「サッカーは論理的な物事の考え方が必要なスポーツ」 チーム力向上に繋がる”言語技術”の身につけ方とは

2017年08月01日

コラム

1人だけ周囲の状況が見えていた斎藤学選手

 十数年前から「論理的に物事を考える力を引き出す」をテーマに言語技術を習得する講義をはじめ、今もJFAアカデミーで月に一度2〜3時間の講座を行っています。

具体的には次の内容です。

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 言語技術の習得には、会話のやりとりが 重要になります。だから、「問答」が最初に学ぶべき項目です。これをベースに「説明」「分析」を、簡単なものから難しいものへと順々にレベルを上げながら身につけていきます。「作文」については講座の後、毎回やらせるようにしています。
 
 では、具体的に何をしているかを紹介したいと思います。「問答」はコミュニケーションをはかるうえで基本的なやりとりですから特別に言うことはありません。

「説明」は選手であれば、自分がプレーした状況を相手に伝えるのに必要になります。「どのエリアでプレーしたのか」とか「相手が何人いたのか」とか「味方が何人いたのか」とか。相手に自分が置かれた状況を説明できなければ議論が交わせません。「絵の分析」は絵を解説するのです。「どんな場所なのか」「季節は?」「天気は?」など 最初に全体像をつかむ情報を探ります。

 大事なことは、絵の中から理由を引っ張り出すこと。例えば、背景に海があるから浜辺とか。その後、中心に描かれる情報を見定めていく。それがサッカーにも通じます。「自分ならここパスを出す。なぜなら、こことここに相手がいてその間にスペースがあり、向こうに味方が走っているから」。サッカーの状況分析と同じことを静止画で行ってトレーニングし、生かすのです。
 
 実は、日本人は絵の分析が得意ではありません。これまで育成年代の選手を指導した中で一人だけはじめから周囲の状況が見えていた選手がいます。それは齋藤学選手(横浜FM)です。とある絵を見せて彼だけが「物置小屋にいて船遊びをしている人」と周囲の状況まで含めて絵の説明をしたのです。ほとんどの選手は「外を見ている人」と中心にあるものの説明をします。

 授業後、コーチに「齋藤くんは状況判断が優れているのではないですか」とたずねてみました。すると「よくわかりましたね。彼は全体を見て判断しています」と答えたのです。私は彼がプレーしているのを見たことはありませんが、言語技術の授業をすればわかります。

YOKOHAMA, JAPAN - JULY 08:  Manabu Saito of Yokohama F.Marinos in action during the J.League J1 match between Yokohama F.Marinos and Sanfrecce Hiroshima at Nissan Stadium on July 8, 2017 in Yokohama, Kanagawa, Japan.  (Photo by Kiyoshi Ota - JL/Getty Images for DAZN)
【横浜F・マリノスで活躍する齋藤学選手。(写真●Getty Images for DAZN)】

 次に「文章の分析」は書いてある内容を分析します。これは欧州の学校では必ずやらせることです。ドイツではゲーテ、イギリスではシェイクスピアなどを分析します。具体的には、同じ本を読み、議論します。例えば、「この登場人物はどんな気持ちだった?」と。日本人は「たぶん、こんな気持ち」と曖昧に根拠もなく答えます。
 
 でも、欧米式だと「こんな気持ちだった。なぜなら、ここにそう書いてあるから」と必ず証拠を示さなければならない。そうしなければ納得しません。それは絵と同じで理由が大事だからです。根拠や理由の延長上に論理的な物事の考え方、論理的な情報の読み取り方があるのです。

 ここが今回のテーマにかかってきますが、これらで習得した言語技術があると、自分の意見に理由があるから話し合いができる ようになる。私がJFAアカデミーのコーチに聞いたのは、授業を積み重ねると徐々に自分たちだけで話し合いができるようになるそうです。チームの課題に対し、意見を出し合い、解決策を見出せるようになったと報告を受けました。言語技術を上げることが、結果的にチームプレーやチームワークの向上につながったというわけです。

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