「速く考える」を身につけるには? ミゲルがトレーニングに取り入れる“6つの要素”
2017年12月20日
コラムサッカーは刻々と状況が変わるスポーツなので「考える速度」が求められる。そこで役立つのが「フットサル」だ。サッカーと比較すると、1分間のボールタッチ数が6倍も多いというデータがあるという。ということは、判断を求められる状況に数多く出くわし、リスクを背負う状況にも数多く追い込まれる。サッカーよりもコートが小さいため、常に攻守が切り替わり、その分「考える速度」が必要になる。だから、育成年代でフットサルを取り入れるのが子どもの成長の手助けになる。と、ミゲル・ロドリゴは語る。
【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法
企画・取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部
「頭のないニワトリ」にさせない練習が重要だ
現代サッカーは切り替え、展開の早さが求められています。
だから当然、子どもの頃から素早く考え、素早くプレーすることを身につけなければなりません。そこで、彼らの成長には『練習』と『試合』の2点を考慮して指導することが大切になります。まず良い練習とは「それぞれのトレーニングの中でいい判断をして、素早くプレーさせること」が大きな要素の1つです。そのために私たち指導者は、狭いスペースの中で攻守の切り替えを素早く行う状況を設定し、継続的に『いい攻撃』と『いい守備』をする状況を作らなければなりません。
「練習をどれだけ実践の状況に近づけ、どれだけスペースを小さくし、その中でどれだけ質の高い判断が下せるのか」。
これがいい選手を育てる手段なのです。さらに、試合では『戦う』ことが重要になります。この点については「ジュニア年代からフットサルを取り入れることが大きく役立つ」と考えています。この年代の子どもたちにサッカーとフットサルを練習させた『あるデータ』があります。
同じ選手を比較した場合、1分間でのボールタッチ数はフットサルの方が6倍多いのです。
『常にボールを触れる』ということは、『常に判断して決断を下す』ということの裏返しでもあります。また、『スペースが小さい』ということは『ディフェンスとの距離が近い』ことを示しています。その状況においては、自然に素早く判断してプレーすることが求められます。フットサルはボールを奪われるとすぐ失点につながる可能性があるから、常にそのリスクを背負ってプレーするわけです。そうすると、必然的にプレーに対するインテンシティが高まります。
これがサッカーの場合だと「スペースが広く、ゴール間の距離が遠いから失点のリスクもなく、プレーに対するインテンシティが低くて大丈夫」です。だからこそ私は「サッカーにフットサルを組み込むことが子どもたちの上達の助けになる」ことを常々発信し続けているのです。
スペインでは、サッカーに必要不可欠なあらゆる要素を統合した「インテグラル・トレーニング」(※魔法2参照)が当たり前に教えられています。しかし、私も来日からずっと日本のトレーニングを見ていますが、『ボールテクニックはボールテクニック』、『キックはキック』というようにバラバラに分けてトレーニングをしてしまっています。例えば、日本ではボールテクニックのうまい選手を育てますよね? しかし、スペインで同じことをやると、きっとこう言われます。
「頭のないニワトリだ」と。
向こうでは、昔から「ニワトリは頭だけを切り落としても体だけで走る」という言い伝えがあります。つまり、頭を使わずにプレーしていると評価されてしまうのです。これは、スペイン全土で共通する悪しき例えです。
サッカーはボールテクニックを披露するスポーツではありません。
1点でも多くゴールを奪うため、あらゆる要素が必要になるスポーツです。だからこそサッカーのトレーニングは「あらゆる要素が統合されたものでなければならない」と、スペインでは強調されるのです。日本人選手を見て思うのは、1つの要素が飛び抜けた選手はいるということです。
「ドリブルはうまい」
「ボールテクニックはある」
「走るのは速い」… etc.
私は「頭がないニワトリになっている選手が多い」と感じています。すごく運動量があるのに判断ができていないなど…。テクニックを磨く練習メニューも「考える要素が入っていなければ意味がない」し、試合では使えません。
試合の流れを読みながら局面に応じて素早く戦術的な技術を出す能力が高いかどうか。
これが、サッカーをプレーする上で大事なことです。その中には状況判断や集中力など様々なものが必要になるので、私は日頃のトレーニングでそれらを養うことが重要だと訴えています。
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