうとね。そこのところはコーチは教えられないでしょ。だから、自分で考えて工夫するということをやらないと試合の中でやれるはずがないわけですよ。日本の指導の場合、そういうものが欠けてるわけです」

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