「心配する」「がっかりする」 は信じていないから。子どもが成長の“キッカケ”を掴むために大人ができること

2017年12月14日

コラム

子どもたちに期待はしない

 少年院に入った子がいました。少年院に入っている間、毎月毎月私は少年院に面会に行きました。そのたびにその子から、自分はこれじゃいけん、これじゃいけん、と、少年院の中で思い続けてるんだ、という話を聞きました。

「ばっちゃん、おれ、どういうふうにして生きていったらいいと思う?」 

と。なぜ自分はこうなってしまったのか、それを知りたい、ずっと考え続けているというのです。少年院の中でも、一生懸命勉強して考え続けているんだ、と言うので、「あ、それじゃ、その勉強を生かして、この先も勉強したらいいよ。なんなら、おまえ、大学行ってみるか」

 と言ってみたんです。

「うっそ、少年院出た人間なんか、大学行かれんよ」
「いやいや、ちゃんと進学する方法があるんよ、ばっちゃんが手続きしちゃる」

 と言って。

 そして、その子は、少年院から戻り、今は、ある大学に通っています。それも、心理学を勉強しているんです。

 今では、なぜ、自分が少年院に入らなければならなくなったのかということを、全面的にみんなに知ってもらいたい、と言っています。なぜ、更生できて、進学して、大学で心理学の勉強をしているかということを、たくさんの人に知ってもらいたいと熱弁をふるうこともあるんです。

 少年院に入るという寄り道をしても、自分で考え、進学できた彼は、少年院から出てきた子にとってのすばらしい手本になってくれています。彼のことは、講演会などでもよく話すけれど、他にも、大学に行っている子はいっぱいいますよ。

 奨学金の手続きは私が教えます。その子が、勉強したい、と言い始めたときに、やり方を教えてやるとか、詳しい人に引き合わせてあげるようにする。いつもの私のやりかたで、「一緒に会おうか」と言って私も話を聞きます。

 なにかの勉強を始めたい、資格を取りたい、という場合は、子どもは自分から言います。「やってみたいんじゃ」と本人が言ったときに、それならやってみようと私もすぐ協力するようにしています。

 本人が勉強したいと思ってもいないのに、進学のことをこっちから提案することはできないよ。相手の人生のレールをこっちが敷くのはだめ。そういう期待は子どもはすごく重荷に感じる。

 本人がやりたいという気持ちになるまで待つこと。いや、別に待ってるわけでもないんだけれどもね。自然体にしています。

 相談に来たときには、相談にのります。でも、する気がない子に言ってもどうにもならん。本人がやろう、という気になって、初めて相談にのってやるの。

 する気のないのに言ったってなんの意味もない。私だってそう、する気がなかったら、誰のアドバイスだって聞かないでしょう。自分がされて嫌なことは人にしない。人に言われて嫌なことは自分も言わない。それは私の鉄則だからね。

 なかなか、ひとりの子どもの気持ちをね、それも、複雑な環境で育てられた子の気持ちを、こちらの関わりかたで変えていくというのは、難しい。並大抵のことではないんです。でも、見守り続けていくうちに、本人がきっかけをつかみ、大きく成長していくこともあるんです。


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【書名】あんた、ご飯食うたん? 子どもの心を開く大人の向き合い方
【発行】カンゼン
【著者】中本忠子
【発売日】2017/12/13

⇒子どもは信頼できる大人を見抜いている。子育てや親子関係に悩むあなたへ。約40年にわたり、居場所のない子どもたちに手料理を作り続ける、広島のばっちゃんから心に効くメッセージ


<プロフィール>
中本 忠子
(なかもと ちかこ)
1934年、広島県江田島市生まれ。1980年から保護司を務める。その活動を通じて犯罪を犯したり、非行に走る子どもの多くが「お腹がすくから悪さをする」と知り、それ以降無償で子どもに食事を提供するようになる。保護司を引退後、2015年にNPO法人「食べて語ろう会」を設立し、同法人の理事長に。2014年に法務省保護局長特別感謝状受賞。2015年に社会貢献支援者表彰受賞。2016年吉川治文化賞、2017年に第26回ペスタロッチ一教育賞を受賞。


 

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