アーセナル流『ドリブル指導論』~求められるのはボールコントロール力と状況判断力~

2013年07月21日

コラム

FCバルセロナやアーセナルのような流麗なパスサッカーを知る海外指導者は、ドリブルをどのように位置づけ、指導を行っているのでしょうか。ジュニアの育成に携わる指導者ならば誰もが気になるところでしょう。今回は、アーセナル・サッカースクールハワイ校で校長を務め、現在、東京都の喜多見にある国本小学校で指導を行うピーター・キロフコーチに、その指導方針と練習方法を伺いました。ポイントは“効率的なサッカー”です。

文●加藤康博 写真●編集部 取材協力●国本小学校

※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.28春号』P47-51より転載

 


 

アーセナル流の考え“すべてはボールとともに”

そのプロフィールが示す通り、ピーター・キロフコーチはこれまで世界中でさまざまなサッカーに触れてきた。現職のアーセナル・サッカースクールハワイ校の校長はそのキャリアの集大成とも言える職務。世界のトップチームから落とし込まれた育成ノウハウと自身の経験を携え、2012年からは東京都世田谷区の国本小学校で指導を行っている。

「世界のサッカーは急速に洗練されてきていますし、その流れは今後も続くでしょう。いかに頭を使い、効率的かつスピーディにボールを動かすかが指導の上でも重要なポイントになります。日本の子どもは俊敏性や頭の良さに長けています。ここならばアーセナルの目指すフットボールを体現できると感じ、来日を決めたのです」

アーセナルのサッカーと言えば、高度に規律が保たれつつも、スピーディかつ巧みにボールを回すスタイルがイメージされる。その中でドリブルはどう位置づけているのか?
そう問いかけると、キロフコーチは焦ってはいけないとばかりにこちらを制した。

「ドリブルの前にやらなければならないことがあります。アーセナルで最初に重視するのはテクニカルスキル。いかにボールをコントロールするかです。これができなければドリブルもパスもポゼッションもできません。

その力をつけるためにはボールに触れている時間を増やすことが大前提。私はアップの時でも体力をつけるトレーニングの時でもボールを使って行います。アーセナルの考え方は”ボールを使いながら練習をしたほうがいい“ではなく、”ボールを使わない練習などあり得ない“というものなのです」

すべてはボールとともに。これがアーセナルの12歳以下の指導における鉄則のひとつのようだ。

では実際にトレーニングをのぞいてみよう。

まずはウォーミングアップ。レベルに応じてコーンで四角形のスペースを作り、そのなかで子どもたちにボールを使って様々な動きをさせる。イン、アウト、足の裏など様々な場所を使い、笛の合図とともに前後左右へ動く。5メートル四方のなかに10名以上はいるだろうか。子どもたちにはあえて混雑した中で行わせるが、特徴的なのはその時の声がけだ。

「子どもたちにはすべてを求めます。ボールをコントロールしなさい、他の人にぶつからないようにしなさい、なるべく速く正確に動きなさい、顔を上げなさいなど。もちろん優先順位はあります。しかし年齢が上がるにつれ、ふたつのこと、3つのこと、最終的にはすべて同時にできるようにならなければならない。その意識を早くから持たせるのです」

その優先順番は、
・ボールコントロール(=確実にボールを操る技術)
・ボディバランス(=思い通りにボールを操るための体の動かし方)
・スピード・クイックネス(素早く体とボールを動かす能力)
・タクティカルアウェアネス(=戦術上の認識力。どこに誰がいるか、どのスペースが空いているか、どこに動くべきか、どの方法でそこへ行くかなど)である。

特に12歳までは正確な動きと速さ、クイックネスを重視するのがキロフコーチの哲学。このゴールデンエイジで徹底的にボールを扱う基礎を体で覚え込む。

「ボールコントロールをドリブルにつなげるためにはリズムが重要。自分の中でタン、タン、タン、だったりタン、タ、タンだったり。試しながらやることが大切です」
リズム良く動こう。これもキロフコーチが練習中によく口にする声がけだ。

 

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