“8人制サッカー”は何を育成できるのか。議論されるべきは「生じるであろう問題点」/関西クラブユース連盟 宮川淑人氏 編【短期連載】

2017年03月16日

コラム

 一人ひとりのボールタッチ数が増え、ピッチが狭い分全員が攻守に関わりやすくなる。8人制サッカーがスタートして5年がたった。“少人数制”サッカーの採用は4種の育成の現場に何をもたらしたのか。

 2017年3月6日に発売となった『ジュニアサッカーを応援しよう! Vol.44春号』の第2特集では、複数のサッカー関係者に取材協力を頂き、8人制サッカーを見つめる企画を行った。ページの都合上、誌面ではインタビューの一部しか掲載できなかったが、それぞれに内容が濃く8人制サッカーを通してジュニアサッカーを見つめ直すいい機会になると考えたため、本誌とWebの連動企画として4人のサッカー関係者のインタビューを全文公開する。

 一人目は関西クラブユースサッカー連盟の会長であり、枚方FCの代表を務める宮川淑人氏だ。8人制だけでなく様々な問題にも言及してくれているので、ぜひご一読いただきたい。

前編はコチラから

(取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部)


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一人審判制もジュニア育成と結びつけて現実を教えるべき

――話を戻します。8人制サッカーの導入とともに「一人審判制」も推奨されました。

「一人審判制は運営面からいえば負担を減らしてくれています。15人の選手に対して引率人数が3人いるのは、クラブにとっても負担が大きいから私は賛成です。

 しかし一方で、ミスジャッジが起こると不公平だという意見があります。そこには全国大会という存在も絡んでいて、たとえば県予選でミスジャッジした場合『うちの子たちの目標をどうしてくれるんや』と。

 でも、私は“審判もミスする”という現実を受け止める気持ちと、同時に審判をリスペクトする気持ちを育む意味でええやないかと思っています。

 うちのクラブ(枚方FC)では、練習試合ですが、子どもに一人審判をやらせます。すると、どういうことが起こるか? 一人ではすべてのジャッジをするのが大変だし、自分がミスジャッジをすると選手たちに責められるから審判の気持ちが理解できるようになる。

 選手たちにとっては公式戦だからとか練習試合だからとか関係ないんです。責められた子、またその経験をした子は次の試合から審判を責めなくなります。だから私は一人審判制もミスジャッジもOKやと思います」

――8人制サッカーに関して、(関西クラブユースサッカー)連盟に上がってきている問題などはないのですか?

「技術的な側面で見ると、サッカーを経験者している指導者からすれば、ある意味8人制はサッカーではないという意見もよく聞かれます。当然8人制で全国大会が開かれているから勝利を目指さざるを得ない。でも、ジュニアユースやユースを保有しているクラブは“育成”としてその問題を自らで解消しているところがあります。

 その一方で、ジュニアしか持っていないクラブの中には選手たちと小学生の間しか関われないから8人制で勝利を目指すし、それが当たり前になります。もちろん、すべてのクラブがそうではないのは承知していますが、良い悪いはどの視点で物事を見るのかで変わってきます。

 そもそもうちを含め現場の指導者が8人制と11人制を認知した上で考えて子どもたちを育成しているかは疑問です。むしろ少ないというのが正直なところではないでしょうか。

 どの選手も“今”勝ちたいですし、指導者も小学5年生と中学1年生を担当するのではまったく違う考えを持つことになると思います。様々な面で一貫指導は本当に難しいんです。

 うちでも中学生に上がる段階で、選手の人数も選手自体も入れ替わりがあるから指導に継続性が持てる子持てない子が出てしまいます」

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