ナーゲルスマンなど若手指導者を輩出した欧州最高峰の“指導者のための学校” その指導者教育の内容とは
2021年05月14日
育成/環境近年のドイツは多くの優秀な若手指導者を輩出している。その指導者教育を支えているのが、ドイツサッカー協会が運営するヘネス・バイスバイラー・アカデミーだ。ここを卒業した指導者であれば、ブンデスリーガ1〜3部のクラブで監督に就任することが可能となる。ユリアン・ナーゲルスマンやドメニコ・テデスコら新進気鋭の指導者を輩出したアカデミーの教育法とはどのようなものなのだろうか。5月17日に発売する『フットボール新世代名将図鑑』から一部抜粋して紹介する。
著●結城康平

(写真●Getty Images)
「最高の個」ではなく「最高のグループ」を選ぶ
ヴォルムートが変革したドイツの指導者教育について、具体的に説明していこう。毎年80人の候補者がドイツ全土から選抜され、3日間に渡って評価されることになる。そこから選ばれるのはトップの24人。厳しい評価基準は、3つのステージに分けられている。1つが、面接と筆記試験だ。設問の多くは論文形式であり、単に暗記した知識をテストすることはない。彼らは実際の試合映像や戦術的状況の説明を与えられ、自分が監督だったら「どのように戦術的な問題を解決するか」を論述する。ここで求められるのは完璧な論理であり、トップクラスの指導者たちが厳しく回答を採点していく。
戦術的な知識と柔軟性についての評価が終わると、次に続くのが2時間の実技試験だ。スカウティングレポートを渡された受験者は、トレーニングセッションをデザインすることが求められる。ここでは相手のスタイルに合わせてトレーニングを構築する柔軟性と、トレーニングの指導力が評価されることになる。そして最後には、座学のテストが待っている。指導教官が注目しているのは、彼らの指導能力だけではない。現代フットボールにおいて重要視される要素として、彼らはどのように周囲とコミュニケーションをしており、チームとして問題を解決しているかを評価されている。
実際に現場では、優秀な指導者であっても1人で働くことはない。コーチングチームの一員として働くには、チームワークこそが重要だ。同時に、心理学者が候補者のメンタル面も評価していく。トップレベルの指導には、精神的な強さも重要だからだ。最終的に 人が選抜されるが、あくまで「24人の個」を選ぶのではない。前述したようにチームワークを重要視する彼らは「最高のグループ」を選抜していく。不合格となった多くの指導者が失望するが、それでも教官は動じない。どのような批判を受けても、彼らは24人の合格者という基準を緩めることはない。自らの能力を信じる多くの指導者に、彼らは「君は素晴らしい指導者だが、君よりも優れた24人の指導者を選抜した。来年、再挑戦を待っている」と冷静に告げていく。24人に選ばれても、そこは単なる始まりだ。
合計800時間以上の講習は、極めて充実している。コースのスタート時期には試合の視察旅行があり、そこではトップレベルで活躍するスカウトの仕事を見学する機会を与えられる。同時に彼らは観戦した試合の分析やレポートを提出し、学んだ内容を発表する。座学はスポーツ的な授業だけでなく、教育学や心理学の講義も含まれている。大学教授レベルの専門家による講義と、実地でのトレーニング。特に実地でのトレーニングでは選手同士の議論が求められ、周囲からの建設的な批判によってトレーニングを改善していく。
若手コーチが実務的な経験を積めるように、ブンデスリーガのクラブと協力した実地のトレーニング研修を導入している。また、コミュニケーション論の講義なども増やしていきたいとアカデミーは考えているようだ。進化を止めずに他国から学び、徹底した指導者教育で鍛えていく。ドイツの若手指導者たちは、最高の環境で知識を蓄えている。ナーゲルスマンを追う者たちは、彼の背後に迫っているのかもしれない。
つづきは『フットボール新世代名将図鑑』からご覧ください。
【商品名】フットボール新世代名将図鑑
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2021/05/17
【書籍紹介】
今、欧州を中心にペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップをトップの座から引きずり下ろそうと、最新鋭の理論を武装した「青年監督」たちが虎視眈々と牙を研いでいる。
フットボールの未来を担うユリアン・ナーゲルスマン(RBライプツィヒ監督)とぺパイン・ラインダース(リヴァプールアシスタントコーチ)を筆頭に、現在のトップ監督を蹴落としていくモダンフットボールの申し子たちを一挙に収録。
思考、ゲームモデル、相関図、将来像などを紐解きながら、近未来のフットボール界を牛耳る監督を占う。
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