選手と接するうえで気をつけるべき“平等”。正しい「評価基準」の伝え方
2018年01月31日
コラム子どもに寄り添った指導が一人ひとり平等かといえば、それは違う。だからこそ評価基準は平等でなければ、チームは崩れバラバラになる。そして、育成年代では、常に評価基準が明確に同じでなければ、子どもたちとの信頼関係が築けない。「チームのため」という気持ちを全員が持っているから、レギュラー争いをして切磋琢磨できるし、仲間のために戦える。そんなチームには明確なルールがあり、明確で平等な評価基準がある。それを子どもに示すことも指導者の重要な役割の一つだ。
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企画・取材・文●木之下潤 写真●Getty Images
評価は平等だが、コミュニケーションは平等ではない!
選手に対する『評価基準と評価の仕方を平等』にすること。
これが、子どもたちに指導を行うときに気をつけなければならないことです。それは大人も同じことが言えます。例えば、フットサル日本代表でもベテランだろうが、若手だろうが変わりません。ただし、個々で接し方やコミュニケーションの図り方は違うことは理解しておく必要があります。なぜなら人によって性格が異なるので、『みんなが平等』というわけにはいきませんから。
経験も違うのに、20歳と30歳の選手に同じように接するわけにはいきません。しゃべり方、叱り方、ミスの修正の仕方、褒め方…みんな平等したらおかしいでしょう。当然、指導者にとって評価判断は一緒です。だからこそ「どうしたら試合にスタメンで使ってもらえるのか」という目的に向かって選手が努力を積み重ねられるのです。チームには、競争と調和が存在しています。
私は代表を『ファミリア=家族』だと思って、指導していました。その理由を少しお話します。例えば、ある二人の選手は所属するクラブが違ったとします。
【1】日本代表のためにすべてを出し切って戦うというスタンス
【2】一仲間、一家族として自分たちは戦っているというスタンス
この二人の選手が、どちらのスタンスでいるかが「勝負をわける最後のところで違いになる」と考えています。試合展開が苦しく、最後のラスト数秒を全力で走り切らないといけないが、もう力が残っていないというときに「代表のために100%が出るのか」、それとも「家族のために105%の力が出るのか」は、選手たちの考え方次第で変わります。きっと限界以上の大きな力が出るのは【2】だと思うし、ジュニア年代の子どもたちでも同じでしょう。
ファミリアという考えは「選手との距離感が近すぎる」という意見もあります。
「監督と選手という上下関係がなくなり、友達のような関係になり、選手が誤解してしまうのではないか」、と。「監督に対する規律やリスペクトが足らないのではないか」と感じる人たちがいるかもしれませんが、私は監督を務めたイタリアやスペインのクラブでもチームを一家族としてとらえ、どの国でも機能しました。それぞれの家庭で、それぞれに違う親子のリスペクトが存在します。だから、問題ありません。もちろん家族を作るのは時間がかかりますし、全く理解できない選手もいます。
フットサル日本代表の選手たちは14名が全員で会話しながら一緒に食事を楽しみ、食後もコーヒーを飲みながらテーブルから離れようとしませんでした。私はチームを立ち上げた当初から、みんなが家族やプライベートの話まで垣根なくできるような雰囲気づくりをしてきました。だから、若手が新しく代表入りしても、ベテランが代表入りしてもすぐに打ち解けられます。ジュニア年代の子どもたちであれば、なおさら簡単に家族になれます。
もしかしたら日本では、特に大人が『ファミリア=家族』に抵抗があるでしょう。もちろん、性格を変えるまでは難しいのも承知しています。だから、子どもたちが様々な過程を踏みながら成長していくように、指導者も目標を立てて少しずつ変わる努力をしてはどうでしょうか。
これまでの練習では、ミスの修正だけにとどまっていたことを、次から褒めることを加えてみるとか、ジェスチャーに気を配ってみるとか、声のトーンに気を向けてみるとか…。
少しずつでいいから子どもと心の距離を縮めていくのです。外から指示を出すだけだった行動を、ピッチ内に入って子どもたちと一緒に走ってみる、成功したらハイタッチしてみる。子どもたちに「コーチ、急に変わったな」と感じさせるのではなく、気づかせないように徐々に変わっていくのです。子どもは変に演じたら大人を信頼しません。当たり前ですが、スペイン人が思うファミリーと日本人が思う家族は違うから、独自の家族観を築き上げていけばいいと思います。
そうなれば、自然に子どもたちも家族の間の決まりごとやルールを理解し、監督やコーチの評価基準と評価の仕方もわかるようになります。そうすると、必然的に子ども自身が自分のプレーを出し切るための判断基準や優先順位を構築していけます。
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