「つまらない」練習はすぐに変えるべき。“飽きやすい”子どもの集中力を持続させるために必要な指導者の工夫

2018年01月10日

コラム

バーモントカップ02

バリエーションをつけるには「時間の有効活用が必要」だ

 例えば、シュート練習が必要な子どもたちがいます。

 週1〜2回は、同じ練習を繰り返すこともあるかもしれません。しかし、『シュートを決める』という目的を同じように達成するならば、私はそれぞれ違う練習メニューを子どもたちにやらせます。同じ目的でも様々なバリエーションを持たせることは十分に可能です。単に『目的を果たすまでの過程』が異なるだけです。

 カウンターからのシュートもあれば、 セットプレーからのシュートもあります。プレスをかけてボールを奪ってからのシュートもあるし、サイドでの1対1の突破からのシュートもある。パスを受けてからセンタリングを仕掛けてのシュートも状況としては起こり得るでしょう。様々な形をたくさん経験するには集中力が入りますし、頭が柔軟でなければ対応できません。

 問題が唯一あるとすれば「どう時間を有効に使うのか」ということ。

 練習にバリエーションをつけると、必然的に説明をするのに時間を要します。数人をピックアップし、デモンストレーションとしてみんなの前でやらせても何度かやり直す必要があり、子どもたちが練習の意図を飲み込むのに時間がかかります。だから、いつも次のようにアドバイスしています。

「1日のトレーニングの構成をテーマに応じて段階を踏ませるように少しずつ変え、ジュニア年代の子どもたちがより早く一つのテーマを理解できるように練習メニューを考案すること」。

 例えば、5〜8日間の練習日がとれ、2時間ほどのトレーニングができるとします。そんな場合も反復練習を繰り返すのではなく、説明に3〜4分の時間をとられたとしても練習メニューに変化を加えた方がその効果は高いと思っています。結果として効果を考慮したら、説明に時間をとられたとしても「子どもたちの頭の柔軟性や判断力を上げてあげる方が絶対にいい」はずです。この点には、揺るぎない自信を持っています。だから、子どもたちが「つまらない練習だなー」と感じているならばすぐに切り替え、違うバリエーションの練習メニューをさせるのは子どもたちの上達には必要不可欠なことです。ジュニア年代の子どもたちは飽きやすく、集中力を持続させるのも指導者としての大切な役目です。なぜなら、子どもたちはいつも『頭が目覚めた状態』で練習しないと上達しないからです。

 そういう意味では、フットサルの活用には2つのメリットがあります。

 それは『メンタル面』と『モチベーション』です。早く考えることを習慣づけるフットサルでは、メンタル面の影響は非常に大きいものです。ちなみに、このメンタル面とは「判断や試合状況の読み取り、試合の流れの理解や把握などに基づいた解釈」です。

 ゴールデンエイジを迎えるジュニア年代でフットサルをすると、個々のボールタッチが増え、数多くの局面に出くわして何度も素早く考えます。さらに攻守の切り替えが多く、サッカーに必要な数多く体験をするため、自然に集中力を高めなければなりません。と同時に、様々な局面でプレーすれば子供たちはたくさんの刺激を受けるため、彼らのモチベーションも上がります。それに自然に、判断と決断を素早くしなければならないフットサルは、頭の回転の速さが身につけられます。

 その状態でサッカーをプレーすれば、時間が長く感じられるし、相手との距離も長く感じます。そうすると、子どもたちは余裕が生まれます。つまり、ゆとりをもってプレーできるようになるのです。フットサルをしていれば、より広いスペースでプレーするサッカーに役立てるため、相互理解をした上でフィードバックが可能になり、練習にさらなる発展性を持たせることができます。

 日本人の子どもをはじめ、サッカー選手たちは「こうしなさい」と伝えても繰り返しやることができます。しかし、スペイン人など海外の選手たちはそうすることができません。

「毎回、一列に並んでください」。

 そう、号令をかけても毎回2、3列になるでしょう(笑)。それは国民性によるところですが、だからこそ日本人の子どもたちには数多くのバリエーションをつけた練習メニューをさせた方がいいと思います。その代わり、子どもたちの集中力は15分ほどの時間しか持続しません。それをいかに長く継続させるかが練習の質を高めることにつながります。

 だから、特に低学年になるほどトレーニングにゲーム性を持たせることも手段の一つです。その年代の子どもたちに対し、毎回「一列に並んで!」というようなトレーニングをさせても退屈するだけです。だから、一人ひとりの指導者が「多くのバリエーションを持って練習に臨むこと」が、子どもたちの成長の上では非常に大きなポイントだと考えています。

【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法


<プロフィール>
ミゲル・ロドリゴ

1970年生まれ。スペイン・ヴァレンシア出身。イタリアのルパレンセ・パドヴァやロシアのディナモ・モスクワ、スペインのカハ・セゴビアなどで指揮を執った経歴を持つ。2009年6月〜2016年2月までフットサル日本代表監督を務め、その後、フットサルタイ代表監督に就任し、現在はフットサルベトナム代表監督として手腕を振るう。FIFAインストラクター、スペインサッカー協会フットサル指導者資格を保持。

 

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