スポーツ万能は「つくれる」のか。異彩を放つ、いわきFCの育成哲学
2019年01月07日
コラム
目指すは“スポーツ万能”のアスリート
小俣氏によれば前転や後転を繰り返すことも、ロンダートやハンドスプリングにもトライさせることも、すべては刺激を入れるための第一歩。その積み重ねとして体の中に『神経ネットワーク』が次々と張り巡らされたり、促通され、今や死語となって久しい「スポーツ万能の子ども」の条件が整う可能性が高まってくる。
育成システムの研究とフィジカルトレーニングコーチを30年近く務めてきたキャリアの中で、トップレベルの選手でありながら新しいスキルをなかなか習得できない、あることはできるのに他のことはできないケースがあまりにも多いことに驚かされた。理由をたどっていくと、決まって子どもの頃に行き着くと小俣氏は続ける。
「子どもの頃の運動体験が少ないとか、あるいはひとつの競技しかやっていない選手が本当に大勢いるんですね。子どもの頃にいろいろな運動体験をしておくと、その度に神経ネットワークが作られていくんです。神経ネットワークを持って大人になれば、ネットワークを駆使していろいろと使い回しながら、さまざまな運動ができるんですけど、大人になってからはもう変えることがむずかしいと言われています。子どもの頃に何とかしておかなければいけないよね、と」
いわきFCのU-15の子どもたちも、小学生時代からサッカーしか経験してこなかった。だからこそ、未来で大きく羽ばたくために、あえて今は体を徹底的に、あらゆるプログラムを介して動かしていく。
ある日の練習前のミーティング。小俣氏はクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシらのスーパースターがアクロバティックなシュートを決めている画像を見せながら、子どもたちにこう訴えた。
「大人になったら終わりです。あと1、2年のうちに神経ネットワークを作らないといけない」
スポーツ万能だからこそ、見る側を驚嘆させ、憧れさせるプレーを演じることができる。将来の夢を大きく、そして果てしなく膨らませながら、いわきFCのU-15に所属する子どもたちは、他のチームに所属する同世代とはまったく異なる道をまっすぐに、力強く進んでいく。

【fch連動企画】いわきFCの果てなき夢
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