サッカーとラグビーの違いはどこに? “フットボール”の源流を探る
2016年01月29日
コラムパス・サッカーの発祥
だが、プレー・スタイルはそう簡単には変わらず、その後もドリブルやロングパスを蹴り込む戦い方が受け継がれていた。しかし、1867年創立のスコットランドの名門クイーンズパークFCで、ついにパス・サッカーの原型となるショートパスのサッカーが発明された。スコットランドにはテクニックに優れた選手が多かったからだとも、ケルト系のスコットランド人はイングランドのアングロサクソン人より小柄な人が多かったのでイングランドに対抗するためにショートパスを編み出したのだとも言われている。
ちなみに、クイーンズパークはその後プロ化を拒否したため弱体化し、現在はスコットランド3部リーグに所属しているが、スコットランドの事実上のナショナル・スタジアムであるハンプデンパークを所有しているので有名だ。
こうして「イングランドのロングパス。スコットランドのショートパス」と言われるようになるが、これこそが国によるスタイルの違いが意識されるようになった最初の例である。
FAが結成された18世紀の中頃、産業革命が進み、英国は経済的にも軍事的にも圧倒的な世界最強国だった。世界各地に駐在していた英国人の商人や技師、軍人などによってサッカーも世界中に伝えられていった。そして、どこの国でも最初はイングランド流が主流だった。
サッカーはドーバー海峡を越えてヨーロッパ大陸にも伝わった。地理的に近いフランスやベルギー、オランダへ。さらにドイツやオーストリア、ハンガリー、チェコといった中欧地域にサッカーは伝播していく。そして、中欧地域ではスコットランド式のショートパスが好まれるようになっていく。論理的で緻密な思考を得意とする国民性の人たちだからなのだろう。
南米大陸のサッカー先進国アルゼンチンでも、当初はイングランド・スタイルが主流だった。だが、1920年代に遠征してきたハンガリーのクラブのプレーを見て、アルゼンチンはショートパスをつなぐスタイルに傾倒。以後、アルゼンチンは独特のプレー・スタイルを生み出していくが、そのルーツを遡ればスコットランドのショートパスに行きつくのだ。(続きは『フットボール批評09』でお楽しみください)。
⇒サッカー人気に陰りが見える今こそ、サッカーの原点や本質、根源的な魅力や楽しみ方を思い出し、気付かせてくれるような企画をこれでもかと散りばめました。「サッカーはつまらない」なんて言わせない!
フットボール批評issue09
【発行】株式会社カンゼン
B5判/128ページ
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