動き方までは教えない。オシムさんが考える「自由」とは?「重なってしまうのは仕方がない。だけど…」
2025年06月13日
育成/環境前回の記事では、幼少期に身につけておきたいサッカーにおけるベースとなる考え方について議論しました。今回は『認知→判断→実行の回路を繋げるジュニアサッカートレーニング』の第1章「認知」に対する日本と世界の差より、サッカーにおける「自由」について一部抜粋して紹介する。
著●池上正
オシムさんは「自由に動ける」ことを大事にしつつ、周りを見ながら瞬時に変えることも求めていた
元日本代表監督の故・イビチャ・オシムさんがジェフユナイテッド千葉(以下、ジェフ千葉)の監督として初来日したとき、私はジェフ千葉の「サッカーおとどけ隊」として地域を巡回する指導者として活動していたので、同じ時期にトップチームで指揮するオシムさんのトレーニングを見ることができました。
当時、オシムさんが率いたジェフ千葉の選手たちは、だんだんとオシム流の動きに変貌していったのですが、その根底にあった考え方としてもっとも大事なことは「自由に動ける」ということでした。
選手たちは、オシムさんからたくさん動くことを高いレベルで求められていましたが、それぞれの動き方まで教えてもらっていたわけではありません。
例えば、クロストレーニングの際にオフェンスの選手たちが「ここがポイントだ」と思って飛び込んだ場所が被ってしまったとします。このときにオシムさんはこんなニュアンスのことを言っていました。
「ポイントだと思った場所が重なってしまうのは仕方がない。二人ともそこがチャンスだと思ったからだ。だけど、重なったと思った瞬間に(判断を)変えろ」
それがオシムさんの考える〝自由〞でした。私たちが一般的に考える自由とはちょっと違うし、慣れない感覚かもしれません。
オシムさんが監督を始めた頃のはじめのほうのトレーニングに「7対1のボール回し」がありました。ボールを持つ7人は自由に動いてよいのですが、ルールの設定として「パスはすべてダイレクトで繋がないといけない」というものがありました。そのために、選手たちは動き回らないといけないようになっていたのです。
やはり、初めの頃は、選手たちは自由に動くのだけどお互いがぶつかってしまうことが頻繁にありました。ただ、何回も繰り返していくうちに、たとえ走り出すコースが重なったとしても、瞬時にコースを変えてぶつかることはなくなっていったのです。
それは目の前の状況に対して、瞬間的に判断し、身体に指令を出して動きを変える、という一連の流れがスムーズに繋がっているということです。まさに、身体を動かしながら無意識に頭を回すためのトレーニングそのものと言えます。何度も繰り返すことで瞬間的な判断がどんどん速くなり、やがて無意識レベルに到達していきます。
オシムさんといえば、メディアに大々的に取り上げられたこともありますが、色違いのビブスを複数用意してトレーニングする光景が話題になりました。
このトレーニングでは「ボールを動かすときに同じ色のビブスを着た選手にパスを出してはいけない」というルールが設定されていたのですが、初めのうちはうまくいきませんでした。
「日本人は色がわからないのか?」
オシムさんも笑っていましたが、そのトレーニングも繰り返してやっていくうちに、選手たちの状況を把握する能力が上がっていき、早く認識できるようになり、色の識別を間違えずに判断してプレーできるようになっていきました。
これは、まさしくヴィセラルトレーニングの考え方そのものだと思います。脳の指令と身体の動きのギャップがどんどん縮まっていく、と表現すればよいでしょうか。
全文は『認知→判断→実行の回路を繋げるジュニアサッカートレーニング』からご覧ください。
【商品名】『認知→判断→実行の回路を繋げるジュニアサッカートレーニング』
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2025/6/5
【書籍紹介】
頭の中を鍛え、「判断」から「実行」に移す
最先端メソッドを現場レベルへ
のべ50万人の子どもを指導してきたジュニア年代のエキスパートがわかりやすく「言語化」
オシム監督にも師事した池上正氏が『ヴィセラルトレーニング』といった最先端とされるトレーニングのアプローチ手法について、誰でもわかる平易な表現を用いて言語化すること、そして実際のトレーニングに落とし込んで表現することで、ジュニア年代も含めたあらゆる指導者たちの理解を深めることを目的とする。
池上氏は「現代の子どもたちは”頭が動くトレーニング”によって、よりサッカーがうまくなる」と語っている。「頭が動く」とは、子どもたちが「判断」をする前に「無意識レベル」で「認知」できるようになることを意味する。
本書を手に取った指導者や子どもたちの「無意識レベル」に働きかけ、「認知→判断→実行」の回路をスムーズに繋げる、そのサポートとなる一冊。
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