サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典「教えない」/「教える」
2016年12月22日
コラム<池上さんのことば辞典>
教える
【動】対義)指示命令する
選手の「考え」を広げるお手伝い。
子どもが自分でチャレンジしたプレ
ーが失敗したとき「もしかしたらこ
んなことしたかったのかな?」と尋
ね、子どもの「わからない」の内容
に応じて「こんなふうにしたらでき
るよ」と言葉で伝えたり、実際に見
せること。指導者が一方的にやらせ
るのは「教える」ではなく「指示命
令」。
■池上さん解説■
「指導者としての役割」果たしてますか?
「教えない」の反対は、「教える」?
私の辞書ではそうではありません。失敗を恐れずチャレンジした。でも、次はどうしたらいいのかな?そんな迷いや葛藤を選手の表情で読み取ったら、声をかけてあげてください。
まず、問いかけます。「いま、右にパス出したけど、本当はどうしたかったのかな?」
選手の気持ちを聞けば、その子が抱えている課題がわかります。そこで、例えばこんなふうに言います。
「狙ったのは良かったけど、使う足はこっちがいいかもしれないよ。こんなふうに蹴るとちゃんとパスがいくね」
「右で蹴るよりも、ここは左で蹴ったほうが簡単かもしれないね」
つまり、私の辞書での「教える」は、選手が選択するプレーの「幅」を広げてあげる、考える材料を増やしてあげること。もっといえば、彼らの引き出しを豊かにする「お手伝い」であり、指導者としての最大の役割と言えます。
こうかもしれない。この方法もあるよ。言葉使いの細かい部分ですが、断定的な物の言い方をせず「コーチが教えることは一つの選択肢」というニュアンスで伝えてあげてください。そうすれば、プレーの選択がこれしかないという固定観念を持たず、幅を広げられます。この幅は「考えの幅」であり、これがプレーの幅につながります。
例えば、フェイントしてみたけれど失敗したとき。
「フェイント、チャレンジしたの?いいね。でも、実際どうしたかったの?そうか。じゃあ、こんなふうにもできるよ」
自分で見せてあげられなくても大丈夫です。チームにはできる子、できそうな子が必ずいるはずです。そんな子にお手本になってもらえば、言葉だけできちんと指導できます。
【商品名】サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典
【監修】池上正
【著者】島沢優子
A5判/240ページ
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