JFA地域統括ユースダイレクター・城福浩氏が語る“日本サッカー強化論”。技術は「身につけるだけでなく、どう使うかが大事」

2017年08月07日

コラム

「選手の思考に水をやる」指導者を増やしたい

 そう説明する城福氏は自分も子どもの頃は「どちらかというと僕も言われたら言われた通りやりたくなくなっちゃうタイプに共感する」というが、プレーそのものがノールックとしても、数秒前にその場所を見て、そこから周りの状況を見て察知しなければ確信的に出すことはできない。

「そのようなところに我々も選手たちも奥深さ、幅広さが要求される」(城福氏)。

 例えばU-20W杯の南アフリカ戦で、ペナルティエリアの左に飛び出した久保建英の左足パスから、堂安律がゴールを決めたシーンが話題になった。左サイドの遠藤渓太からバイタルエリアでパスを受けた堂安がワンタッチで左前にパスを送ると、久保はゴール方向をちらりと見て、その手前にリターンパス。タイミングよく受けた堂安が左足のシュートをゴールに突き刺したのだ。

 堂安から「後ろ!」という声を聞いて出したという久保のパスは “ノールック”という言葉も使われたが、間接視野を生かした効果的なプレーだった。城福氏は「間接視野でどこまで見ているかを含めると、全く見てないなんていうことはないわけですよ」と振り返る。

「あのシーンは(久保)本人ではないので分かりません。ただ、最後のパスの瞬間、堂安を見ていたかは別として、彼がボールを出した場所、ボールの移動時間、相手のDFラインの下がり具合、とさまざまな情報が頭の中に入っており、イメージが浮かんだと思うんですよね」

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【飛び級での活躍を続ける久保建英選手。ノールックにかぎらず“プレーを選択する”という能力のおいて彼のプレーは上の世代でも図抜けている】

 その局面で久保としては南アフリカのセンターバックの動きを見れば、その手前にスペースが生じることはイメージできる。となれば「GKとDFの間よりもマイナス気味の方がスペースはあるなというイメージがあり、声があって、確信を持ってクロスがあがる」と城福氏が語る通り、間接視野の情報から確信的にそのパスを出せるわけだ。もちろん、そこには久保の高い技術がベースにあるが、的確な状況判断が生んだアシストと言える。

「僕が大事にしたいのは子どもたちが何を考えているかを僕たちが理解しないといけないということです。『今はお前がこうしなきゃいけなかっただろう』という前に、この子はどんな情報があって何をしたかったか、その子の頭の中が分かったうえで、何をアプローチするか。子どもたちが何を考えているのかを把握して、判断する指導者がより多くなっていかないといけない」

 そう語る城福氏は「子どもは子どもなりの状況判断をしている場合がある」と主張する。

「彼の中ではいい判断をしたけれど技術が伴わなかったかもしれない。そこを見極めてあげることが子どもにたちにとっての気づきになる。『サッカー面白い、もっとやろう!』となっていくために、褒めちぎるアプローチが唯一の方法ではないと考えます。彼らがその瞬間にどんな情報のもとでその判断に至ったか、それを理解してあげられる「選手の思考に水をやる」指導者がもっともっと増えていくといいなと思います」


<プロフィール>
城福浩(じょうふく ひろし)
1961年3月21日生まれ、徳島県出身。早稲田大学卒業後、富士通でプレー。引退後は富士通の監督などを務めたあと、1999年にJFAナショナルトレセンコーチに就任。アンダー世代の代表監督を歴任後、FC東京、ヴァンフォーレ甲府といったJクラブで監督を務めた。2017年からJFAに復帰し、地域統括ユースダイレクター(関東担当)として活動する。


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◎育成哲学の作り方
・立石敬之・中村忠(FC東京)
「育成大改革」―久保建英を始めとする新たな若手選手育成メソッド―
・須藤茂光・城福浩(JFA)
「日本サッカー」強化論 「水をやり続ける指導者をもっともっと増やし続けていく」

◎ポジションとは何か?
・山村和也(セレッソ大阪)原点回帰 トップ下で輝く理由
・川島永嗣(FCメス)「日本では、GKは“受ける”という発想しかなかった」
・ラウール・ゴンサレス 引退後の人生「今はどこもかしこも時間に追われ、余裕がなくなっている」

◎新連載スタート
・武田砂鉄『スポーツ文化異論』
第一回 試合終了直後のインタビューの意味
・木村浩嗣『スペインフットボールジャーナル』
メッシ、ロナウドよ、そこに愛はあるのか?
・佐藤拓也『西村卓朗のチーム強化論』
第1回「激論」
・中村慎太郎『サッカーをつむぐ人』
第一回 サッカー本の意義


 

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