長友佑都選手自身が語る「スタミナ」のルーツとは

2014年03月05日

インタビュー
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日本人選手でスタミナのある選手といえば、まずは長友佑都選手が思い浮かぶと思います。90分間動きつづけられる、そのスタミナはどのようにして養われたのか。「スタミナ」のルーツについて語る長友選手自身の言葉に耳を傾けてみましょう。

文●海江田哲朗 写真●Getty Images

※『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.13』より転載


CHOFU, JAPAN - JUNE 07:  Yuto Nagatomo of Japan runs with the ball during the international friendly match between Japan and Syria at Tokyo Stadium on June 7, 2017 in Chofu, Tokyo, Japan.  (Photo by Atsushi Tomura/Getty Images)

実は長距離走が苦手だったジュニア時代

 優れたサイドバックの条件はいくつかあるが、中でも攻守両面に絡める豊富な運動量は欠かせない。このポジション、チームが攻めに転じるとなれば最終ラインから前線まで一気に駆け上がり、逆にピンチのときは本来の持ち場に急いで戻るのが仕事だ。移動距離が長く、より一層のハードワークが求められる。

 その点において、現在の日本代表では長友佑都の右に出る者はいない。タッチライン際を疾風のように走り抜け、なおかつゲーム終盤になっても衰えを見せないタフネスぶりは驚異的だ。それを可能にするスタミナをどのように体得したのだろうか。


――少年時代から持久力には自信があったんですか?

 いいえ、昔はまるでダメでした。たとえば中学2年のときにあった校内駅伝大会では、100人中50位のタイム。運動部に所属していない生徒も含め、同学年全体の真ん中ですよ(笑)。同じサッカー部やバスケ部、野球部などの速い人には全然敵わない。長距離は苦手でしたね。

――となると、瞬発力タイプ?

 そうなるのかな。それでもずば抜けていたわけではありません。クラス対抗リレーのメンバーに選ばれる程度です。

――では、いつ頃からスタミナがついてきたのですか?

 中3の秋から3カ月間、サッカー部と駅伝部を掛け持ちした時期がありました。このときが一大転機です。

――持久力向上の特訓ですか?

 はい。短期集中で伸ばしてみようと。

――それは自発的に?

 井上先生という方がサッカー部と駅伝部の両方を指導していて、強く勧められました。いまのままでは高校で通用しないぞ、と言われて。

部活で走力を磨いた中学時代

――当時のトレーニングの流れを教えてください。

 放課後、まずは陸上トラックで400メートル走を10本。それから5キロ走や山に入ってクロスカントリーなど、とにかくよく走りました。その後、サッカーの練習です。

――持久力がグングンついていくのを体感しましたか?

 自分でも驚くほどに。急にスタミナがついて、試合で足が止まらなくなった。

――その取り組みが選手としてのベースづくりにつながったのでしょうか?

 間違いないですね。あのときの厳しいトレーニングが現在の自分の土台になっていると感じます。

――そうやって長友選手を導いた井上先生にはさまざまな影響を受けたそうですね。

 熱血でしたよ。ドラマの『金八先生』みたいな方です。部活をさぼってゲームセンターで遊んでいたら、わざわざ探し出しに来てぶっとばされたこともあります。

――あら、のちの日本代表がずいぶんと不真面目な態度じゃないですか。

 中学に入ってしばらくサッカーに打ち込めない時期がありました。もともと学校の部活ではなく、愛媛FC(当時はJFL)のジュニアユースに入りたかったんですけれど、セレクションに落ちてしまい……。それなりに自信があっただけにショックでしたね。モチベーションを保つのが難しかった。それに気の合う友だちがちょっと不良っぽいというか、やんちゃな友だちが多かったので(笑)。

「いま頑張れない奴は、明日になっても頑張れない」

Japan v Ghana - International Friendly

――先生から授かった言葉で、いまも支えにしているようなものはありますか?

 自分づくり、仲間づくり、感謝の心。この三本柱を大事にすること。「いま頑張れない奴は、明日になっても頑張れないぞ」という叱咤激励も、自分に刻み込んでいる言葉です。

――中学卒業後に愛媛を離れ、強豪の東福岡高校に進学した際の経緯は?

 中3になって進路を決めるとき、少し悩みました。県内の新居浜工業に進もうか、それとも他に選択肢があるのかどうか。そこで、母がどうせなら県外に出てみなさいと言ってくれたんです。

――広い世界を見ておいで、と。

 思い切って勝負してこい、という意味だと受け取りました。

――なるほど、そうして中3秋の駅伝部の話につながるわけですね。

 懸命に体力を強化して、東福岡高校に決まったのは11月だったかな。ギリギリ間に合った感じです。

スタミナを強化する近道はない。続けることが大事

――高校では、どのようにサッカーと向き合いましたか?

 朝、学校が始まる前に走って筋トレをひと通り行い、放課後の練習も最後まで残って練習です。あまりにストイックすぎて周りは引いてましたね(笑)。変な奴だと思われていたでしょう。

 うちは片親ですから、私立で寮生活をさせるために、母は相当無理をしてくれたはずなんです。さらに部活の合宿費用などいろいろとお金が必要ですし。それを思うと、少しも空費できなかった。だから、サッカーだけではなく授業も真剣でしたよ。3人も子どもを育てる中、僕を県外に出してくれたことを考えれば、居眠りなんてできるわけがありません。

――結果的に、そういったことが精神的な自立も早めたのでは?

 そうですね。結局、大事なのはメンタル。巧い選手はたくさんいるけれど、戦えるかどうかは別問題でしょ? メンタルの強さが成長を加速させるのだと思います。

――今回のテーマであるスタミナが生み出すメリットについてどう考えますか?

 そもそも現代サッカーは走れないと厳しい。僕のような小柄な選手は技巧派が主流ですが、その選手が走れて、さらに戦えたらプレーのレベルはより一層上がっていくはずです。何より、アスリートとして堅固なベースになります。故障で一時的に練習を休んでも、コンディションの戻りが早い。スタミナを強化するための近道なんてありませんよ。自分を律して、他の人より質量に勝るトレーニングを積む。とにかく、やりつづけることでしか得られません。


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