「どうやって試合経験を積むのか」。この問題は日本サッカー界全体で解決すべき課題である【5月特集】

2018年05月16日

コラム

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「どうやって試合経験を積むのか」だけは全体で考えるしかない

 
 前後半制か、ピリオド制か
 トーナメント制か、リーグ戦か … etc.

「どうやって試合経験を積んだらいいのか」ということに深く関与するこれらの問題は一指導者、一クラブだけで話ができるレベルではない。これは日本サッカー全体で向き合っていかなければいけない課題である。現場の指導者だけではどうにもできないし、必死に子どもたちの経験に反映しようと努力をしても限界がある。

 そういう問題について指導者も、選手や保護者に筋道を立てて正論を言われたら何も言い返せないが、その理由は「そもそも現状の育成環境がそうなっているから」なのだ。指導者たちは子どもたちのために必死に戦っている。だからこそこの課題を解決するには、その環境づくりに携わってきたJFAならびに各都道府県協会が中心となり、ジュニアに関わる全員が協力して解決するしかない。

 例えば、全国大会廃止。

 現時点で無理なことは百も承知だ。すでに予算が組まれ、多くの人間が関わる以上はこの仕組みを変えるには長い時間を要する。ならば、すべての全国大会が6年生を対象にしなければならない理由は何なのだろうか? 例えば、バーモントカップは5人制と少人数サッカーという位置付けにあるから、4年生の大会ではダメなのだろうか? 「JA全農杯チビリンピック」にしても東海地区や関西地区の指導者に話を聞くと「十数年前、最初の頃は5年生で」というような話があったのなら、5年生でもいいのではないだろうか?

 なぜ、こういう指摘をしているのか?

 その訳は、主に2つある。一つ目は、現在の6年生のスケジュールが過密すぎることだ。全国大会の予選、地区大会、県大会、地域の市町村大会にレベルごとのトレセンといった次々にスケジュールが埋まるなか、自分に向き合った落ち着いた環境でトレーニングをできるのかといえば疑問である。

 さらに週2〜3回の練習に週1回の試合もしくは大会という日常を過ごしているが、そんなサッカー漬けの毎日ばかりを過ごすことが本当に子どものためになっているのだろうか?そこで「JFA指導指針2017」に記載されてある「〜U12年代 週間トレーニングスケジュール」を見てほしい。現在は、JFAが示す指針からはかけ離れたものになっているクラブが多いのではないだろうか。この指針は子どもたちが常に高いパフォーマンスを発揮するための目安でもある。つまり、身体的精神的な成長と疲労の蓄積によるケガ防止ということも考慮に入れられている。

図1

※参照:「JFA指導指針2017」

 そして、二つ目は全日本少年サッカー大会の予選にリーグ戦を組み込んでいることだ。リーグ戦は本来「実力が近い対戦相手」と年間を通じて試合を行い、レベルに応じた成長を促すことが目的ではないのだろうか。それなのに現在のリーグ戦に目を向けると、過密日程な上に1日に2試合を消化したりしている。リーグ戦は1日1試合を集中して戦うことに意義があり、同じ相手と最低でも2試合戦うから自分たちの課題や成長を客観的にはかることができるのではないのだろうか。

 JFAもリーグ戦文化を根づかせようと動いてはいるが、今のやり方だと本末転倒だし、リーグ戦本来の意図が地方の細部にまで行き渡るはずがない。もしリーグ戦に全員出場を条件に加えたら、自然にチーム在籍数も定まってくる。選手を多く抱えるクラブは2チーム登録したりすればいいし、逆に在籍数が少ないチームは少ない同士で合同チームとして登録をしてもいい。

 ただ何を言おうが、一つ断言できることは所属クラブでしか「公式戦を通じた試合経験を積む場がない」のだ。

 だから、「どうやって試合経験を積んだらいいのか」は日本全体で解決すべき課題なのである。現状ある仕組みを変えるには、JFAと各都道府県協会がメスを入れるしかない。まずは全国規模で開催される一つ一つの大会を精査し、カテゴリーや登録人数、大会ルールを11人制サッカーへとつながっていくように統一化を図っていかなければならない。それが「子どもたちのため」である。

 もちろん、まだまだ課題はたくさんある。しかし、今目の前にいる子どもたちがプレーしている以上は立ち止まることはできない。だからこそ「どうやって試合経験を積んだらいいのか」と向き合うには、年間スケジュールから目を反らせない。育成年代の目的は「子どもたちの成長」である。それを実践できる環境を作るには何をすべきか、もう一度みんなで考えてみてほしい。


【特集】選手の出場機会を考える


 

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