子どものエネルギー源となる栄養素とは? 成長期に備えるための食事の摂り方
2019年11月12日
フィジカル/メディカル子どもの体づくりをサポートするうえで「カルシウム」「タンパク質」「鉄」「糖質」は欠かせない存在です。と同時に、成長期こそ食事バランスに配慮することが大切です。11月の食育テーマは「タンパク質で頑丈な体を作る」です。スポーツに打ち込む子どもの成長を無理なく支えるための食生活の心構えについてお届けします。
監修●川上えり/構成●北川和子/写真●ジュニサカ編集部
成長期前から「正しい食習慣」を築く
今週も「タンパク質で頑丈な体を作る」というテーマでお話をしていきます。その前に少し振り返りを……。先週は、食事面から子どもの体づくりをサポートするために「胃腸」「骨格」「筋肉」を意識したアプローチが大切だというお話をしました。そのうえで、食欲が増す傾向にある秋だからこそ「必要な量をしっかりと食べられる胃腸を作る習慣づくり」をしましょう、と。
続いて今回は、体づくりのカギを握る「骨格」と「筋肉」の形成をサポートする栄養素について紹介していきます。
みなさんは「成長期」という言葉を聞いたことがあると思います。小学校高学年から中学校にかけて、子どもの体がグーンと大きくなる時期のことを指します。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年度版)を見てみると、男子は12~14歳頃、女子は約10~12歳頃に身長が大幅に伸びる傾向があるようです。もちろん個人差はありますが、成長期より前から正しい食生活を身につけて、バランスの良い食事をとっておくことはとても大切なことです。
この大切な時期に特に意識したいのは、「カルシウム」「タンパク質」「鉄」の3つの栄養素です。
成長期で身長が伸びるということは、骨格も大きくなるということ。骨には、さまざまな役割がありますが、その一つに「カルシウムの貯蔵」があります。なかでも、11歳~17歳頃は最も多くのカルシウムを貯蔵していく時期にあたります。つまり、この時期の食生活が将来の骨の健康に大きな影響を与えているわけです。
ちなみに、30歳~49歳の男女のカルシウム推奨量が男女ともに650mgであるのに対し、12~14歳には男の子は1,000mg、女の子は800mgの摂取が推奨されています。ということは、お子さんはお父さんやお母さんよりもたくさんのカルシウムを体に取り込む必要があります。でも、カルシウムは意識して摂取しないと、なかなか推奨量に達するのが難しい栄養素です。
そこで、カルシウムを多く含む以下のような食品を積極的に食事に取り入れて欲しいと思います。
【カルシウムが豊富に含まれる食品】
・乳製品
・小魚
・小エビ
・海藻類
・大豆製品
・小松菜…etc.
煮干しを間食に出したり、小松菜やヒジキや豆腐といった食材を副菜として活用したり、牛乳やチーズを取り入れることで、無理せず摂取量を増やすことができると思います。
※参考=厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2015年度版)
筋肉に欠かせない「タンパク質」と「鉄」
そして、体を大きくすることに欠かせない「筋肉」の視点から体づくりを考えていきましょう。
ジュニア年代の体づくりに大事なもう一つの栄養素は「タンパク質」です。タンパク質は、肉や魚、乳製品、豆類に多く含まれています。タンパク質をひと言で表すと「体のもと」。血液、骨、髪、臓器、肌、筋肉を構成する土台となる栄養素です。成長期を控える子どもたちにとっては、体を作っていくためにも重要な役割を果たしています。
とはいえ、「筋肉を増やすために、とにかくタンパク質をたくさん食べればOK」というわけではありません。健全な筋肉を育みながら、運動時のパフォーマンスを引き出していくためには「鉄」の摂取も考慮していく必要があります。鉄は、体中に酸素を届ける血液の中の「ヘモグロビン」を構成する栄養素。鉄が不足すると、筋肉が必要とする酸素が十分に届かなくなってしまいますから、持久力にも影響が出てきます。
サッカーのような持久力と瞬発力の動きがミックスされたスポーツに打ち込む子どもにとって大切な栄養素です。でも、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)のホームページでは、学童期・思春期の栄養課題として「鉄の不足」を挙げられています。サッカーのジュニア選手の貧血の割合は、男子が35%、女子が8.8%という数字は深刻です。
鉄は以下のような食材に多く含まれています。
【鉄を多く含む食品】
・レバー
・赤身の肉
・赤身の魚
・大豆
・貝類
・海藻類…etc.
私が成人アスリートに食事指導をする場合、持久系のスポーツのアスリートであれば、鉄分を多く含む赤身の牛肉や魚を多めに、その反対に瞬発系のスポーツのアスリートには疲労回復を促すビタミンB群が多く含まれる豚肉や鶏肉、白身魚の割合を増やすように指導しています。
サッカーは、持久力と瞬発力の両方を兼ねたスポーツなので、様々なタンパク源からまんべんなく栄養を摂取していくことが大切だと考えています。
ここまで骨格や筋肉を育むために「カルシウム」「タンパク質」「鉄」の重要性について説明してきましたが、これらの栄養素がきちんと体の中に吸収され、上手に働いてもらうためには、ビタミンやミネラルを一緒に摂取することが大事です。
例えば、カルシウムの吸収を促すためには「ビタミンD」や「マグネシウム」が必要です。また、鉄の吸収には「ビタミンC」が必要です。さらに摂取した糖質をエネルギーに変えるためには「ビタミンB群」も必要になってきます。
ビタミン・ミネラルは、旬の野菜や果物を通じて摂取していくのが理想的です。今の時期はビタミンを豊富に含む青菜や根菜が豊富にスーパーに出回っていますから、味や風味を楽しんでみましょう。
最近では、不足した栄養を補うための子ども向けサプリメントも多く出回っていますが、子どもの体に与える影響はまだ全てが解明されていませんし、正しい食生活が身に着かなくなるリスクもあります。成人アスリートの中には、野菜の少ない国への遠征時などに成分を厳選してサプリメントを携行する選手もいますが、ジュニア選手の食生活においては、日々の食事から必要な栄養を摂取するよう心掛けてほしいと思います。
そして、丈夫な体づくりにはタンパク質が必要不可欠です。例えば、鉄分が豊富な「赤身の牛肉」「赤身の魚」や、疲労回復効果の高い「豚肉」「鶏肉」を食べ分けていくことで、筋肉の疲労を癒しながら、強化していくことにつながっていきます。
そこで11月の食育レシピは、疲労回復と筋肉の補修をターゲットにした「鶏胸肉の南蛮風」、持久力と筋力を高める「赤身魚のマスタード焼き」(赤身魚はマグロやブリなど)をご紹介する予定です。
ぜひお楽しみに!
>>11月の食育連載の第三弾は11月19日(火)に配信予定
【プロフィール】
川上えり(かわかみ・えり)
管理栄養士。FCジュニオール(大分県中津市)の栄養アドバイザー。海外で活躍するプロサッカー選手の食事などをサポートし、チームの遠征・合宿にも帯同。アスリート向けのレシピ制作、子育てママ向けのコラム執筆など幅広く活動している。
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