1人のコーチで「2、3人を見ている」。“監督の概念がない”ビジャレアルの育成方針

2017年06月30日

コラム

先日、馬入ふれあい公園サッカー場にて開催された『2017 COPA BELLMARE U-11 PILOT INTERNATIONAL TOURNAMENT』では、準優勝に輝いたスペインのビジャレアル。ホームタウンの人口はおよそ5万人。スペイン国内でもレアル・マドリーやバルセロナといったビッグクラブとは違い、規模としては中小クラブにあたるクラブだが、質の高いサッカーを見せてくれた。今回は、チームでコーチを務めているダビ・ペレスコーチとホセ・マタイクスコーチに、ビジャレアルが考える育成について話を伺った。

(取材・文●林遼平 写真●林遼平、山本浩之、Getty Images)


ビジャレアルコーチ
【ビジャレアルのダビ・ペレスコーチ(写真左)とホセ・マタイクスコーチ(写真右)】

5人のコーチで12人の選手を見る理由

 今回、日本で行われる大会に初めて参加したビジャレアル(アレビンB ※日本の小学5年生にあたる世代)。チームは決勝戦でパルメイラスに敗れたが、最終的に準優勝という成績を残し帰国の途につくこととなった。

「いろいろな国々のサッカー、文化に触れられるので、非常にジュニアの選手たちにとって意義があったと思う」とダビ・ペレスコーチ。優勝という結果こそ得られなかったが、異国の地での戦いが確かな経験となったことは明らかである。

 そんなビジャレアルだが、彼らが作り上げた育成システムに焦点を当ててみると、非常に興味深いものが見えてくる。まずは人数だ。ビジャレアルのU11のカテゴリーには12名の選手しかおらず、GKはたったの一人。8人制とはいえ、少数精鋭のチームであることは間違いない。

 さらに驚くべきはコーチの数。ビジャレアルU11には監督という概念がなく、今回3人のコーチが来日したが、普段は5人のコーチで12人の選手を見ているのだとダビ・ペレスコーチは語る。

「このカテゴリーには5人のコーチがいます。1人で2、3人を見ている計算ですね。基本的には試合を行ったなかで起きたこと、例えば一人の選手がスペースに入る動きを間違えていた場合、その子の担当のスタッフが「本当はこの方が良かったよ」と指導する。そういったことを5人で担当を分けて指導をすることで、選手たちが良い方向に向かっていけるようにと意識しています」。

ビジャレアル002

 基本的には一人の監督がおり、その下に複数人のコーチが在籍しているというのがよくあるケースだ。スペイン国内にある数多くのチームも同様の育成システムを採用している場合が多い。

 だが、ビジャレアルは3年前からこの特殊な育成システムに変更したことで、これまでとは違ったメリットが生まれてきたという。

「クラブとしても新しいメソッドを取り入れなければならない時期でした。選手たちから見ても第一監督、第二監督を置いてしまうと、わからないことがあったときに、誰に聞いていいかわからなくなる。なので、誰に話しても良いように5人のコーチが共存することで何事も言いやすい状況を作ってあげたんです。

 この変化によって、選手たちのサッカーへの理解度はより高まったと思っています。また、練習方法も変わり、ゲーム形式を多く行うようになったことで、コーチたちもいろいろな役割をやらないといけなくなりました。

 この5人のコーチはそれぞれ知識を持っていないといけないし、フィジカルも含めて幅広い知識が求められています。そういった意味でも不得意なところや分からないところをコーチたちも勉強するようになったことはプラスです。コーチにとっても子どもたちにとっても非常に良い変化だと思っています」

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