サッカーの指導中に『怒鳴る』必要はあるのか?

2017年06月20日

コラム

日本のスポーツ指導の現場からなくなることがない体罰などの問題。こういった行為は時折、指導の一環として捉えられることがある。しかし、それらは立派な暴力行為であり、未来ある子どもたちを指導する現場ではまったくもって不必要なものである。しかし、昨今ではそういった“厳しい指導”を肯定する意見すら聞こえてくる。実際に体罰などを受けて育ってきた世代が大人になり、「あの厳しい経験があったから」と過去を美化することでそのような現象が起こっていると推測されるが、この流れはいつか絶たなくてはならない。今回は体罰とは話が変わるが「サッカーの指導中に『怒鳴る』必要があるのか?」という記事をおよそ5年前に発売したジュニサカから紹介する。

文●永田淳 写真●ジュニサカ編集部

ジュニアサッカーを応援しよう!VOL.26』より転載


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怒鳴る指導には楽しむ=スポーツではないというマインドがあるのではないか

 宮川淑人さんが代表を務める枚方FC(大阪府枚方市)は、昭和44年に創部された歴史ある町クラブ。幼稚園児からシニアに至るまで全年齢層からなるクラブを運営しています。

 宮川さんご自身もこのクラブの1期生で、当時の監督はチームの創設者であり、少年サッカー指導のパイオニアと呼ばれた近江達先生。近江先生の理念は、枚方FCのホームページに『指導育成方針』として明文化されています。

 「創造性教育で個性豊かに!」「軍隊的チームプレーではなく、オーケストラ的チームプレーを!」……近江先生に教えを受けた宮川さんもその指導方針を大切に、多くの子どもたちにサッカーの楽しさを伝えています。そんな宮川さんに、現場で度々目撃する『怒鳴る』指導についてお話を伺いました。

――宮川さんは毎週、さまざまなカテゴリーの試合を見ていらっしゃいますが、「怒鳴る指導者」の姿は多く見かけますか?

 昔よりは減っていますが、まだまだおられますね。怒鳴る指導者にはいくつかの段階、タイプがあります。一番最悪なのは、“ストレス発散型指導者”。うだつのあがらないサラリーマンが、絶対に自分の言うことを聞く子どもを相手に、自分の威厳を示して自己満足に陥っている状態です。

 次は、“怒鳴らないと自分の言いたいことを言えない指導者”。優しく接していては、統率できないと考えている方に多いです。こういったタイプの指導者にとって、スポーツとは、子どもを楽しませたいとか、うまくさせたいという考え方と全く異なるものなのでしょう。楽しむ=スポーツではないというマインドが、根底にあります。

 また、ご自身の過去を引きずっている方が怒鳴っているケースもあるように感じています。

――勝たせてあげたいという思いが強すぎて、つい怒鳴ってしまう方も見受けられますね。

「大会で勝つほど、いい指導者」といった錯覚に陥っているのではないでしょうか。たまたま結果がついてきたために、さらに指導がエスカレートしていく。子どもは小学生であれ高校生であれ、怒鳴られて言い返せる立場にはないわけで、指導者の言う通りにしなければ試合に出られない状況になります。

 そこで子どもは、仕方なく怒鳴られつづけて、命令に従いつづける。言うことを聞いて試合に出られたとして、それでサッカーが楽しいと感じるでしょうか。それに指導者に気に入られなければ試合に出られないから、自分で遊び心を持ってプレーしようとか、チャレンジしようという姿勢がなくなります。

――怒鳴る指導者はどういった世代の指導者に多いのでしょうか?

 若い指導者にも怒鳴る人間はいますが、どちらかというともう少し上の世代のお父さんコーチに多く見受けられます。あくまでも私の印象です。

 しかしそういう方々は、根はいい人ばかり。休日を割いて子どものために教えてあげたいとボランティアでコーチをやっている方々だったりしますから、逆にたちが悪いですね(苦笑)。

――怒鳴る指導を行ってしまうのは、やはり自分に自信がないからなのでしょうか?
 
 そうでしょうね。自分の論理で子どもたちを納得させて、指導できる力がないから、恐怖心を伴って強制的にやらせるという発想になってしまう。
 
 もしも育成年代の指導者の指導内容について評価を論じることがあるならば、最も重要な視点は、そういう(怒鳴られた)指導を経験してきた選手たちが将来的にどのような選手、人間に成長していったかという点ですね。これが基準になります。

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