日本一に輝いた強豪・流経柏高校の本田監督が語る“勝利の哲学”
2013年12月23日
コラム合言葉は「百打一音」
人間性を養う第一歩として考えたのが、チーム全体の意思統一を図ることでした。サッカーは個々が勝手にピッチ内でボールを追いかけていても勝てるわけではありません。全員が同じ意識で練習や試合に取り組む雰囲気を作らなければならないのです。
そのために「百打一音」というキャッチフレーズを採用しました。
これを設けたのは就任2年目。01年でした。関東の一本締めのように大勢の人が揃って手を叩いたら、非常に心地よい音になる。
出典は忘れてしまいましたが、これでチームのベクトルをひとつにしていこうと思いました。ドリブルだけをしたい選手もいれば、パスにこだわりを持っている選手もいる。ジュニア時代ならそういうエゴイストぶりも結構かもしれませんが、高校のチームはそうじゃない。ディシプリン(チームとしての共通理解・約束事)というものがやはり必要です。
我々は毎日の練習の最初に「ルーティン」といわれる儀式も行っています。
「僕はキックの日本一になります!」
「僕はドリブルの日本一になります!」
「掃除の日本一になります!」
「スタミナ日本一になります!」
直径10メートルくらいの輪を作った選手たちからこんな叫び声が聞こえてきます。人工芝が敷き詰められた美しいグラウンド全体に声が響き渡る様はなかなか壮観です。全員がナンバーワン宣言をすることで、自然と空気がピーンと張り詰めてくる。「これからいいトレーニングをして、レベルアップするぞ!」といった闘志とやる気がわいてくるのです。
これは、居酒屋チェーン店「テッペン」の受け売りなんですが、大きな声を出して目標を喋ることで、自己暗示ができる。自然と選手たちのモチベーションが高まっていく。練習前の雰囲気作りにはベストな方法だと思っています。
普段は10~15人ずつの何グループかに分かれて、直径10~20メートルの輪になって行いますが、1月1日の初蹴りのときには親御さんも見ている中、120人全員が大きな輪になって宣言をします。
09年の初蹴りのときには、親御さんも感極まり、PTA会長さんが「我々も日本一の応援をします!」と宣言するくらい盛り上がりました。そして全員でボールを高く蹴り上げて練習開始という形でした。こういったルーティンワークは非常に大切です。選手たちは自然に習慣となって、普通にできるようになる。まさに「継続は力なり」に他なりません。
こうして流経での3年間が終わるとき、最後は「百打一音」から「一打一音」で送り出します。「これまでは全員でいい音を出していたけど、これからは一人でいい音を出せよ!」と。2冠を獲った選手たちも、こうした経験をその後の人生の糧にしていることでしょう。
※『高校サッカー勝利学 “自立心”を高める選手育成法』より抜粋。
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プロフィール
本田裕一郎(ほんだ・ゆういちろう)
1947年、静岡県生まれ。順天堂大学卒業後、千葉県市原市教育委員会を経て、75年に市原緑高校サッカー部監督に赴任。その後、86年に習志野高校に転勤すると、福田健二、広山望、玉田圭司らプロ選手を多数輩出。95年にはインターハイで初の全国制覇。01年から流経経済大柏高校の監督を務め、07年には高円宮杯第18回全日本ユースサッカー選手権大会、8月のインターハイも制し、3冠を達成した。13年には高円宮杯チャンピオンシップでJクラブを破って高校勢として初の日本一に輝いた。
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