「コミュニケーションをとれ」だけではコミュニケーションが足りない。ミーティングの“質”を高めるための実践法
2017年12月04日
メンタル/教育指導現場でよく目にするチームでミーティングをしている風景。指導者が選手たちを集めても子どもたちからの意見がなかなか出てこない場合があるのが現実のようです。そこで大人が「コミュニケーションをとれ」とただ投げやりになるだけでなく、具体的に子どもたちがコミュニケーションを取れるようになるための方法と実践例を『「個」を生かすチームビルディング チームスポーツの組織力を100倍高める勝利のメソッド』より、一部抜粋して紹介します。
(文●福富信也 イラスト●原田弘和)
『「個」を生かすチームビルディング チームスポーツの組織力を100倍高める勝利のメソッド』より一部抜粋
※この記事は2016年12月16日に掲載した記事を再編集したものです。
日常生活からコミュニケーションの量と質を高めていく
サッカーに限らず、バスケットボール、バレーボール、野球などチームで行う競技では、とても頻繁に「コミュニケーション」という言葉を耳にします。では一体、コミュニケーションとは何でしょうか?
辞書で調べると「情報交換」「意志疎通」「心の通じ合い」といった言葉で記されています。つまりコミュニケーションとは、相手に伝わることが重要なのです。以前、私の授業のレポートで、「コミュニケーションとは、受け手が意味をつくりだすもの」と言うフレーズを書いてくれた学生がいました。まさにその通りだと思います。
「チーム内のコミュニケーションを向上させたい」という相談はよく耳にしますが、そのためには「量」と「質」に分けて考えてみるといいでしょう。コミュニケーション量が増えると、チーム内に活気が出てムードが良くなります。それだけでなく、会話が弾めばお互いをより深く知ることにもつながります。
想像してみて下さい。試合中に監督からとにかくたくさんの情報を与えられたとします。相手チームの特徴、1人1人のクセ、自分たちのチームの今までの攻撃パターンや失点パターン。情報はとても有用ですが、ではいざ試合になった時に何を優先すべきかがわからない。「まずはココ」というポイントが絞れないままに伝えられた情報は、プラスに働くばかりではなく、時にマイナスに転じることもあるのではないでしょうか。
勝利のために、さらにはより良いパフォーマンスを発揮するために、必要なことを、シンプルに、正しい優先順位で、誤解なく伝えることが求められます。それがコミュニケーションの「質」の部分です。
とにかく「コミュニケーションをとれ」と言うスポーツ指導者はとても多いと思いますが、では具体的に何をどうすればいいかのわからない、というのが本音ではないでしょうか。
そこでこの章では、良いチームづくりのために不可欠なコミュニケーションの向上をテーマに「量」と「質」に分けて考えていきましょう。
日常生活からコミュニケーションの量と質を高めていく
指導者が選手たちを集めてミーティングをしても、思うように選手から意見を引き出すことができない、そんな経験はありませんか?そんなとき、指導者としては、「もうちょっと活気あるチームにならないか」と考えてしまいます。まずはチーム内に活気を与えるために、そして安心してお互いが意見を言い合えるために、コミュニケーションの「量」を増やすことに着手しましょう。
ここでひとつ、チームビルディングに活用できるメニューを紹介していきます。「風景描写」という実践例です。全員が1枚の紙とペンを用意したら、お互いに紙をのぞき込んだりしないよう説明します。
指導者は選手たちにこんな指示を与えてください。『今からこちらの指示に従って簡単な風景画を描いてもらいます。まずその紙の好きなところに家を描きましょう。次に太陽を描きましょう。そして木を描きましょう。最後に川を描きましょう。では、お互いの絵を見せ合って下さい。どんな絵になりましたか?』
家、太陽、木、川を同じ指示に従って描きましたが、みんなそれぞれ個性を感じます。多くの人が太陽を右上か左上に描いたのではないでしょうか。家は紙の中央に描いた人が多いかもしれません。しかし、木を描いた場所や本数、川の流れる向きなどは人それぞれだと思います。
つまり、まったく同じ絵を描く人はいないのです。指示は同じでも感じ方は一人ひとり違うということは、言い換えれば、質問を投げかけてもみんな異なる意見や考えを持つのが自然だということなのです。「自分だけ考え方が違ったらいやだな」「否定されるのが怖い」という人が多く、なかなか活発な意見交換ができないものです。
しかし、安心してください。この活動からもわかるとおり、そもそもみんな考え方、意見は違うのです。発言の苦手な選手には、自信を持って発言できるよう背中を押してあげてください。
■解説
ただ単に「絵がうまい、ヘタ」というところに留まらず、要は「どれだけたくさんの受け取り方につながるか」ということを選手たちが体験し、みんな異なった解釈をしているんだ、ということが伝われば導入としては十分です。
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