サッカー選手に必要な能力「巧緻性」を磨こう【後編】

2013年12月27日

コラム

「プレースピード」と巧緻性は密接な関係

【その3】
 4対4のミニゲームは巧緻性を養うのに適しています。狭いコートを正方形にしたり長方形にしたりと変化をつけて。
 走るスピードよりも、判断スピードをつけるためには「少人数」で「狭いスペース」でのプレーに時間をかけてください。

 私はオランダでコーチングを学びましたが、多くのクラブが異年齢で指導していました。7~9歳までがU9。10~12歳がU12というように、日本でいえば3学年が一緒です。しかも、主なメニューは4対4のミニゲーム。日本のフットサルコートを半分ほどにしたスペースで行います。狭いスペースでプレーするということは、瞬時の判断力を養える上に、巧妙なボールや体の扱いを覚えます。

 思えば、ヨーロッパでいう「スピード」は肉体(足)の速さではありません。判断スピードを指します。ベルカンプも、リトマネンも、足は全く速くはありません。でも、ピッチの中ですばやくプレーしていました。指導する皆さんも、選手が攻撃をしている際に「もっとスピードあげて!」「もっとスピーディーに!」と声をかけますね。これは速く走れと言っているのではなく、判断を早くという意味ではありませんか?

 この「プレースピード」は、フィジカルではなく判断スピードであり、すなわち巧緻性から生まれるものなのです。この「プレースピード」は、俊足であるよりもサッカー選手にとって重要な要素です。そして、それは教えてできるものではありません。選手が自分で考えて生み出すもの。身につけるものです。キックやフェイントを教えることも大事ですが、同じように重要視しなくてはいけない能力です。
 考えてみてください。複雑なフェイントや何千回ものリフティングをゲームで使いますか? もちろん、リフティングの練習は悪いことではありません。ただし、時間を使いすぎているような気がします。

 もっと自由に遊びの感覚を持ってサッカーをやらせてあげてください。「習う」という感覚から学べるものは少ない。私はそう考えます。保護者の方も「コーチの言うことをよく聞いて」などと言わずに、「はい、楽しんでおいで」と送り出してください。少年サッカーは習い事でも、おけいこでもありません。ルールのある“遊び”だととらえてほしいのです。

●まとめ
巧緻性を磨く方法 その1
「○○をしながら、△△をする」
複数のことを同時進行させるような遊びの要素がある練習を

巧緻性を磨く方法 その2
複数の学年が一緒の縦割りトレーニングで、「ゆるい負荷をかける」練習環境の整備を

巧緻性を磨く方法 その3
4対4のミニゲームなど、「少人数」「狭いスペース」でのトレーニングに時間をかけよう


プロフィール
吉村雅文

順天堂大学大学院スポーツ
健康科学部スポーツ科学科准教授
順天堂大学サッカー部監督

1960年、大阪府生まれ。高校まで名門・枚方FCに在籍。順天堂大で活躍後、同大大学院へ進み、サッカー部のコーチも務めた。同志社大、東京電機大を経て現職。2009年に、NPO法人サッカークラブ「Leven(レーヴェン)」を設立。代表に就任。ジュニアのクラブほかシニア体操教室なども開催、コミュニティーの活性化など地域貢献を目指している。明治大時代の長友佑都(インテル)の才能を最初に見出し、大学選抜に抜てきしたことでも有名。全日本大学サッカー連盟技術委員長。

 


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