「速く考える」を身につけるには? ミゲルがトレーニングに取り入れる“6つの要素”
2017年12月20日
コラム
フットサルは攻守の関わり方を学ぶのに役立つ!
私の指導理論では、次の6つの要素は必ず考慮するようにしています。
1.テクニック
2.戦術
3.状況を把握する能力
4.集中力
5.決断する能力
6.フィジカル +α
週3回の練習があればアップからメインまで全トレーニングに、この6つ要素がすべて詰まっていなければなりません。テクニックだけではダメです。他の要素も必ず組み込まなければなりません。もちろんスペインでも「テクニックだけに集中するトレーニングが全くないか」といえばそうではありませんが、メインメニューになることは絶対にありません。しかも、やったとしても多くの時間を割かないでしょう。
世界を見回しても、9〜10歳の間はフットサルを取り入れています。だから、将来的にサッカーとフットサルのどちらの道を選ぶにしても、フットサルを経験していればアドバンテージがたくさんあります。特に、中盤より前の選手たちにとってはメリットが大きいと断言できます。
FCバルセロナは「育成年代でフットサルを活用している」クラブの1つです。MFイニエスタをはじめ、他にも数多くの選手たちがフットサルを通じてサッカーに必要なプレーを学んでいます。例えば、切り替えが素早くできます。FWのポジションでは、フットサルをやっていた選手がたくさん活躍しています。
「マークを外す」
「フェイントをする」
「キープをする」… etc.
彼らは、サッカーよりも細かいプレーを多彩に身につけています。そういうアドバンテージを多く持っているので、リーガでも数々のスター選手たちがプレーで立証してくれています。ディフェンスの選手においても、ビルドアップなど攻撃面において大いに役立っています。
実は、8歳の息子がいます。(※ 取材は2015年に実施)
彼が私に「サッカーの上達にフットサルが役立っている」いい実例を見せてくれています。毎週火曜は『フウガドールすみだ』に、毎週土曜と日曜はあるクラブの練習に参加しています。ちなみに、ポジションはFWです。
息子のプレーを見ていると、「8人制サッカーでは守備をさぼる」傾向にありました。きっと「僕の仕事は攻撃だ」と思い込んでいたのでしょう。フットサルでも、ほとんど守備に戻りませんでした。監督や味方に「戻れ!」と言われていましたが、なかなか行動に移しませんでした。
あくまで一つの傾向ですが、8人制サッカーに関わるクラブだけに通う選手、なかでも攻撃の選手はゴールに向かうことだけを考えてしまうようです。だから、なかなか守備を積極的に学ぼうとしません。
「どうやったら敵の攻撃を遅らせられるか」
「守ることにおいて重要な体の向き」… etc.
そうした守備に必要なスキルを、8人制サッカーだと守備をさぼっても何とかなってしまうため、攻撃の選手は責任を感じません。だから、少し学ぶ意欲に欠けています。
それは、守備の選手にも同じことが言えます。具体的には「攻撃をやらなくていい」と勘違いをしています。「僕は守る人だ」と。たとえ、他の選手がオーバーラップしていても自分は守備専門だからと、守から攻への積極性をプレーで表現しようとはしません。
大人のサッカーであれば自らの役割を理解しているから、それでも構いません。しかし、12歳までの子どもだと、攻撃と守備を分けて考えてしまうから「サッカーの本質を学べていない」ことになります。だからこそフットサルを活用することを進めているのです。それは、全員が攻守に関わりを持たなければチームとして成り立たないからです。守備も、攻撃も、カウンターも、判断も、ボールテクニックも、オフ・ザ・ボールのスキルも、サッカーに必要な様々な要素がフットサルに詰まっています。だから、サッカー選手としてジュニア年代で培うベースづくりには最適です。
【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法
<プロフィール>
ミゲル・ロドリゴ
1970年生まれ。スペイン・ヴァレンシア出身。イタリアのルパレンセ・パドヴァやロシアのディナモ・モスクワ、スペインのカハ・セゴビアなどで指揮を執った経歴を持つ。2009年6月〜2016年2月までフットサル日本代表監督を務め、その後、フットサルタイ代表監督に就任し、現在はフットサルベトナム代表監督として手腕を振るう。FIFAインストラクター、スペインサッカー協会フットサル指導者資格を保持。
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