「スペースとハーフスペースの違いは?」目に見えない概念を子どもたちにどのように伝えるか
2022年06月03日
育成/環境サッカーはゴール、ボール、スペースを奪い合うスポーツだと岩瀬健氏は考える。ゴールやボールは目に見えるが、スペースは目に見えづらい。では、どのようにしてスペース認識の考え方をジュニア年代の子どもたちに指導すればいいのだろうか。トップチームからスクールまで様々なカテゴリーでサッカー指導を経験してきた岩瀬氏の捉え方を紹介する。
『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』より一部転載
著●岩瀬健 構成●清水英斗
(写真●Getty Images)
――スペースについては、どんな考えでしょうか?
岩瀬 そうですね。流動的な空間と捉えています。最近、スペースに関しては「ハーフスペース」という言葉が出てきたことで、少しややこしくなっている気もしますね。言葉の解釈になりますが、スペースというのは、システムやポジショニングによって広がったり狭まったり、大きくなったり小さくなったり、流動的に変化するもの。攻撃で言えば相手がいない空間だし、守備で言えば味方がいない空間になります。つまり人(選手)がいない空間ですね。一方、ハーフスペースというのはピッチをレーンで分けて場所を示しているので、固定された場所になります。流動的な空間なのか。固定的な場所なのか。まずは自分自身の捉え方を整理することですね。
――スペースは相対的に形を変えるものであって、「ハーフスペース」のように絶対的な場所として図示できてしまうのは、本来のスペースのイメージと違うと。
岩瀬 そうですね。さらに攻撃でのスペースであれば、自分たちの技術の高さと 味方同士の許容範囲によって、プレーできるのかできないのかが変わりますよね。狭いスペースでもプレーできるグループもあれば、そのスペースではプレーできないグループもある。ですから、ピッチ上においても流動的な空間でもあるし、さらに味方同士の許容範囲によっても認識が変わるので、概念として少し難しいのかなと。
――味方同士の許容範囲とは、パスの出し手と受け手の共有ですね。ここがズレると意志が合わなくなると。このスペースの共有は大事なところですね。サッカーの3つの要素、ゴール、ボール、スペースの部分は「変わらないもの」であり、育成では外せない要素ですね。
岩瀬 特にスペースの認識ですね。意図的に タッチのパスを入れたり、タッチのパスを受けたりするためには、お互いのスペースの共有が欠かせないものだし、柔らかいパスを出せるのもスペースの感覚があるからだと思います。
守備においても、スペースを守るために相手を把握するのか、相手を掴むためにスペースを把握するのか。ボールの状況によって変えることができれば、守備のあらゆる駆け引きにつながるので、攻守においてスペースを認識することは、育成年代で必ず取り組んだほうがいい。そして、スペースはピッチ上に必ず存在するものなので、サッカーにおいては最も普遍的なものだと思いますね。
つづきは『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』からご覧ください。
【商品名】『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』
【発行】株式会社カンゼン
2022年6月7日発売
【書籍紹介】
選手の約7割は指導者の理論を欲していない。では、どう伝える?
プロサッカー指導者の岩瀬健はトップチームからスクールまで様々なカテゴリーのサッカー選手を指導してきた。サッカー指導者は、ピッチ外における「指導者の理論(ロジック)」とピッチ内における「選手の感覚(フィーリング)」に隔たりがあることを自覚しなければならない、と彼は言う。つまり、机上では緻密な理論を持つことは当然として、現場ではその理論を柔軟に伝えなければ選手は躍動してくれない――。トップチーム監督デビューとなった大宮アルディージャでの経験も踏まえながら、試合、戦術、分析、練習、育成、選手など、シチュエーションごとの最良の伝え方をサッカーライターの清水英斗とともに考察していく。
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