「変われ!」だけでは子どもは変わらない。指導者が選手たちに示すべき“明確な道”とは

2017年12月06日

コラム
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MEDELLIN, COLOMBIA - SEPTEMBER 16:  Head Coach Miguel Rodrigo of Thailand gives instructions to his players in the dressing room before the FIFA Futsal World Cup Group B match between Egypt and Thailand at Coliseo Ivan de Bedout stadium on September 16, 2016 in Medellin, Colombia.  (Photo by Alex Caparros - FIFA/FIFA via Getty Images)
【2016年のフットサルW杯ではタイ代表を指揮してチームをベスト16まで導いた。(写真●Getty Images)】

最終的な目標は「日本スタイル」を構築すること!

どんな相手も、「日本はピッチでこんな戦いをする」のがわかっている。

 つまり、日本代表の核となるものを構築するのが、私の使命だと考えていました。敵のスカウティングも当たり前のように「日本はこんなチームだ」と報告書を作るようになることが、私の監督としての仕事だと認識していました。スペインでも、ブラジルでもない『日本スタイル』こそが世界で勝つための最善の道なのです。これはサッカーにおいても同じです。そして、ジュニア年代の子どもたちに指導においても同じことです。

 「今年はこれをやる。そのためには、攻撃面はこれを目指し、守備面はこれを高めていく」

 それをお父さんやお母さんにもわかるように、わかりやすく伝えなければなりません。そこからどんどん焦点を絞っていき、「今月はこれをやる」「来月はこれをやる」と細かく取り組むべき目標を決め、具体的に練習メニューに落とし込んでいきます。それを行うことが指導者の責務です。これを作り上げることは非常に重要です。

 私なら紙に書き、子どもたちとお父さんお母さんに渡しますが、日本ではそのようなことは少ないと聞いています。もし子どもが家に帰ってきて、次にどこに行かないといけないのかがわからなかったらどうしますか? スペインのコーチングスクールなどでは「子どもが歩き出す前に、どこに向かうのかをわかっていないと意味がない」と教わります。それにコーチングラインセンスを取得するときにトレーニングにおける計画書を作り、提出するのが義務です。だから、それぞれの指導者が「明確に目標と目的を示し、具体的なトレーニングの方向性や方法論を持って選手たちに教えなければならない」というアドバイスを受けます。

 日本の指導者たちは、よく子どもたちに「変われ!」と伝えています。

 そうであれば、指導者も同じように「変わらなきゃいけない」のではないでしょうか。私は子どもたちと同じ目線で、同じピッチで戦わなければならないと思います。私は指導者講習会やセミナーなどで事あるごとに日本の指導者たちにそれを伝えたつもりです。魔法2の最後の方に書いたとおり、指導者は日本文化における常識という枠を超えて「もう一つの新しい日本を作る」つもりで自らの振る舞いや言葉がけなど子どもたちのために変えることに挑戦してみてはどうでしょうか。

 魔法2でも紹介しましたが、スペインでは指導者講習会の最初から『インテグラル・トレーニングの重要性』を教えられます。少し振り返ると、「インテグラル・トレーニングとは、技術、戦術、視野、考える速度、決断、フィジカルという様々な要素が統合されたトレーニングのこと」です。それを考慮した上で指導者は練習メニューを作成し、選手たちに実戦させることが大切だと学びます。

 実は、このことはサッカーだけに限りません。ハンドボールやバスケットボールなどのあらゆるスポーツでインテグラル・トレーニングが大事だという共通の指導を受けます。具体的には、コーチングスクールなどでは最初の授業で「インテグラル・トレーニングとは何か?」を書かせられます。その上で、自分なりの練習メニューを考えさせられます。

「この練習メニューの中には、この要素とこの要素が入っている」

 このようにすべてを書き出しながら「インテグラル・トレーニング=すべての要素が統合されたトレーニング」として一つひとつの練習メニューがピラミッドの頂点になるように、口酸っぱく指導されます。これが、どこのコーチングスクールに行っても、どのスポーツでも共通して最初に教えられることなのです。

【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法


<プロフィール>
ミゲル・ロドリゴ

1970年生まれ。スペイン・ヴァレンシア出身。イタリアのルパレンセ・パドヴァやロシアのディナモ・モスクワ、スペインのカハ・セゴビアなどで指揮を執った経歴を持つ。2009年6月〜2016年2月までフットサル日本代表監督を務め、その後、フットサルタイ代表監督に就任し、現在はフットサルベトナム代表監督として手腕を振るう。FIFAインストラクター、スペインサッカー協会フットサル指導者資格を保持。

 

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