「初心者コーチはまず何を学べばいいか」ドイツで指導歴21年の中野吉之伴に訊いた。「少年団でも街クラブでも関係なく…」

2022年05月23日

インタビュー

 日本サッカー協会(JFA)によると、第4種(U-12年代)の選手数は253,140人(2021年度)に上る。その大部分は各地域で活動する少年団や街クラブで、そのほとんどがボランティアコーチによって支えられている。中には、子どもがサッカーを始めたことで、指導経験のない保護者がコーチを始めるということも多い。

「指導者経験のない自分は何を教えればいいんだろう?」「指導について何から学べばいいのだろうか?」。そういった悩みを抱える初心者コーチは少なくない。

「経験がある、ないにかかわらず、指導者としてはみんな1年生スタート」

 そう語るのは、2001年にドイツに渡り、現地で指導者を務めている中野吉之伴氏。ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを取得し、オフシーズンには日本へ一時帰国してドイツで得た知見を還元している。

 今回は中野氏に、初心者コーチはどのように、何から学べばいいのかを訊いた。

取材・文●加藤健一(ジュニサカ編集部) 写真提供●中野吉之伴


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自分が把握できる練習形態をベースにして持っておく

――「突然、少年団のコーチをすることになった」初心者指導者はどのような指導から始めればいいんでしょうか?

「自分の見れる範囲で子どもたちがいる状況を作るというのが一番だと思っています。たとえば、指導者になりたての人が15人、20人を指導できるはずがないし、11対11の試合をコーチングできない」

「まずは、パッと見たときにどれくらいの人数だったら把握できるかを考えることがスタート。今はフニーニョという形を導入していて、3対3でゴール4つのゲーム形式を基本の形として持っています」

「子どもたちだけでできるというのがフニーニョの1つの特徴。もう1つは指導者が外から見たときに、3対3だったら誰がどこに動いて、誰が何をしているかというのが把握しやすいし、何かうまくいかないときにコミュニケーションも取りやすい。自分が把握できる練習形態をベースにして持っておくというのがいいと思います」

「メリットはあると思うんです。経験がないからこその」

――まずは目に届く範囲から始めるんですね。

「たとえば『どこに動いたらいいか』を指導者として勉強して、どこをアドバイスしようというのを考えて、実際にやってみたら反応がある子もいれば、ない子もいる。じゃあ反応してくれない子はどうすればいいんだろうというのをまた勉強する。そうすればステップが踏みやすくなると思う」

――少年団にはサッカーをプレーした経験のないコーチもいると思います。そういった人はまずどうすればいいでしょうか。

「指導者1人でチームを見るのではなく、何人かが現場に立って見ているのが望ましいなと思っています。指導しなくても、子どもたちの話し相手としてお父さん、お母さんが1人でもいいので手伝ってくれる形ができると、かなり変わってくると思う。経験者じゃないお父さんコーチが、(子どもたち)とどっちが先にうまくなるか競争しようみたいなのもできる」

「だからメリットはあると思うんです。経験がないからこその。サッカーだけじゃなく、そういう潤滑油になってくれる方がいると、チームの雰囲気は絶対に良くなると思うし、そういう人がいると自分の我が子だけを応援する親も減るんじゃないかな。サッカーって、子どもたちとコーチ陣と保護者とクラブが同じ方向を向いて戦えるときが雰囲気もいいし、力も発揮すると思う。少年団でも街クラブでも関係なく、そういった環境づくりやコミュニケーションが大事だなと思う」


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【プロフィール】
中野吉之伴(なかの・きちのすけ)

サッカー育成指導者・サッカーライター。2001年にドイツに渡り、ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを取得。サッカーライターとして活躍する傍ら、ドイツでも様々なカテゴリーの監督を歴任。オフシーズンには日本でも子ども向けのクリニックや保護者、指導者向け講演会を行う。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ)がある。

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