育成現場のプロが語る成長期のカラダ対策「ケガに強くなるポイント、教えます」【前編】

2014年02月02日

コラム

激しいコンタクトが小学生年代で必要!?

 サプリメントについては、年代別代表に帯同する機会の多い加藤晴康ドクター(JFAメディカルセンター非常勤、立教大学准教授)も「子どもの逃げ道をつくる」と否定的だ。

「サプリメントは心のすき間につながる。『もっと走れるようになりたい』『もっと体を大きくしたい』と、何かを求めて錠剤を飲み、しばらくはよくても、調子が悪くなると、別のサプリメントを探そうとする。どんどんエスカレートしてしまうんです。

 子どものうちは、走れなかったら走る練習をするしかないし、体が小さかったらご飯をいっぱい食べて体を大きくする練習をしないといけない。薬を飲んで解決するという考え方が問題だと思います。メンタリティにもつながる。サッカーで地道にやっていく習慣をつけないとタフな選手にはなれません。

 ただ、医学的に見ると、鉄剤だけは必要なケースがある。中高生は身長が急激に伸びるので、たくさんの血液が必要になる。しかも運動で汗をかいて鉄分が出ていくので、摂取量が足りなくなり、貧血につながることもある。食事だけで必要な鉄を摂取するのは難しく、何らかの形で補強することも視野に入れないといけませんね」

 睡眠時間の減少も、ケガに弱い子どもをつくる一因だ。中学生であれば1日8~10時間は寝るのが理想的だが、実際にはそこまで十分な時間は得られていない。

 「年代別の日本女子代表で調査したところ中学生の平均就寝時間は23時を過ぎていました。帰宅して2時間程度で食事も入浴も勉強もするのは忙しすぎる。体の中で食べ物が十分消化されていない状態で寝ると就寝中にも身体が休むことなく働くことになり良質な睡眠が得られにくい。成長ホルモンが多く分泌されるノンレム睡眠と言われる睡眠サイクルに達するまで時間もかかるでしょう」(中堀さん)

 こうした生活面の変化に加え、サッカーにおける問題点を加藤ドクターは指摘する。

 「ハンドボール全日本男子前監督だったイビチャ・リマニッチ氏と話をしたのですが『日本人は小学生段階でコンタクトプレーが少なすぎる。子どもはスピードもパワーもないのでぶつかりあっても大きなケガはしにくい。子どものときに激しいコンタクトプレーの訓練を行うと、大人になってから大きなケガが少なくなるだろう』と指摘していました。日本では『小学生だからケガなくやろう』という雰囲気ですよね。サッカー選手も国際大会に出て外国人選手の当たりの強さを目の当たりにして初めてわかるという傾向が強い。JFAアカデミーのテクニカルアドバイザーだったクロード・デュソーさんも『同じチームでも敵味方になったらスライディングするくらいやらなきゃダメだ』と強調していましたね」

(後編へ続く。次回は2月3日更新予定)


プロフィール
中堀千香子
(なかほり ちかこ)
JFAメディカルセンターアスレティックトレーナー
ジェフユナイテッド市原・千葉のユース・ジュニアユース、東海大学サッカー部などでトレーナーを務め2005年より、なでしこジャパンをはじめとした各種年代の日本女子代表にトレーナーとして帯同。2007年よりJFAアカデミー福島開校とともに女子担当トレーナーに就任し育成年代の選手育成に携わる。

加藤晴康
(かとう はるやす)
立教大学コミュニティ福祉学部 スポーツウエルネス学科准教授 医学博士・医師。JFAスポーツ医学委員会委員。JFAのドクターとしては、1995年のナショナルトレセン活動がスタート。その後はU-16~23の各年代代表のチームドクターを務める。2008年の北京オリンピックではU-23日本代表(男子)のチームドクターとして帯同した。現在は大学での授業のほかにJFAメディカルセンターのドクターとして活動している。

 


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