湘南ベルマーレ・曺貴裁監督が指導者として貫く信念。「同じ練習メニューは組まない」

2018年02月06日

コラム
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選手たちを「熱狂させる」ことは僕の中のキーワード

 指導者に転じるきっかけとなった感動も、僕の心のなかで「一期一真剣」につながる思いを大きく膨らませた。

 現役引退から半年ほどがすぎた98年の夏に、ドイツのケルンへ向かった。いまも親交のある在ドイツ韓国人からエージェントを紹介してもらい、クライアントの一人に加えてもらったことがきっかけだった。

 エージェントからは「プレーをちょっと続けながら、コーチライセンスを取得して帰国すればいいんじゃないか」と言われて、結婚して3年目になる妻とともに海をわたった。もっとも、渡独当時はサッカーの指導者と言われても、いまひとつピンと来ない自分がいた。

 第2の人生をどのようにして歩んでいくのかをあれこれ考えながら、1年ほどがすぎた。サッカーに関してはドイツ語をかなり理解できるようになり、会話にもほとんど困らなくなった。地元の子どもたちを教える臨時コーチとして、アルバイト収入を得ることも増えてきた。

 そうしたタイミングで、ケルン地域を対象とした指導者ライセンス講習会が開催されることを知った。子どもたちへの指導を介して、ちょっとだけ指導者という仕事に興味を抱き始めていた僕は30人ほどのドイツ人に交じって受講し、20人ほどの子どもたちを指導する実践テストを最後に受けた。

 結果は望外の合格だった。筆記試験などの出来は悪かったはずなのに、と不思議そうな顔をしていると、インストラクターから理由を告げられた。

「子どもたちに行ったアンケート調査の結果、あなたの指導が一番楽しかったと言っていました」

 実践テストのテーマが何だったのか、僕がドイツ語でどのような指示を送ったのかはまったく覚えていない。おそらくは文法も含めて、誤ったドイツ語を使っていたと思う。それでも子どもたちは喜んでくれた。僕の指導を「素晴らしい」ではなく、笑顔で「楽しい」と言ってくれた。

 インストラクターは『Begeisterung』(ドイツ語で『熱狂させる』という意味)という言葉で、僕の指導を高く評価してくれた。

「相手を熱狂させられるかどうかが、指導において何よりも大切なポイントとなります。あなたの熱狂させたい思いが、子どもたちに伝わったんです」

 自分が真剣に臨んだことで、相手が喜んでくれる。いままでに経験したことのない感動は僕を指導者への道に導くきっかけとなり、以来、選手たちを「熱狂させる」ことは僕のなかでキーワードであり続けている。

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