畑喜美夫×幸野健一 両氏が語る、いまサッカー界の育成に必要なこと -“選手が主役”の指導法「ボトムアップ理論」が子どもの自立を促す!-(前編)

2013年10月06日

コラム

ビジネスの世界でも求められる、自ら判断できる力

――幸野さんはこれまで会社の経営者(代表取締役)として社会・経済の中で戦ってきた社会人の一人ですが、やはり畑先生のボトムアップ指導で自ら判断できるような人材はグローバル化の波に飲まれて苦戦する今の日本だからこそ必要だと感じますか?

幸野氏 そうですね。まさに社会とサッカーはイコールだと思っています。例えば、ビジネスにおいては『PDCAサイクル』という言葉が前から存在しています。PDCAサイクルは何かと言うと、やはりベースでもある失敗から始まっているわけで、失敗をすることによってそれを改善し、次に活かしてチェックし、実行するという作業です。成功している人間というのは必ずそれをやっているわけです。つまり、ビジネスの世界で成功するには必ずPDCAサイクルを回さないといけないわけです。そういう観点から見れば、特に親や指導者は、子どもに失敗をさせないといけません。

とりわけ親は大人ですから、子どもが失敗するのをある程度予想できますが、そこで多くの親が「子どもに失敗をさせまい」と手を差し伸べてしまいます。そこをあえて物わかりの悪い大人を演じることが一番大事なことなのです。我慢するということはものすごく忍耐力のいることであって、それは企業経営でも指導者でも同じです会社の立場で言えば、やはり新入社員も含めて社員が当然失敗することは予想されることであって、逆にそれを敢えて失敗させるという忍耐力が上の者には求められます。

それがないと、自分が楽をするために全部の道をたいらにしてしまい、失敗しないようにしてしまいます。そうなると、新入社員や部下の成長はありません。多くの人は失敗が人を成長させるということを体験的にわかっているはずですが、頭では理解していてもなかなか実践できないのです。しかし、やはり強い信念、信頼を持って、子どもに失敗させることが必ず成長につながるということを本質として認識すれば我慢できると思います。

――育成年代の現場レベルの話しになると、やはり各カテゴリーで指導者が大会、試合に勝ちたいという思いが強すぎる余り、選手に失敗を経験させないような指導が蔓延していると思います。

幸野氏 目先の勝利を求めて試合を戦ってしまう原因の多くは、仕組みに依存していると思います。やはり、日本サッカーにおいてはトーナメント文化が主流ですから、どうしても「負ければ明日がない」となり、選手も監督も勝利至上主義に走ってしまいます。これは、監督が悪いというよりも仕組みが悪いと思います。世界に目を向ければ、サッカー先進国でトーナメント文化のところはないわけで、彼らはサッカーの100年の歴史の中で試行錯誤しながらリーグ戦文化を築いています。リーグ戦の中である程度の抑揚はもちろんありますが、日本の場合は育成年代の全国大会の比重が重すぎる余り、「この試合に負ければ終わり」というプレッシャーがかかります。

畑先生が、選手権ベスト4がかかった試合でDFラインを修正しなかったというのは、普通の監督には絶対にできないことです。逆に、そこまでのテンションで戦うことが本当に必要なのかどうかの検証が必要です。しかも、そうした試合を体験できるのはごく一握りのチームしかないわけで、日本の育成年代では多くの場合、強いチームはたくさん公式戦を戦い、弱いチームはほとんど試合がない状態です。そうした不均衡さのせいで適度な緊張感のある公式戦を戦えない選手が山のようにいます。その問題を解消することこそ、日本のサッカーを強くするための一番の近道だと私は思っています。

後編へ続く。次回は10月9日更新予定

<プロフィール>
畑 喜美夫
1965年11月27日生まれ。広島県出身。広島県立安芸南高校教諭。小学生時代から地元・広島の広島大河フットボールクラブでサッカーをはじめ、東海大一高校(現・東海大翔洋高校)、順天堂大学でプレー。全日本ユース代表を経験、大学では総理大臣杯、全日本インカレ、関東選手権の3冠をとった。大学卒業後は、広島に戻って教鞭をとる一方で、広島大河フットボールクラブの小・中学生をサッカー指導。1997年に県立広島観音高等学校へ赴任し、同校サッカー部監督として指導。選手の自主性を促すコーチング術を取り入れ、2006年に広島観音高校サッカー部を全国優勝に導く。日本サッカー協会公認A級ライセンス、元U-16日本代表コーチ。

幸野 健一
1961年9月25日生まれ。東京都出身、中大杉並高校、中央大学卒。10歳よりサッカーを始め、17歳のときにイングランドにサッカー留学。以後、東京都リーグなどで40年以上にわたり年間50試合、通算2000試合以上プレーし続けている。息子の志有人はJFAアカデミー福島1期生でFC東京所属(今季はV・ファーレン長崎に期限付き移籍中)。これまで2002年ワールドカップ招致活動やサッカースクール運営など、サッカービジネスに携わってきたが、現在は育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかるサッカー・コンサルタントとして活動中。9月より株式会社フロムワン顧問に就任。

<関連リンク>
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『子どもが自ら考えて行動する力を引き出す 魔法のサッカーコーチング』

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