すばやい判断力を身につけるために“目”を鍛えよう!【前編】

2013年11月13日

コラム

中田英寿氏がプレー中に首を振っていた理由とは

 真下ドクターによると、スポーツビジョンの代表的項目には以下の8つがあるという。

 すべてのベースになるのが「静止視力」。いわゆる一般的にいわれる視力である。

「今の視力検査はA、B、C、Dの4段階に分けられ、Aは1.0以上。B~Dは1.0未満か0.9以下となります。最近の高校生を検査すると、コンピューターやゲームの影響か、1.0未満か0.9以下が3分の2以上を占める。ボールスポーツを十分にこなせるレベルになるには片眼1.0以上、両眼で1.2~1.5はほしいところです。
 静止視力は鍛えて上げられるものではないので、悪い場合には矯正が必要になります。近年は子どもでも強度の近視が増えている。うまくボールを蹴れなかったり、パスやトラップができなかったりしたら、『この子は眼が悪いのではないか?』と疑ってみてほしい」

 2つ目が「眼球運動」。視線を動かして、複数の目標を次々に見極めていく力だ。人の視野は通常、上下で130度、左右で160度。両眼になると左右180度はある。

 けれども、字が読めたり、色が識別できるのは中心視野の5度だけ。その部分がしっかりと目標物に当たらないと『見ているつもり』になってしまう。

「中田英寿氏が現役だった頃、風見鶏のように首を振る選手と言われていました。それは視野の角度を変え、視線を確実に動かしながら、判断に必要な情報を入手していたため。そういうことができる優れた選手だったからこそ、ピッチ上で優れたパフォーマンスを見せられたのだと思います」と真下ドクターは話す。

 3つ目の「動体視力」は広く知られている。これは、遠くから近くへ直前的に近づいてくる目標を見極める力(KVA動体視力)、横移動の際にひとつの目標物を目でしっかりと追う力(DVA動体視力)に分けられる。

 ひとつのボールが時速30キロでまっすぐ自分の方に飛んでくるのを見ようとすると、視力1.0の人でも、0.6~0.7に低下してしまうという。スピードが上がれば上がるほど動体視力も下がる。横移動でも同じ。動いているものを見るのはそれほど難しいのだ。

 4つ目が「深視力」。複数の目標物の位置関係を把握する立体視能力で、サッカーにおいては最重要項目といえるかもしれない。

 真下ドクターは「スタンドから試合を見ると、どこのスペースが空いているか、誰がフリーになっているかがすぐわかります。

 しかし、ピッチに立つと立体的には見えないので、判断が難しくなる。それをきちんと認識できる選手がキラーパスを出せたり、長い距離のサイドチェンジを出せたりする。サッカー選手の良し悪しが出やすいのがこの能力です」と説明する。

 つまり、中村俊輔(セルティック)や遠藤保仁(ガンバ大阪)など広い視野と展開力を持つ選手たちは、この深視力が際立っているのだろう。

 5つ目の「瞬間視」は、一瞬のうちに情報を把握する力をさす。テレビゲームばかりやっている子どもはこの能力が突出しているという。

 しかしながら、この瞬間視だけがよくても、他の力が低ければ、優れた選手にはなれない。テレビゲームのやりすぎはサッカーには決してプラスにならないのだ。

 6つ目の「眼と手の協応動作」はモグラ叩きを想像するとわかりやすい。眼で捉えた目標物にすばやく手で反応する力だ。サッカーの場合、動かすのは足になるが、眼との連動は早ければ早い方がいい。

 最後が「コントラスト感度」。明るさの微妙な度合いを認識する能力である。

(後編へ続く。次回は11月14日更新予定)


プロフィール
真下一策(ましも・いっさく)

スポーツビジョン研究会代表。日本体育協会公認スポーツドクター。広島大学医学部卒業後、東洋工業サッカーチーム(現サンフレッチェ広島)のドクター、広島東洋カープのチームドクター(首都圏担当)をはじめ、さまざまな競技のチームドクターを務めた。昭和63年にスポーツビジョン研究会設立。スポーツビジョンの普及活動に尽力している。

 


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