サッカー脳を鍛えて”直感”を磨く!脳科学者が語る「判断力」の秘密

2017年11月28日

コラム
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「天才だね」「才能あるね」のほめ方は危険?

 小さかった頃うまかった子が伸び悩む原因として、考えられる大きな原因がもうひとつあるんですよ。それは、6、7、8歳くらいで天才呼ばわりされること。これは非常に危険なんです。

 ほめかたでIQが変わることを証明した、スタンフォード大学心理学部教授キャロル・ドゥエックという人が行った有名な実験があります。

 まず、子どもたちを2つのグループに分け、ひとつのグループの子どもたちは、「天才だね」「才能あるね」とほめます。そして、もう一方の子どもたちには、「がんばったね」「一生懸命努力したね」と努力をほめるのです。すると、その後の伸び方が明らかに違うのです。

 例えば、難しいパズルとごく簡単なパズルを用意して、それぞれのグループにやってもらいます。すると、天才とほめられたグループは、簡単なパズルに取り組み、逆に努力をほめられたグループは難しい方に挑戦するんです。

 また、難しい問題(テスト)を解いてもらった後、「友だちの答案を見てもいいよ」と伝えると、天才とほめられた子たちは、自分より出来の悪い子の答案を見ようとする。

 そして、努力をほめられた子たちは、出来のいい子の答案を見て学ぼうとし、最終的には努力をほめられた子はスキルアップしてIQが2割ほどアップする。天才とほめられた子はIQが3割くらい落ちてしまうという結果が出ているんです。身体能力にも同じことが言えるんじゃないかと私は思っています。

 先述した前頭葉には、エラー陽性電位という自己を観察するモニターがあります。ここを働かせ、自分のエラーを積極的に見つけ、直していける人が、後々、力が上がっていく、伸びていく人なのです。

 お父さんが「やっぱりオレの子だ」なんて言ったりしていたら危険。失敗して学び、成長しなければいけないのに、今の自分を守ろうとしてリスクのあることにチャレンジしなくなります。この積み重ねは相当大きいですよ。

 こうして脳を通して見てみると、センスや直感、才能というものは、持って生まれてきたものというより、変化、成長に裏打ちされている才能であって、時間をかけた意識的な努力が前提であることがよくわかります。

 最近、天分としか思えないような才能があるプレーヤーを「持ってる」という言葉で表現しますが、ぜひこれは、「変化・成長する力を持ってる」と置き換えて考えてほしいと思いますね。

●速読がスポーツの役に立つってホント?

 例えば、ゆっくりとしたドリブルだと、脳に負荷はかからないけど、「速くやれ」と言われれば、当然ですが、負荷がかかりますよね。また、相手のレベルが高ければ高いほど、判断を速くしなければいけません。つまり、練習をスピードアップすることで、脳に負荷がかかり、スキルが自然に上がっていくわけです。速読もそうした負荷の意味はあるかもしれませんが、直接スポーツに影響があるかは疑問です。

 それより、ビデオを早回しで見ることには効果があるかもしれません。まず最初の段階ではゆっくりの映像で見て、ここはこうした方がいい、と判断できるレベルにしておきます。その後早回しにして、判断のスピードを上げて行く。本当は自分のアイカメラでの映像だったら理想的なのですが、ゴール裏や、レベルの高いチームなら相手のディフェンス側からなどに固定カメラを設定して撮ることができれば、面白いと思いますよ。

 見始めのとき、最初はボールにばかり目が行ってしまうはず。でもそこそこできる子はボールなんて追わず、自分がマークするポジションの子や、さらに全体を見るはずです。そうして、早く判断する。直感できるようになる効果は相当期待できるかもしれません。

 


 

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(プロフィール)
篠原菊紀(しのはら・きくのり)
諏訪東京理科大学共通教育センター教授。専門は脳科学、健康教育学。多チャンネル近赤外線分光法を使い、日常的な脳活動を研究。『男の子の脳を伸ばすのはどんな親?』(宝島社)など、著書多数。フジテレビ「スマートモンキーズ」などテレビ番組での実験、解説などでもおなじみ。

 

 

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