真の個の育成につながるヒントはここにあり!! ボトムアップ理論で選手の自立を図る
2013年06月01日
コラムサッカーの育成において、“自立”はひとつのキーワードとなります。しかし、どうすれば子どもの自立を図ることができるのでしょうか。現在、注目されているのが、選手の自立を図るボトムアップ理論。そこで今回、ボトムアップ理論を実際に指導に取り入れているスエルテジュニオルス(神奈川県横浜市)の久保田大介代表と、かねてより育成では選手の自立の強化が重要と考える、幸野健一氏のお二人に、本当に大切な育成とは何かについて語っていただきました。
文●小澤一郎 写真●SUERTE Juniors、編集部
※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.29夏号』より転載
社会に求められる人間の育成が優秀なサッカー選手を育てる
――今、個の自主性を高めるボトムアップ理論が育成年代で注目されていますが、この理論を久保田さんは、なぜ実践されるようになったのですか?
久保田 スエルテ・ジュニオルスを立ち上げた当初は、選手にいろいろと教え込もうとして急ぎ過ぎた部分がありました。ただ、スタッフを2名ほど雇い私自身にゆとりが出たことで子どもたちと真剣に遊ぶことができるようになり、そうすると選手たちがいきいきとサッカーをして、自然とうまくなっていきました。それをきっかけに「このスタンスで良いんだ」と気づき、練習では自然に選手が集まり、ストリートサッカーのようにゲームを始めるような雰囲気が生まれました。その流れや雰囲気のまま試合を行うので、スタメンも自分たちで決めるものと選手たちが思っています。やはり、試合になれば勝ちたいので、こちら側も「この選手がいいだろう」という想定はします。しかし、選手たちはその想定通りに選出せず、「本当にそれでいいの?」というメンバーを選びます。ところが、その方が良い試合をすることが多いのです。こちらの予想や先入観を覆される経験が続き、「この方が良いな」と思い始めました。それ以降はこのやり方で続けています。
――幸野さんはこのボトムアップ理論との出会い、そして改めてその必要性についてどうお考えですか。
幸野 日本サッカーが世界に追いつくために何が必要なのを私自身が世界中を回りながら探ってきました。初めはサッカーの技術的な部分に理由があると思っていましたが、さまざまな国を見る中で気づいたのは、もっと深いところに原因があるということです。それはサッカーの本質が「自立」にあるということ。そこを考えれば、上から言われたことを「はい」と従うのが“良い子”という日本の社会では、サッカーに向いた選手は育ちません。現在はビジネスの世界も大きく変わり、日本社会でも自分で判断して決断できる人間が求められています。そこに気がついたとき、「社会に求められる人間を育てることが、優秀なサッカー選手を育てることに通じる」と考えるようになりました。そして、最終的に自立した人間を育てるという答えにたどり着いたのです。その中で、数年前に出会った畑喜美夫先生(安芸南高校サッカー部監督)のボトムアップ理論には強い共感を覚えました。私がこうあるべきと考えていたことを指導者として実践し、広島観音高校を率いてインターハイで優勝しました。彼のような指導者がどんどん出現することは、何となく閉塞感のある日本サッカーの育成にブレイクスルーになると思っています。
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