JFA地域統括ユースダイレクター・城福浩氏が語る“日本サッカー強化論”。技術は「身につけるだけでなく、どう使うかが大事」
2017年08月07日
コラム指導者は「サッカーの奥深さ」を追及し続けなければならない
例えば40メートル前方でフリーになっている選手がいたとする。そこに速く正確なパスを通せればビッグチャンスになるが、ボールのスピードが遅く、精度がズレたら相手にカットされてピンチになりうる。その時に自分の技術を理解していれば、瞬時にどれだけ成功の可能性があり、失敗のリスクがあるか想定できる。その上、実行するか止めるかは時間帯や得失点差などを加味してベターだと思う判断をしていけばいい。
だからこそ、全国の育成年代の指導者が幹であるナショナルトレセンの指導方針を共有しながら、ただ教科書的に選手に教え込むのではなく、選手のレベルや個性に応じて判断を伴うプレーを磨いていく環境をつくっていく必要があるのだ。城福氏はそうした指導を選手に「水をやる」という言葉であらわす。
「状況によって自分で判断していくことが、ひょっとしたら日本の社会が一番苦手なことかもしれません。ただ、サッカーは状況判断が象徴的なスポーツなのかもしれない。1秒後には状況が変わる中で自分が判断していかなければならないスポーツです。その特性を考えたら日本の社会、教育が全て影響してくるのは自然なことです。子どものときからサッカーはどういうものだということを指導者が伝えられると、子どもたちは臆することなく判断する局面が多くなるのではないでしょうか」
城福氏はそれこそが「サッカーの楽しさ」であり、子どもたちに伝えていくべきことだと言う。
「選手にサッカーの理解度がどれだけあって、サッカーの興味や野心がどれだけあるかで言い方が微妙に違ってくるからこそ育成年代は難しいんです。しかし、本来あるべき判断を「もっとこうした方がいいよね」と、伝える術は個人によって違うかもしれません。それぞれの選手に適した伝え方を我々指導者がまず持っていないといけない」
そのためには「自分たちがサッカーをよく知るために、いいサッカーを“観て”いないといけません。当たり前ですが、我々がサッカーの面白さと奥深さを追求する姿勢を持ち続ける必要があります。そして子どもたちにサッカーの面白さと奥深さを感じさせてあげないといけない」と城福氏は語る。子どもたちがサッカーをよく“観る”状況をつくるために、大人たちがどうしていけるかということが求められるのだ。
「どこのプレーに肝があったか、そこにどんな判断があったのかということを子どもたちに気づかせてあげることが重要なんです。基本を徹底的に教え込むことは大事ですが、時にはシーンやプレーの中で使うイメージを持たせることも必要です。インサイドキックひとつにしても、子どもたちには場面を想像しながら取り組んで欲しいです」
素晴らしいプレーや自分たちがやりたいサッカーを成り立たせるためのベースとして、なぜ基本が大事なのか。そうした積み上げの上に良い判断をともなったスーパープレーも生まれてくる。それをただやろうとしてやるのではなく、自分ができるプレーの中で必要だから出せる様にするにはどうしていくかということだ。
「『規律』と『自由』という言い方がいいのかわかりませんが、どの技術を使うかという判断や、ギリギリに判断を変えることをどう伝えていくか、このあたりの伝え方はそれぞれの指導者で違うと思います。子どもによっては、アイコンタクトをするよう伝えるとわざとノールックで出す選手がいるんですよ(笑)」
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