いわきFCが取り入れる“東ドイツの知見”。発育に応じて「育成プランを変えていく必要がある」
2019年01月28日
コラム
【13歳の頃の清宮幸太郎選手。当時から身長180cm体重90kg以上と大人顔負けの体格を誇った】
指導者は目先の勝利に踊らされず子どもの将来を予測しなければならない
生物学年齢が暦年齢を上回っている、いわゆる早熟のアスリートの典型的な例として、北海道日本ハムファイターズの清宮幸太郎内野手(早稲田実業卒)を小俣氏は挙げる。
「清宮選手は小学校6年生の段階で、生物学年齢ではすでに大人だったと思われます。大人の選手がリトルリーグのルールの中でプレーしていたわけですから、ホームランを打ちまくるのは当たり前、となるわけです。なので、そういう子どもにはもっと上のカテゴリーでプレーしてもらいましょう、ということです」
東ドイツが積み重ねていた研究よれば、生物学年齢を特定するには、まずは「大人になった時の身長を予測する」と小俣氏は続ける。
「これを『成人身長予測』と呼びます。成人身長予測は、レントゲンによって骨の形成度合いを確認するのが正確ですが、さまざまな問題もあって一般的ではありません。その予測値から今現在の身長がどれくらいの割合のところまで来ているのかを見ることで、どの地点で大人になるのかが見えてきます。さらに身長の『年間発育量』も参考になります。そうして生物学年齢を大まかに特定して、それに基づいて育成プランを変えていく必要がある。そうしないと残念ながら晩熟の子どもが絶対に不利になるし、気がついた時には早熟の子どもたちばかりのチームになっているわけです」
早熟の子どもが多ければ、目先の試合で勝つ確率はおのずと高くなる。しかし、長い目で見れば、勝利を喜んでいる時点で気づかないうちに落とし穴にはまっている、と小俣氏は警鐘を鳴らす。
「欧米人の成熟度合いは、アジア人よりも遅いんですね。日本の3種や4種の子どもたちがヨーロッパ勢といい試合をするのは、生物学年齢が大人の子どもたちが試合をしているからなんです。ヨーロッパの子どもたちは、その後に急激に伸びてきて、結局、抜かれてしまうカラクリがある。なので、まずは生物学年齢をちゃんと特定しましょう、ということなんです」
東ドイツで生み出されたスポーツ科学に基づいた育成システムとその理論は、今ではドイツスポーツオリンピック連盟の指導者を養成する教科書に採用されている。競技に関係なく、すべての指導者が同じ知識や基礎を学び取った上で、それぞれの専門分野の道を歩んでいくシステムはオランダやベルギーヨーロッパ各国にも影響を与えている。
競技を横断する普遍的な理論が、残念ながら日本には存在しない。というよりも、導入されるきっかけがないまま今現在に至っている。だからこそ、異彩を放ついわきFCのチャレンジはサッカーというジャンルにとどまらず、スポーツ界全体にも一石を投じる可能性を秘めている。

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