Jクラブから見る8人制サッカー。ジュニア年代では「個の部分にフォーカスすることを絶対に忘れてはならない」/ヴァンフォーレ甲府 西川陽介氏 編【短期連載】
2017年03月30日
コラム一人ひとりのボールタッチ数が増え、ピッチが狭い分全員が攻守に関わりやすくなる。8人制サッカーがスタートして5年がたった。“少人数制”サッカーの採用は4種の育成の現場に何をもたらしたのか。
2017年3月6日に発売となった『ジュニアサッカーを応援しよう! Vol.44春号』の第2特集では、複数のサッカー関係者に取材協力を頂き、8人制サッカーを見つめる企画を行った。ページの都合上、誌面ではインタビューの一部しか掲載できなかったが、それぞれに内容が濃く8人制サッカーを通してジュニアサッカーを見つめ直すいい機会になると考えたため、本誌とWebの連動企画として4人のサッカー関係者のインタビューを全文公開する。
四人目は今回の取材対象者で唯一のJクラブとなるヴァンフォーレ甲府でアカデミーダイレクターを務める西川陽介氏だ。プロ選手を育てるという目的を持つJ育成組織では、8人制サッカーをどう捉えて育成に生かしているのか、ぜひご一読いただきたい。
(取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之)
Jクラブが思う8人制サッカーのメリット・デメリット
――Jクラブのアカデミーはトップに選手を送り込むという点で、街クラブとは異なる位置付けで「8人制サッカー」を捉えているかと。今回の取材では唯一のJクラブとなるので、まずはメリットからうかがえたらと思います。
「メリットはJFAも発信している通り、ボールに触れる回数を多く作れることです。さらに人数が11人制より少ないため、見るものが少なくなることも挙げられるでしょう。味方、相手、スペースと情報収集するものが減るので低学年から見ること(状況把握)を習慣化するには都合がいいし、指導者にとってもトレーニングのオーガナイズが簡単になります。
うちのクラブはユースもジュニアユースもジュニアも“ボールポゼッションを大切にする”方針を打ち出しています。この学年ではこれを学び、システムはこれで、この学年ではどういうことを目指すというものが明確にあります。だから育成という視点で見れば8人制でサッカーをよりシンプルに捉え、徐々にステップを踏んでジュニアユースに上げるという考えのもと8人制サッカーを活用しています。ジュニア年代で、いきなり11人制にトライすると難しいことが多々ありますから」
――なるほど。では、反対にデメリットは?
「人が少ない中、スペースがあることです。だから、ただ試合に勝つことにこだわれば“勝つためのサッカーが実践”でき、個の育成を忘れがちになってしまいます。その中で、突出したドリブラーや狭い局面での選手のアイディアが消されてしまうこともデメリットではないでしょうか。正直、うちはクラブのポリシーを貫いて負けた試合がいくつもあります。私はオランダに2年間留学をしていた経験があり、ポゼッションの真髄をいろいろと勉強しました。相手をどう動かし、どういうポジションを取って、どこにパスを送るのか……。当時、オランダやスペインには優秀な指導者がたくさんいて、ビルドアップ、ポゼッションなど様々な先進的なサッカーの考えに触れました。
昨年のダノンネーションズカップでは日本代表として世界大会に出場しました。初戦がオランダだったのですが、コーチ陣は最初から『FWに放り込め!』と声を出している。『あれ? オレが2年間費やした時間は何だったの?』って(笑)。
でも、勝負の世界になると目的は勝利であり、そのためにゴールを積極的に狙うことは当たり前なんです。そこで世界と日本では何が違うのか? それはプレーの質だと感じました。彼らはシンプルに放り込むにもちゃんと意図を持っています。FWのどこを狙うか、その後どうするか。
本音を言えば、ジュニア年代はフィジカルベースが強ければ大きなメリットとなると言えるのではないでしょうか。全日本少年サッカー大会も開催が夏と冬ではまったく事情が異なります。ゴールが小さくGKやFWに身体能力に長けた子がいれば、戦い方次第で試合を優位に運ぶことができるというのが現実的にあるのではないかと感じています。
その中で8人制をやる意義を考えているチームとやれば試合内容は拮抗するし、私たちもやっていて楽しい。でも、世界大会は勝たなければいけない場だからそういうことを学ぶにはいい機会になりました。ただ、すべてが育成につながっているのかと聞かれたら疑問を感じるところです」
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