身長が小さくて悩んだ少年時代。FC東京・渡辺剛と石川直宏、共通の苦悩の中で描いたプロへの道筋
2019年11月25日
メンタル/教育中央大学を経てFC東京でプロのキャリアをスタートしたディフェンダーの渡辺剛は、一年目からレギュラーポジションを掴み、U-22日本代表入りを果たすまでになった。その原点は成長期のコンバートにあった。同じ道程を辿った石川直宏FC東京クラブコミュニケーター(CC)との対話で、その道筋を解きほぐしていく。
取材・文●後藤勝 写真●加藤健一

フィジカルもスピードもついていけなかった
――FC東京のスクールには何年生から通っていたんですか。
渡辺剛(以下、渡辺)「小学校3年生のときに入って、4年生からアドバンスクラスのコースに通い始めました。セレクションでオーバーヘッド(シュート)を決めたんですよ」
石川直宏(以下、石川)「マジで! すごいねぇ」
渡辺「セレクション全体を通して、そのワンタッチしかしてないです(笑)。それで『落ちたね』とか言いながら親と帰りに食事をしていたら、受かっちゃいました。スクールのとき、顔面でボールを受けて鼻血を出したことがあるんですが、そういう気合いが入ったところも好印象だったみたいです」
――当時は中盤ですよね。
渡辺「はい、攻撃の選手でした」
石川「小学校のときは小さかったの?」
渡辺「めちゃくちゃ小さかったです。身長順で並ぶと、前から2番目とかでした」
――石川CCと似ているのでは?
石川「そうですね。ぼくの場合、小学生のときは比較的大きかったけれど、中学で背が伸びずに小さかったし。剛はそれもあり、ジュニアユースからユースに上がれなかったの?」
渡辺「上がれなかったです。早い段階で決まっていました」
石川「ぼくがいた横浜F・マリノスの下部組織では中村俊(輔)さんが3つ上の学年で、技術はあったけれど体が小さくて、ジュニアユースからユースに上がれなかったんだよね。ところが桐光(学園)に行ってグッーと背が伸びて活躍して高校サッカー選手権(第75回)も準優勝して代表に入って、という出来事があった。だからマリノスにはそういう歴史もあって、可能性も含めて見ていてくれたとは思う(石川CCはユースに昇格)」
渡辺「フィジカルもそうだしスピードにもついていけなくて、周りより劣っているなというのは、自分でもわかっていました。だから試合に出られなくても納得していました」
コンバートで切り開いたプロへの道筋

――高校のときにコンバートされたというのも共通点ですね。
渡辺「ぼくは高校1年生のときセンターバックになりました」
石川「そのときは背が伸びて自分のプレーができるようになってきた?」
渡辺「そうですね。身長が伸びたからとりあえずヘディングをやろうと思ってそればかりやっていたらだんだんやり方がわかってきて、頭で考えていることがプレーに出るようになって、やっと高校で居場所が見つかったというか、サッカーをやれているという感覚になることができました」
石川「ぼくの場合は逆に身長が伸びて調子も上がってきたんだけど、絶対的な選手(大橋正博)がそこにいて、試合に出られなくて。で、サイドしかないということでサイドでプレーしたんだよね」
渡辺「自分は、身長は伸びてきたんですけど脚が速いわけでもなくて。対人は苦手ではなかったので、センターバックをやってみないかという話になり、自分も興味はあったのでポジションを移しました。高校2年生くらいから出場機会をいただけるようになったので、そこから自信をつけ、プロを狙えるかなと徐々に感じるようになりました」
石川「似てるなぁ。オレも高校2年生からサイドをやり始めて、ライバル(大橋)がトップ下にいたんだけど、そいつが無茶苦茶すごかったの。すごいパスが出てくるのに追いつけなかったら、それを追いつけるようにするというのがひとつと。いずれはトップ下に戻ろうと思っていたから、そのときサイドの選手の気持ちがわかるように――と言い聞かせてサイドに行った。でも結局プロになったのはサイドハーフとしてで(笑)、以後ずっとサイド。剛はセンターバックで勝負して(U-22日本)代表にも入って、(成長の道筋を)思い描けてきた?」
渡辺「高校を出てプロに行けず、大学に行ったときは、プロを目指さないともったいないと思いました。だからプロになろうとは思い描いていましたが、まさか1年目でここまでになるとは思っていませんでした」
石川「高校のときに身長が20cmくらい伸びたって聞いたけど、急な成長で心と身体のギャップはなかったの?」
渡辺「もう、鈍感なので(笑)。身長の大きさに、自分で気づけていないくらいの感じでしたから、特に悩みはありませんでした。高校のときセンターバックのポジションでヘディングができて自信になったことを思えば、適性を見てコンバートしてもらってよかったと思っています」
<プロフィール>
石川直宏(いしかわ・なおひろ)
1981年生まれ、神奈川県横須賀市出身。育成組織から横浜F・マリノスに在籍し、2000年にトップチーム昇格、02年4月にFC東京に加入。03年Jリーグ優秀選手賞、フェアプレイ個人賞受賞、09年にはJリーグベストイレブンを受賞。世代別日本代表としても活躍し、日本代表でも6試合に出場。17年に現役を引退し、翌18年からFC東京クラブコミュニケーターを務めている。
渡辺剛(わたなべ・つよし)
1997年生まれ、埼玉県出身。小学3年生からFC東京サッカースクールに通い、FC東京U-15深川に進む。山梨学院大学附属高校(現山梨学院高校)では、3年時に第93回全国高校サッカー選手権大会に出場し、優秀選手に選ばれる。高校卒業後に中央大学に進み、4年次にJFA・Jリーグ特別指定選手として、FC東京U-23の一員としてJ3リーグ3試合に出場。今季正式に加入したFC東京で出場機会を掴むと、東京五輪を目指すU-22日本代表でもプレーしている。
『素直 石川直宏』
(著・馬場康平)
定価:本体1600円+税
クラブからも、サポーターからも愛された石川直宏のバイオグラフィー。
FC東京のサイドを駆け抜け、得点やアシストを量産した石川直宏のサッカー人生は、常に逆境との戦いだった。
右膝前十字靭帯損傷、腰椎椎間板ヘルニアなど、度重なる大怪我に見舞われ、夢だったワールドカップ出場も叶わなかった。
それでも何度も立ち上がり続けたアタッカーの素顔に迫る。
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