この練習は何のため? “やらされすぎ”がケガを生む。心と体の関係性
2017年07月19日
フィジカル/メディカルなぜ人はケガをするのか。サッカー選手であれば、捻挫や骨折など試合中に対戦相手と接触したときにおこるものもあれば、疲労が蓄積して発生するシンスプリントや成長期の子どもが発症しやすいオスグッド病などがある。原因はさまざまで一概に「こうしておけばケガはしない」という万能薬のようなものはないと言っていい。しかし、キネティックフォーラムという治療家、トレーナー、指導者などで構成される学術団体の代表を務める矢田修一氏は「心が満たされていると、どれだけやってもケガをしないものなんです」と語る。この言葉の真意とは。
取材・文●吉村憲文 写真●佐藤博之、古賀庸介、ジュニサカ編集部

心の充実がなくして体は動かない
「心が満たされていると、どれだけやってもケガをしないものなんです。でも心にどこか思うところがあると、それはケガになって現れるものなんですよ」
そう話すのはキネティックフォーラムを主宰する矢田修一氏だ。
キネティックフォーラムとは医師、指導者、施術者、トレーナー、選手で構成される総合的なサポートグループ。施術者である矢田氏は体、動きの偏りから精神的な状態まで様々な原因を分析し、患者の根本的な治療をおこなうとともに、ジュニア世代のアスリートから超一流選手の心身のケアも担当している。その豊富な経験をもとに、今の子どもたちに起きていることと、親が考えるべき子どもへのスタンスとは何かを訊いた。
「朝9時に彼は『寝てない』といったんですよ。プロ野球選手なんで、私が『オフやから、また飲みにいったんちゃうか?』といったら、そうじゃありませんでした」
矢田氏の強い要望で名前こそ出せないが、プロ野球界を代表する超一流選手を中学生の頃からサポートしているという。
「彼がいうには、『教えてもらったエクササイズをホテルに戻ってやってみたんですが、なかなかできなくて。夢中になってやっていたら、朝の6時になってました。やばいと思って慌てて寝たんです』って。信念をもってやっていたら、時間も忘れてしまうものなんです」
筆者は矢田氏のいう「心が満たされていると、どれだけやってもケガをしないものなんです」という言葉の意味が少しだけ理解できた気がした。夢中になって何かに取り組むと、そこには自然と集中力が生まれ、疲れなど感じている暇がない。

「昔、田んぼで野球をやってて骨折するやつはいませんでした。捻挫しても次の日に走れる。今はこれだけ環境がよくなったのに、けが人が増える一方じゃないですか。決して環境が悪いわけではない、指導が悪いわけでもない。ただ偏りが大きすぎると思うんです。
最初、夢を持ってサッカー始めた。メダルを取りたいと思って始めたスポーツ。そこに行き着くまでにその希望が消されてしまうのが日本だと思います。その夢を持ち続けられる努力を、親がする、指導者がする、医療関係者もする、もちろん本人もする。みんなでするのが大切なんです。その本質的な部分が見えてないのだと思います。
選手というのは自分の中に迷いが出たときに故障するんです。練習量がどうとかは二の次だと思います。『寝る間も惜しんでサッカーしたいねん』、『ご飯食べるより、サッカーしたいねん』ってどうやったらしてあげられるかだと思います」
それには体と心の関係をよく理解することだと矢田氏は話す。
「体は何で動いているかと考えてみてください。(ロボットでいう)機械の役割の体がありますが、その機械を動かすのはOS。OSは形としては目に見えませんが、ないといけない部分ですよね。じゃあ人間でそのOSは何かというと“心”なんです。どっちが先かというと、心が先で体が動くようになりますよね。ところがどの立場の人を見ても体しか見ていない」
矢田氏の長年の経験において、物事には順番があって、心の充実がなくして体は動かないという。そして今の子どもたちに一番問題が見られるのは、肝心要の心の部分だという。
「私たちは治療もしますが、それ以前になぜケガをしてしまったのかという根本的な部分から選手に伝えています。陸上の指導を20年来やっていますが、速く走りたいからといって、走り込めばいいというものでもありません。自分の体を動かせるようになるには、体のパーツとパーツの動きを繋げてやることが大切です。そこをなしにして速く走りたいというのは難しいですし、かえって故障の原因になります」

ケガがちな子どもの特徴
キネティックフォーラムでは様々な競技のアスリートに、体のパーツをいかに動かすかを選手自身が感じ、そのつながりを生むような指導をしている。そこで重要になるのは選手自身の意識だという。
「実はロンドンの世界陸上に出場する選手で、元々私たちのエクササイズを大学時代にやっていた選手がいます。
ただ、実際に私のところにきた時に彼がいったのは『これまで自分がやってきたのは、上辺の部分だったんですね』。どんな練習もそうですが、本人がこの練習は何のためにやっていて、何につながっていくのかという意識を持つことで、成果が大きく違うということです」
そしてこれは選手の年令や競技の違いはないという。当然ジュニア世代でも同じことはいえる。
「そこを理解して努力をすることで、能力は開花していくものなんです」
先述したプロ野球選手も、中学の時から意識が非常に高かったそうだ。ただ今の日本のスポーツの現状は「そういう気持ちをいかにみんなが育ててあげるかということです。ところがそれを本人が見失うようなことをしているのが、今のジュニアスポーツの世界だと思います」
そしてそこに大きく関わってくるのが親だという。
「よく、お子さんを連れてこられる親御さんがいらっしゃいます。どうしてこういうケガになったのかをお話します。やはり親が子どもを追い込んでしまっているケースがほとんどです」
特に子どもの反応は顕著だという。
「私たちから見て、これは完全にケガが治っているというケースもあります。しかし本人は『痛い』ということがあるんです。この場合は、本人がスポーツや練習から逃げていて、痛いということがあるんです」
これは本人が噓をいっているのではない。ただ過剰な練習、親や指導者からの期待などのプレッシャーの中で自然と自己防衛をしようとしていることの反応なのだという。
「こういう時は本人がエクササイズをやっている間に、保護者の方だけと別の場所でお話をするようにしています。『これこれ、こんな風になっていませんか?』と。最近では私たちの話を理解してもらえる保護者も増えてきています」
沢山のアスリートとその保護者を見てきた矢田氏だが、才能が開花する選手にはひとつのパターンがあるという。
「アスリートとして成功するのは、保護者は応援に徹し、子どもさんがやることを見守るご家庭です」
ここまで読んできて、ハッとした人も多いのではないだろうか?
「心にどこか思うところがあると、それはケガになって現れる」
すべては人の心から始まる。

キネティックフォーラム
一般的には、テーピングやマッサージなどの対症療法が多いなか、体全体を包括的に捉える独自のシステム(BCトータルバランスシステム)が口コミで広がり、様々な縁で集まった治療家、トレーナー、指導者などで1996年に設立した学術団体。 現在大阪を中心に勉強会を開催し、約150名の会員が独自に開発された『BCトータルバランスシステム』を自分のものにする為に活動している。
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