“バタバタしている・キレがない”動きの原因は?“全速力”と“全力”違いは?足が速くなるためのタイミングの見方

2023年03月09日

フィジカル/メディカル

前回の記事では動作を分析する際に必要な指標について解説した。今回は速く走ったり、体全体が連動した動きをするために必要なチェックポイントについて『身体動作解体新書』より一部抜粋して紹介する。

文●里大輔


タイミングの見方は関節の曲げ伸ばしと始点―終点(着地と最高点)

 タイミングには2つのタイミングがあります。環境に左右される「行動」に伴うタイミング、個人による「動作」に伴うタイミング、この2つです。それぞれを説明していきます。

■「行動」(=スキル)
これは「走ったり」「蹴ったり」などの動き出しに伴うパフォーマンスそのものを発揮する タイミングです。相手や状況、環境との関係性で説明されるタイミングと言い換えられます。たとえば、サッカーでいえば相手の背後に抜けるときのタイミングは周りの環境や状況に左右されるので「行動」のタイミングといえます。

■「動作」(=テクニック)
もう一つは、「動作」そのもののタイミングです。これは身体の部位そのものが動くときのタイミングを指しています。右手・右脚などの部位同士が動くときのタイミングなどを指しています。

 動作は次の3つに細分化されます。

①関節の曲げ伸ばしのタイミング(動作の中でもさらに部位ごとに分解)
②始点—終点(動き始めと動き終わり、着地と最高点)
③左右(両手・両脚)・前後(押す・引く)・上下(上げる・下ろす)・対側(右手と左足)・同側(右手と右足)・回転(まわる・振る)・回旋(ひねる・投げる)

 なお、③はさらに次の5つのパターンに分かれます。

1.両側の動き:両足ジャンプのように両手両脚が同じように曲げ伸ばしされる両側の動き
2.同側の動き:サイドステップのように左右のどちらかを軸に腕と脚が同じように動く
3.同側回転:ゴルフのように左右どちらかの軸を中心に同側回転する動き
4.対側の動き:走る動きになると、右腕と左脚、左腕と右脚といったように対側の動き
5.対側回旋:右腕と左脚が前に出ながら回旋する投げるような動き、またはひねりの動き。対側回旋する動き(厳密に言うと、ゴルフなどのスイング系は対側の回旋の動きから始まり、同側回転へ移行する)

 身体の「部位」を動かすタイミングについてもう少し説明します。たとえば、「1.関節の曲げ伸ばしのタイミング」について。

 左右の脚の曲げ伸ばしを考えたとき、スクワットのように左右同時に曲げ伸ばしたり、腿上げする際には左右対称に左は曲げ、右は伸ばせているか。その動作の行われる始点・終点はどうか。つまり、着地と最高点のタイミングが合っているのか。歩きの動きでいえば、片方の脚を着地したとき、もう一方の足が最高点に到達するタイミングなのか。これらを細分化した上で、

●左右の関係性ではなく、右脚の股関節・膝・足首それぞれの曲げ伸ばしのタイミングはどうなのか
●股関節よりも先に膝が曲がり始めてはいないか、そのせいで大きく脚が後ろへ流れてしまってはいないか

などに着目します。そこに上半身の「動作」のタイミングも加わり、さらに上半身と下半身の全体のタイミングに移行していきます。

 ラインとポジションを正しく整えれば、タイミングは自然と合います。というより、時間をかけてポジションを変化させれば、それぞれのペースでやると必ずできるのです。ただし、それを制限された時間内にやろうとしたり、自分の最高速で動かせる速度でタイミングを取ろうとすると、難しくなってきます。相手のディフェンスを受ける前にタイミングを合わせて回避動作をしたり、100メートル走で最高速を出すために早いタイミングで動かすなど、より短く、早く合わせようとすると難易度が上がります。そこで合わせられる選手は優秀であり、タイミングが合うまでに1秒かかる人、片方のポジションが待つ形になってしまう人、ゆっくりでなければ合わせられない人は、いわゆる運動能力が低い人と受け取られてしまうと思います。

 とはいえ、自分が合わせられるタイミングを超えて速く動こうとすると、タイミングが合わず、逆にパフォーマンスが下がります。これは部位を速く動かしているだけになってしまい、動作として成立しない場合があります。腕振りをタイミングを超えて動かすと、腕振りではなく、指先だけを速く動かしているだけになるので、タイミングが取れる範囲で速い・強い動きを行うことがポイントです。そして、そのタイミングをよい速い動きで合わせられるようにトレーニングするために、「タイミング」をまずは知ることから始めていきましょう。

 たとえば、腕を身体の前に伸ばし、肘を伸ばしたまま左右に連続で振ってみたとき、全力と全速の区別がつきますか? 腕全体に力を入れて振ると力が入っているのを感じれらますが、速くは振れません。また、速く振ろうとすると先程よりも力は入っていません。さらに大きく速く振ろうとすると、左に振り切るのではなく、左の終点の前に右に動かす準備を行いながらこう感じるはずです。「しなりやキレを感じた」と。

 終点に向けて振り切ったのか、始点から一気に動かしたのか、または、終点と始点のつなぎ目を滑らかにしたのか。動作やタイミングを説明することができます。

 この動作のタイミングを発揮し続けられる範囲内で動かすことがパフォーマンスです。このタイミングを超えて動くと、いわゆる「力み」や「バタバタしている」または「まったりしている」「キレがない」などの印象をもつと思います。10キロのバットを振って当たったら、かなりボールが飛ぶかもしれません。でも、自分のキャパシティを超えていたら、バットを速く振れないわけです。1キロのバットのほうが速く振れるので、プラスマイナスでいえば、10キロのバットはマイナスのほうが大きいのです。同じようなことが人間の身体にも起きています。


全文は『身体動作解体新書』からご覧ください。


【商品名】身体動作解体新書
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2023/03/07

【書籍紹介】
暗黙知をすべて言語化するとありとあらゆる動きを設計できる!!

どうすれば速く走れるのか、どうすれば高く跳べるのか、どうすれば強く蹴れるのか――。「本質」を知ると、「現象」が見えるようになり、「評価」できるようになり、「できる」ようになる。ラグビーをはじめさまざまな競技のチーム・選手のパフォーマンスを飛躍的に向上させたパフォーマンスアーキテクト・里大輔による本質的「身体動作のガイドライン」。

【関連記事】
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