祝Jリーグ2連覇! サンフレッチェ広島キャプテン・佐藤寿人選手の少年時代 ―目の前の「壁」を乗り越えて―【後編】

2013年12月12日

インタビュー

壁を乗り越えるためのアドバイス

 その後、ジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド市原・千葉)にトップ昇格したあとも、セレッソ大阪、ベガルタ仙台に2度の期限付き移籍を経験するなど、決して順風満帆なプロ生活を送ってきたわけでない佐藤寿人。そのたびに「壁」を乗り越えてきた彼が最後に送るメンタル、技術面のアドバイスとは。


――それでは、ジュニア年代へのアドバイスを。

 僕も乗り越えなければいけない壁はありましたけど、そこで前向きに受け止めて乗り越えないと、次のステージは見えてこないと思います。中学1年生のときに1年間で結果を出さなければならなかった僕らのような環境はないかもしれませんが、それでも目標は明確に持ってほしいと思います。目標がしっかりあれば目の前の壁も乗り越えられますし、逆にただ漠然とやっていたら壁を乗り越える力もメンタルも身につかないと思いますね。

――FWとしてのメンタルの持ち方、トレーニングの仕方のアドバイスはありますか?

 僕もリティさんに教えてもらって、今にもつながっていることなんですけど、シュートの正確性は大事だと思います。力で打つシュートは筋力がついていく高校生、大学生、プロになってからものびしろはあるでしょうが、シュートの技術、センスは小学生の頃から身につけておくとレベルの高いものになるので。力でなく、狙ったところに撃つ技術を大事にしてほしいですね。

――スピードの部分ではどうでしょう?

 サッカーで使うスピードと陸上で使うスピードは違うので、マーカーを使ってステップワークを鍛えることでスムーズに方向転換ができるようになれば、相手との差が出てくると思います。個々で走る能力には差があると思いますし、「走る技術」は走る能力よりもより早く体に染み込ませることができると思いますよ。僕も中学1年生のときに池田誠剛さん(現・韓国代表フィジカルコーチ)からそれを学んだことが大きかったですから。

――最後に周囲のサポートについてはどのように考えていますか?

 僕の父親は僕らが中学生になるときに職を変えてまで僕らの夢をサポートしてくれました。今、僕自身が2歳と5歳の男の子を持つ父親になって、「自分が仕事を変えてまで子どもの夢を叶えてあげられるか?」と思うと、それはとても勇気がいることですごいと感じていますし、改めて感謝しています。母親も僕と勇人の食事の面を考えてくれていたし、今、自分自身の生活の中で考えてみてもバラバラに食事をとる場合の奥さんの大変さは想像がつきますからね。

 実は僕の父親は野球経験者でサッカー経験はなかったのですが、小学生のときに「ストレッチしろ、腹筋しろ、背筋しろ」と言われつづけたことで、人より体幹が強くなったことにもつながっているんですよ。だからこそ、僕は僕の両親がしてくれたことを自分の子どもにもしてあげたいと思っていますし、一方で父親は僕らの成長を楽しみながら見てくれたと思うので、僕も同じようにサッカーをしていくだろう子どもの成長を親として楽しみながら見ていきたいです。もちろん尊敬する人をあげる場合は「両親」と迷わず答えます。


 少年時代から何度も壁にぶち当たりながらも、その壁を乗り越える原動力となったのは、弱音を吐いたときに「やりきったのか?」と言ってくれた父や周囲の激励だった。もちろん本人がその励ましを常に前向きにとらえて努力したことは言うまでもない。そして努力した先に、強いメンタルとインテリジェンスを備える「佐藤寿人」をつくり上げたことは現在、彼が身を持って証明してくれている。


プロフィール
佐藤寿人

1982年3月12日生まれ。埼玉県春日部市出身。2000年、当時のジェフユナイテッド市原とプロ契約を結んだ後は、セレッソ大阪、ベガルタ仙台を経て、2005年よりサンフレッチェ広島に在籍する。持ち前のスピードを武器にゴールを量産するストライカー。ジェフユナイテッド市原・千葉の佐藤勇人選手は双子の兄。

 


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