ドリブルの優先度がパスより低い5つの理由。”バルサメソッド”に学ぶレガテの指導術

2018年05月24日

戦術/スキル
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スペイン代表のアンドレス・イニエスタがJ1のヴィッセル神戸に加入することが決定しました。世界最高峰のMFは12歳でバルセロナのカンテラに入団。約22年間”バルサ一筋”でプレーしてきました。イニエスタの特筆すべき点は、緩急を巧みに使い、ディフェンダーに寄せられてもボールを奪われないドリブルです。彼のドリブルを参考にしている子も多いのではないでしょうか。今回はイニエスタが育ったバルセロナのドリブル指導メソッドを紹介します。

再構成●ジュニサカ編集部 著●ラウレアーノ・ルイス 訳●高司裕也 写真●Getty Images、佐藤博之

『世界最高のサッカー指導書 バルセロナトレーニングメソッド』より一部転載


BARCELONA, SPAIN - MAY 09:  Andres Iniesta of FC Barcelona runs with the ball during the La Liga match between Barcelona and Real Madrid at Camp Nou on May 9, 2018 in Barcelona, Spain.  (Photo by David Ramos/Getty Images)

ドリブルをする際に気をつけたいこと

 ドリブルは、ボールを思い通りにコントロールしながら、ピッチを前進する技術です。足のどの部位を使ってもドリブルはできます。かかと、足の裏、もも、胸、頭も使えますし、地面、空中もしくは、2つを織り交ぜた形でも行うことができます。

 例えば、何度かヘディングをした後、ももでボールをコントロールし、地面にボールを置いた後に、足でボールを運ぶことができます。  

 ドリブルをするに際して、難しいことをしたいのであれば、ゆっくりしたスピードでドリブルをすることが大切ですし、速くドリブルしたいのであればその反対のことを考えなければなりません。

 通常、初心者はこのコンセプトを理解できずに、間違えた解釈でプレーします。また、体の真下にボールを置いて、何度もボールを触ればドリブルのスピードは驚くほど遅くなりますし、速くドリブルをしようとしてボールを遠くに置こうとすると、遠くにコントロールしすぎた結果、相手にボールを渡してしまうでしょう。

 ボールがピッチ外へと転がってしまうかもしれません。サッカーを始めた子どもたちには、ボールをいつも持つようにと話します。

 そうしてドリブルについて少しずつ上達させていかなければなりません。子どもたちにアドバイスすることは、彼らが難しいと考える動作を取り除いて、走るリズムを崩すことなく、アウトサイドを使って全速力でドリブルするということです。

 相手が自分の近くにいる時は、インサイドを使います。これにより、相手にとってはボールを奪いにくい状況が生まれます。

 相手が自分の真横にいる場合は、相手にとって見えない場所、つまり相手と反対側にボールを置きます。 この状況に備えて、両足を使えるように練習する必要があります。パコ・ヘントやレオ・メッシのようにドリブルができる選手は他に見たことがありません。

 2人とも驚くべきスピードのなかで、安定した技術でボールを運びます。決してボールは足元から離れません。ただ、選手たちには、ドリブルはパスより優先順位は低いということを明確に伝えなくてはなりません。これにはいくつかの理由があります。

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ドリブルがパスより優先度が低い5つの理由

1.ドリブルをすることで相手と競い合う可能性が生じ、場合によってはボールを奪われることがある。

2.ドリブルをする際、相手とのコンタクトが生じます。この接触により、ケガをする可能性が高まる。

3.仮にそれほど強くボールを蹴らなかったとしても、ボールを50m走らせるのに、4秒程度しかかからない。

4.同じ距離を走ったとしたら7秒くらいはかかるでしょう。

5.同じ距離をドリブルしたとしたら少なくとも9秒はかかるはずです

 ここに書いたことを選手に質問しみてください。付け加えますが、「ボールは疲れない」ということも教える必要があるでしょう。
 
 ワンタッチでのプレーにすごくこだわりを持っていて、ドリブルを消し去りたいと考えている指導者が存在しています。確かにドリブルは制限しなければなりません。ドリブルは時間がかかることがあるからです。しかし、ドリブルを切り捨ててはいけません。

 FWが相手ペナルティーエリア近くにいて、相手ディフェンスのポジショニングが悪ければ、相手ゴールに向かってドリブルをして、ゴールキーパーの前まで突破し、ゴールチャンスを得られるかもしれません。
 
 ディフェンスの選手が良いポジションを取っているのであれば、ゆっくりとドリブルをすることによって後ろにいるオフェンスの選手たちがデスマルケ(※マークを外す動き)をするための時間を作り、理想的なタイミングでスペースへ侵入させることができるでしょう。  

 つまり、プレーの状況に応じて、用いる技術を合わせる必要があるということです。よい選手であれば、場面に応じたプレーを選択することができるでしょう。

恐がらせずにチャレンジさせることが大切

 ボールを正確にコントロールし、スピードに乗って、ピッチ上をドリブルしている時には、ボールを奪いに来るディフェンスの選手と対峙することがあるでしょう。

 その時には、ディフェンスに対してレガテを行います。レガテとは、ボールと一緒にピッチ上を前進し、ボールのコントロールを失うことなく対峙する相手選手を突破する技術です。  

 ドリブルで相手を交わす技術を身につけるのは必要なことです。レガテ(ドリブル突破)はとても美しく、実用的で、プレーを縦方向へと運び、解決策をもたらしてくれるプレーです。

 どの時代の素晴らしい選手たちも、レガテが得意な選手たちでした。子どもたちにも、ボールを失うことを恐がらせずに、チャレンジさせることが大切です。相手にボールを取られても、何度も挑戦するように仕向けてあげましょう。

 この難しい技術を身につけたら、味方へのパスとレガテを結びつけてあげることが大切です。指導者は、子どもたちが大好きな個人技を伸ばしてあげようと優しく励ますことが大切です。

 そうすることで子どもたちはドリブルをし、レガテを使って相手を突破し、集団プレーについても理解していくと考えています。これは驚くべきことではありません。私はこれまでの指導経験を通して、こうしたことを見てきました。

ドリブルをマスターするために必要なトレーニング

 レガテの能力を高めマスターするには、異なるリズムで緩急を使ってドリブルし、短い距離や長い距離でボールを運び、方向を変えながら、相手に見立てた障害物をかわすトレーニングをしましょう。

 スペースは制限し、視野を縮めたり、広げたりすることができます。この初期の学習段階においては、実際の相手を用いません。集中力は、自分の動きだけに絞ることが大切です。もし、レガテの学習段階で、相手とマッチアップすれば、簡単に疲れてしまいトレーニングになりません。  

 そうであったとしても、このトレーニングは長く行いません。なぜなら、レガテの練習はみせかけであってはいけないからです。練習で、ボールを取りに来ない受け身の相手と対峙するのと実際の試合では、選手の感情や気持ちは大きく変化し、練習とは全く違う景色に感じることになるでしょう。

 だからこそ、どの年代でも、プロになっても1対1を継続して行う必要があるでしょう。力の均衡した選手同士でプレーさせることは良いことですが、いつも対戦相手は交代することが大切です。

 いつも同じ相手とプレーをしていては、相手の選手もその選手のフェイントを次第に読めるようになります。これにより、オフェンスの選手は、自分自身の策略や技術に対して自信を失ってしまうかもしれません。  

 レガテを上達させる他の方法として、フリーマンを用いたゲームを行うとよいでしょう。フリーマンはいつも攻撃で、オフェンスの選手はプレーを展開するためのたくさんのオプションがあります。

 効率よくプレーし、マークやボールを奪いに来る相手を突破します。もし疲労してきたら、数的優位をただ保つばかりでなく、より良いフィジカルコンディションを保つために、ポジションを交代しながら行うと良いでしょう。  

 経験から言うと、レガテにおいて高いスキルを持つ賢い選手は、小さい頃に、試合、ロンド、ミニゲームで対戦相手といつも対峙していたことが挙げられます。

 反対に、プロ選手の中で、ボールを保持することができない選手を時々見かけますが、その原因は、小さい頃にボールを保持することを禁止されていたことが挙げられます。残念なとに、多くのケースで、大人が子どもの才能を引き出し、育てることができていないことがあります。  

 これを踏まえて、指導者や選手たちに勧めていることとして、ミニゲームの中で、ただリスクのないプレー、単調なプレー、子どもたちの自主的な意欲をそぐようなプレーにとどめてはいけないということです。

≪イニエスタ、バルサ時代のドリブルプレー集≫


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