「褒める」「叱る」だけではない、ミスの修正法。子どもの心に“自信の貯蓄”を

2018年01月17日

コラム

ある心理学の専門家が「子どもの成長に一番必要なのは『認める』ことだ」と言っていた。そして、今世紀最大の発見として「人の決断は感情が大きく左右する」という研究結果が最近発表された。つまり、子どもが自ら伸びるには、指導者のポジティブな言葉と、楽しいと感じる環境を作ることが大切なことだ。しかし、ミスも指摘し、修正しなければならない。ミゲル・ロドリゴは自身の経験を通じて、日本の指導者たちに具体的な考えと方法を口にした。

【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法

企画・取材・文●木之下潤 写真●村井詩都、佐藤博之


ミゲル・ロドリゴ01

ミスの修正もポジティブな構成で自信に変えられる

 ジュニア年代の指導で「成功したら褒める」ことは大切なことです。

 世界中、大人も子どもも関係なく、失敗をすることは嫌だし、怖いものです。しかし、サッカーの上達においては学びが必要であり、失敗は必要なのです。私が来日した頃よりはよくなりましたが、ジュニア年代の指導を見ていると、ミスの修正の仕方が「まだ自分のものにできていない」と感じることが多々あります。きっと子どもたちの立場からすると、失敗だけが強調される形になっていて、「ミスをしてはダメだ」という間違ったとらえ方をしてしまっているのではないでしょうか。日本人の指導者とは違い、私は逆の発想を持っています。

 つまり、「成功したことを褒める」ことでやる気にさせてはどうでしょうか?

 その方が、絶対に子どもたちのモチベーションは上がります。私はオフに心理学や社会学、感情学など様々な本を読みますが、最近の発見にこんなものがありました。

「子どもたちが学べる一番の方法は、常にポジティブな感情を抱くことだ」。

 ジュニア年代の子どもたちにとって最も早く学べる方法は『ポジティブシンキング』だと、ある本に書かれていました。もちろん大人へと成長するにつれて怒られることも必要です。なぜなら怒られたことを受け入れ、その理由を自らで考えて成長の糧にできるからです。しかし、こんな話をすると「成功したら褒めるということは、選手たちが練習でミスをしてもフリーズして修正しないということですか?」と聞かれます。

 当然、止めてミスを修正します。ただ、「成功を褒めること、ミスを修正することのバランスが大切だ」と考えています。具体的に比率を伝えると、私の経験上『7対3』、もしくは『8対2』がいいでしょう。練習の中で行う10回のフリーズのうち、ミスの修正は3回ほどです。大事なことは「何を注意し、どう修正をするのか」ということです。ここが、ジュニア年代の子どもたちの成長にとって鍵を握ります。

 先日、近所のジュニア年代の8人制サッカーを見学していました。おそらく小学3年生ぐらいだと思います。ある子どもがパスを出したのですが、シュートのような『すごく強いパス』になってしいました。そのとき、監督かコーチかが「何だ、そのパスは!」と叫びました。その後、そのミスした子は萎縮してしまいました。

 サッカーでも、フットサルでも、ミスは付きものです。なぜならボールを足で扱うからです。だから、ミスは当たり前に起こるものなのです。練習中、私もミスが起きたらフリーズして止めることはあります。しかし、子どもたちには『ポジティブな言葉』から伝えるようにしています。その後、「ミスをどのように修正していけばいいのか」を問いかけていきます。ようするに、ミスの修正はその構成が大事なのです。

 まず、ミスしたことをダイレクトに指摘するのではなく、遠回しに「こうすれば良かったんだ」と気づかせるような言い回しをします。

「トライしようしたことは悪くない!」

 このタイミングで、どう気づかせるのかといえば、子どもたちに問いかけるのです。
「いまの決断は良かった。悪い判断ではなかったのだが、もっと違う選択肢もあったんじゃない?」

 最初から「お前がやったことはダメだったんだ」と否定すれば、その後に修正点を聞いても頭に、心に響いていきません。そして、こう続けます。

「右も見られたんじゃない?」
「誰がいる?」
「ディフェンスの選手はどっちが多い? どっちが少ない?」
「左が多いならどっちから攻めた方がいい?」

 そう問いかけながら本人に状況を把握・整理させ、その中でベストのプレーに気づかせます。さらに、再度ミスしたときと同じ状況を作り、子どもに判断させてプレーさせるのです。その際、うまくいくこともあるでしょうし、失敗することもあるでしょう。失敗をしたとしても、また止めて同じ説明を繰り返してあげたらいいのです。

 逆に、プレーが成功したら「ほら、うまくいったでしょう」と褒めてあげてください。このとき、フリーズのやり方も工夫しましょう。構成としては2回行うのがいいでしょう。1回目のフリーズはミスを修正するためのもの。2回目のフリーズは成功を褒めるためのものです。

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