スポーツ現場の体罰や暴力問題はなぜ起こる? いま求められるサッカーコーチングとは
2013年09月23日
コラムボトムアップの指導法とは
ボトムアップの指導というものは、具体的には選手登録、スタメン、システム、練習メニュー、選手交代などの決定を、監督ではなく選手が話し合って決めたり、各学年にキャプテンを決めて自分の学年を構築し、さらにリーダーのリーダーを育成することに重きを置きました。
つまり、すべて「選手が主役」といえる環境を作りました。
指示、命令型ではなく、子どもたち自身に考えさせ、話し合いをさせることで、自立心を育むのです。

上から下への流れではなく、下から上へ組織を吸い上げて構築していくという考え方です。会社や組織では、ビジネス用語としてよく耳にはしていましたが、スポーツチーム構築への発想はありませんでした。会社でたとえると、1000人の会社であれば、一人の社長からの指示命令が1000人の社員に対して下り、業務を推進していく形です。
これは俗にいう「トップダウン」です。大半の日本の会社はトップダウンだと思われます。一方、「ボトムアップ」理論を用いた指導は、1000人の社員から意見や提案が次々と出されていき、トップの社長はこれらの意見を吸い上げ、認めたうえでコンセンサスを取り経営を進めていきます。
実際のところ、「ボトムアップ」で実績をあげた企業には、アメリカのアップル社があります。社員を尊重し、現場からの提案を吸い上げて、iPadやiPhoneなど、今や生活や文化までも大きく変えてしまうほど影響を与えている商品やサービスを生み出していることはよく知られています。近年、日本にもボトムアップで実績を上げている企業が少しずつ出てきているようです。
サッカーの指導現場でも、まだ「トップダウン」の指導が多いのは事実。監督やコーチが練習メニューを用意し、それにならって子どもたちは、練習に励みます。試合の場面でも同様に、監督やコーチが出場するメンバーを決め、システム(フォーメーション)や作戦を指示して、子どもたちはそれに基づいてプレーします。これも「トップダウン」です。
すると、どうなるでしょうか。
実際にこういったシーンを見たことがありませんか。
「おい、何やってんだ!!」
「今のプレーは違うだろ!!」
と、檄を飛ばす指導者たち。
実際の試合で、自分(指導者)たちが練習で教えてきたことと違うプレーを子どもたちがすると、上からものをいうように指導者たちが子どもたちを怒鳴る光景。これは、「トップダウン」指導の弊害ともいえます。
指導者たちが教えすぎているから、こういったことが起こるのです。もちろん練習で見本のプレーを見せたりするのは、かまわないと思います。私も実際に、小さいころフェイントの練習を習いました。コーチがまず、基本的なフェイントを私たちの目の前で見本をやって見せてくれるのです。しかしその後は、子どもたちの時間になります。自分で考案したフェイントを披露したり、仲間とフェイントで競い合ったり、どんどんチャレンジさせる環境が、そこには存在しました。
やはり、何に対しても、コーチが子どもたちに教えすぎず、考えさせたり、創造させたりする時間を与えてほしいと思います。そうでないと、自己判断能力が欠如していくでしょう。
<プロフィール>
畑 喜美夫(はた・きみお)
1965年11月27日生まれ。広島県出身。広島県立安芸南高校教諭。小学生時代から地元・広島の広島大河フットボールクラブでサッカーをはじめ、東海大一高校(現・東海大翔洋高校)、順天堂大学でプレー。全日本ユース代表を経験、大学では総理大臣杯、全日本インカレ、関東選手権の3冠をとった。大学卒業後は、広島に戻って教鞭をとる一方で、広島大河フットボールクラブの小・中学生をサッカー指導。1996年に県立広島観音高等学校へ赴任し、同校サッカー部監督として指導。選手の自主性を促すコーチング術を取り入れ、2006年に広島観音高校サッカー部を全国優勝に導く。日本サッカー協会A級ライセンス、元U-16日本代表コーチ。
子どもが自ら考えて行動する力を引き出す
魔法のサッカーコーチング
ボトムアップ理論で自立心を養う
“教えない”指導が子どもを変える!! 自主性を促す組織づくりで絶対につぶれない「人間力」を磨く『個』と『組織力』をともに底上げする新理論。近年、高校生年代だけではなく、中学生や小学生年代にも広がりを見せているボトムアップ理論を生かしたサッカーの育成。子どもの自立や人間力を育む教育を具体的に解説、そして提言していく。
【著者】畑喜美夫(安芸南高校サッカー部監督)
【発行】株式会社カンゼン
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