サッカー指導者は、サッカーを通して子どもたちに何を伝えようとしているのか【サッカー外から学ぶ】
2019年07月18日
育成/環境「(自分は)サッカーを通じて子どもたちに何を伝えようとしているのだろうか…」。子どもたちを指導するにあたり、こんなことを考えたことはないだろうか? 常に自問自答している指導者も、まだ一度も考えたことがない指導者も、花まる学習会代表・高濱正伸氏の言葉に耳を傾けてほしい。子どもたちとサッカーをする価値について。
文●大塚一樹 写真●ジュニサカ編集部
自分の原体験を子どもに押しつけるのは指導ではない
「メシが食える大人に育てる」というコンセプトで話題の花まる学習会代表、高濱正伸さんを迎えた『“サッカーの外”から学ぶ』。前回は、教育的観点から見たサッカーの有用性を語っていただいた。サッカーが子どもたちにとって有益であることは喜ばしいことだが、ただサッカーだけをやれば実生活の成長につながり、「メシが食える大人」になるのかと言えばそうではないだろう。誰に教わるか、何を、どう教わるのかが重要なのは言うまでもない。
価値観が多様化する社会の中でジュニアサッカーのコーチは、何をすべきなのだろう?
「サッカーやスポーツの可能性については、まだまだ語れますよ。それで本が一冊できるくらい。でも、現状を見ていると問題点もありますよね」
高濱さんが指摘したのは、昨今のスポーツ指導の大問題とも言える、暴言、暴力、行き過ぎた指導を生み出すメカニズムについてだ。
「指導者になる人はたとえばサッカーなら、サッカーが好きで自分もプレーしていた人が多いわけですよ。そこで何が起こるかというと、高校選手権だ、インターハイだと、つらい練習に耐え、それでも目標に向かって頑張っていたころの記憶で指導をスタートしてしまっている」
サッカーやスポーツには大きな可能性があり、不確実性が高まるこれからの時代に不可欠な存在であるにもかかわらず、日本のスポーツ界にこうした図式が蔓延している限りそのポテンシャルを発揮することはできない。
「典型的なのは怒鳴りつけて言うことを聞かせる指導ですよね。こうした指導者は、迷いなくそれが心からいいと思ってやっているんです。本当に心の底からそれが正しいと信じ切っています。日本のスポーツ界ではそれが当たり前だし、全体がそう動いているからいいんだ、ってこういうものだみたいな空気があるでしょう。特に小学校低学年以下、9歳まではそれ以降の年代とは“別の生き物”なんですよ。それを前提にどう育てるかを考えなければいけません」
指導者が自分の“歪んだ”成功体験をもとに指導に当たる。そのループが続いていくという現象は、日本のスポーツ指導の現場を少しでも覗いたことがある人なら“知っている”どころか痛感していることだろう。高濱さんは「教えている対象」に目を向ければ、自分の体験が当てはまらないことがわかるはずだという。
「教育では、年齢に応じて効果的なアプローチがあります。特に9歳までは、大人の常識、当たり前で物事を教えてもほとんどが身につきません。100人の子どもがサッカークラブにいたとします。当然、実力差があります。もしかしたらプロになれると思えるような子もいるかもしれませんが、大半はプロには絶対にならない子たちです。それなのに、100人全体に向けて『全国大会を目指せ!』『上を目指せ!』『絶対勝つぞ!』と“オラオラ”やるわけです」
9歳以下と言えば、ジュニアサッカー年代であると同時に、「サッカーの入り口」でもある。「子どもは小さな大人ではない」という言葉もだいぶ知られるようになってきたが、指導者自身が高校生年代以降にやってきたこと、身についたことを前提にするのは大きな誤りだ。
「自分が高校生のとき、大学でやったことの記憶だけを土台に『こうすれば強くなる』『いいことが起きる』と信じてやっているんだけれど、教育という観点が抜け落ちているから、子どもたちに、その年齢に向かないことを平気でやってしまっている。自分が受け持った100人に対して何がしたいのか? スポーツを通じて何ができるのか? 言語化できない人がほとんど。これが現在のスポーツ界で不祥事が起きる理由であり、決定的欠陥ではないかと思っています」
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