僕、息子のチームでコーチを始めました。【子育て奮闘記vol.1 by「中野吉之伴 子どもと育つ」】
2018年12月09日
コラム
いまも、私は大学生コーチだった頃と同じ気持ちで現場に立っている
どれだけの経験を積んでも、どれだけの知識を蓄えても、いま目の前にいる子どもたちとは今回が初めて。ちょっとずつ彼らと触れ合い、少しずつ人間関係を築いていくのだ。ヒントは体験の中にたくさんあるかもしれない。でも、この子たちとの答えはこの子たちの中にしか見つけられない。
先日の練習でこんなことがあった。子どもたちがいつまでもふざけていていたので、「マジメな話をしたいから聞いてくれないか?」と話をしようとしたけど、何人かの子はそんな僕を笑い出した。悪気がないのはわかる。ちょっとふざけてみたいのだ。それでも続けて、ゆっくり話をした。
「コーチも人間だよ。笑われたら悲しい。話を聞いてもらえなかったら悲しい。悲しみながらサッカーをしたくはないよ。君たちは悲しませながらサッカーをすることになってもいいの?コーチだけじゃない。僕らはみんなそうなんだ。相手をリスペクトするというのはそういうことなんだ。みんなで笑顔でサッカーするためには、どんなことに気をつけなきゃいけないんだろう?」
静まり返った。少しの沈黙の後、一人の子が立ち上がり、僕のところに来て「ごめんね、やりすぎちゃった」と言ってくれた。もう一人の子が立ち上がり、「仲直りしよう」と手を差し出してくれた。別の子は「ちゃんとやろうよ」、「話聞こうね」と口にしてくれた。「ああ、気持ちが伝わってくれた」。子どもたちと大切なものを分かち合うことができた。次の練習では、自分から手伝おうとする子が増えた。ふざける子どもはいつでもいる。それは自然なことだし、口やかましく言うつもりはない。でも、やってはいけないこと、超えてはいけない線をしっかり提示してあげなければならない。自由とわがままをはき違えたままではダメなのだ。
よく「育成に答えはない」という言葉をきく。
確かに「万人に効く特効薬」や「誰でもレベルアップできる必殺技」のようなものもはない。でも、その場その場に答えはある。そして、その答えを探さなければならないのだ。前述の話もそうだ。僕は一つの答えとして、子どもたちに話をした。プレーに関してもそうだ。
例えば、「この状況においては慌てずにボールをコントロールして、味方の攻め上がりを待つべきだ」と一つの答えとして提示するべきなのだ。そして、「ただし、これがすべての状況を解決する答えではないよ」と付け加えればいいのだ。そうした答えを子どもたちは自分たちでどんどん集めていく。一つひとつの答えをつなぎ合わせていく。一つひとつに答えがなければ、そこから組上げていくこともできない。
気がつくと似たような答えがあったり、組み合わせられたり、そもそも間違っていたり、あるいは違う解釈ができる答えが出てくるだろう。それが成長につながる。それが経験を積むということではないだろうか。
練習時間が終わると、必ず子どもたちは「最後ちょっとシュートしたい。GKやって」と声をかけてくる。一人が始めるといつも10人以上が「僕も」「私も」と加わってくる。遠くからお父さん、お母さんの「ねー、もう帰ろうよー」という声が聞こえてくる。素敵な時間だな、といつも感じる。「またね」と言って、帰っていく子どもたち。笑顔と笑い声の余韻が残るグラウンドを後にして、次男と二人家路につく。「今日も楽しかったね」と笑い合いながら。
<関連リンク>
・中野吉之伴 子どもと育つ
<プロフィール>
中野 吉之伴(指導者/ジャーナリスト) twitter@kichinosuken
1977年、秋田生まれ。 武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成年代指導のノウハウを学ぶためにドイツへ渡る。現地でSCフライブルクU-15チームでの研修など様々な現場でサッカーを学び、2009年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)。2015年から日本帰国時に全国でサッカー講習会を開催し、よりグラスルーツに寄り添った活動を行う。 2017年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」を配信スタート
▼主な指導歴
「フライブルガーFC(元ブンデスリーガクラブ)U-16監督/U-16・18総監督」/「FCアウゲン(U-19・3部リーグ)U-19ヘッドコーチ/U-15監督」/「SVホッホドルフ/U-8コーチ」
▼著書・監修本
「サッカードイツ流タテの突破力」(池田書店 ※監修/2016年)/「サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン ※著者/2016年)/「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社 ※著者/2017年)
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