指揮官不在で優勝果たした星稜に学ぶ 「自分で考える」ことの重要性
2015年01月15日
コラムギリギリの状況のときこそ選手に考えさせる
現在の星稜にとって、本田圭佑は1つの指標。彼を上回る人材を輩出するために河崎監督はあの手この手を考え、知恵を絞っている。
本田以降、星稜には県外出身者が急増。その大半が本田のようにJリーグのジュニアユースからユースに上がれず、高校サッカーに希望を求めてくる選手たちだ。「埋もれがちな素材を鍛え直して再生させる」という役割を河崎監督らは今、託されている。
「サッカー選手には自分で能力を引き出せる子と、人に引き出してもらう子の2種類がいます。もともとテクニックがあるJクラブ出身者は前者が多い。でもメンタルとかフィジカルとか何か1つ足りなくて、上のカテゴリーに進めなかったんじゃないかと思うんです。
石川の子は大人しくて、人に引き出してもらわないと力を出し切れない選手がたくさんいます。でもひたむきさやまじめさはすごくある。粘り強く練習にものぞめる。両者がお互いに刺激し合えれば、いい化学反応が起きるのかなと思っています」と指揮官は見る。
-中略-
河崎監督とともにチームを牽引する河合コーチ(現星稜中サッカー部・顧問)は「河崎采配」について、こんな見解を示している。
「河崎先生がチームを固定することはかなり少ないです。レギュラーで出た子が次の試合でベンチ外になるのは日常茶飯事だし、這い上がってこれるか見ている部分もあると思います。逆にいいプレーをしたときには『お前のいいところが出ていたぞ』と声をかけることもある。常に選手たちに何かしらの刺激を与えようとしているのは確かですね」
試合中にオーバーコーチングをしないとというのも、指揮官の大きな特徴だ。試合によってはテクニカルエリアで口うるさく指示することもまれにあるようだが、本当に追い込まれた状況ではじっと黙って戦況を見守る。
ギリギリのときこそメンタルを鍛える絶好の機会だからだ。プリンスリーグのラスト・新潟ユースとの壮絶な一戦を勝ちきるたくましさや忍耐力を選手たちが手に入れたのも、河崎監督の辛抱強い意識づけの成果ではないか。
そしてピッチ外においても強いメンタリティを養うことに注力している。頻繁にミーティングを開くことは重要なアプローチの1つである。
選手同士で考えさせることが、苦境を打開する力につながると考えるからだ。本田の頃は子どもたちが自分で話し合いをしていたが、今の子は意見をぶつけ合うことを嫌う傾向が強い。
それを改善するために、河崎監督は練習後にたびたび場を設けて、「お前らで考えろ」とよく言っているという。
こうした試みの一つひとつが、30年近く夢に見続けてきた“全国の頂点”へとつながるに違いない。
指導者人生の円熟期を迎えた河崎監督の本当の勝負は、ここからだ。
プロフィール
元川悦子
(もとかわ・えつこ)
1967年、長野県生まれ。業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーランスのサッカージャーナリストとして活躍中。現場での精緻な取材に定評があり、Jリーグからユース年代、日本代表、海外サッカーまで幅広く取材。著書に『古沼貞雄・情熱』(学習研究社)、『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(NHK出版)、『高校サッカー監督術 育てる・動かす・勝利する 』(小社刊)などがある。
【著者】元川 悦子
【発行】株式会社カンゼン
四六判/272ページ
2011年12月20日発売
本田圭佑、岡崎慎司、細貝萌、松田直樹、小笠原満男、巻誠一郎etc…
日本代表で活躍している選手の多くは“高校サッカー出身者”である。彼らを育てた監督たちは、いかなる指導を行い、失敗や成功を繰り返しながら選手のメンタリティを育て、強いチームを作ってきたのか――。
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