​​その練習試合、本当に必要ですか? 「育成」とは何か/指導者座談会4【9月特集】

2018年09月28日

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9月の特集のテーマは「改めて考えたい”4種年代”の問題点」である。今、ジュニア年代で何が起きているのか?現場に立つ指導者3人の方々に集まってもらいジュニサカWEBチームを含む6人で座談会を実施し、4種年代の問題点を挙げていった。第4回のテーマは「ジュニア年代の試合環境」についてである。子どもの成長のためにはどんな試合環境が適しているのか、そんな議論が展開された。前回(チームをどうオーガナイズするのか。指導者が考えるべき「環境設定」)の続きからお届けしていく。

【9月特集】改めて考えたい「4種年代」の問題点

■座談会メンバー
アーセナルサッカースクール市川:南里雅也
大豆戸FC:末本亮太
FC大泉学園:小嶋快
ジュニサカWEB編集長:高橋大地
ジュニサカWEB編集部:中澤捺生
ライター:木之下潤

取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部、佐藤博之、山本浩之


選手の試合経験を考え『U-11プレミアリーグ』は3ピリオド制に

末本「今夏は関西のとある大会に初めて出場しました。夏の炎天下のなか、1日4試合を戦う大会です。どうしても3試合目と4試合目は試合の強度が下がります。7月末の大会での敗戦と、今後の選手たちの幅を広げるために参加することにしました。選手たちには『中学校や高校になったら1日2試合とか3試合とかやらされることがある。だから、今大会はやってやろうじゃないか』と発破をかけて戦いました。

 そのための準備として約2週間たっぷりとオフを取り、その後トレーニングを重ねて大会に臨んだのでメンタル、フィジカルともに充実していました。私たちのクラブ哲学からいえば、本来はありえないレギュレーションでしたが、選手たちはできてしまうんです。しかし、そこは勘違いすることなく、今後も1試合に全ての力を出せるような習慣づくりはやっていきたいです。

 1日4試合ですが、予選リーグを勝っていくと後半になれば同じように勝ち上がってきたレベルの高いチームと当たるようになっているので、いかに選手交代でやりくりしながら質を落とさず試合に勝っていくかが大切になるんです。もう、違う大会でしたね。でも、日本にはそういう大会がまだまだあります」

南里「ワンデー大会とか、招待大会はまだ多くそういうものがありますよね。うちも割り切っていきますし、招待大会についてはスケジュールを見ながらかなり選別して出場しています。そういう大会に行けば、アウェーの雰囲気は味わえますから」

高橋「ジュニアだと3ピリオド制だとか、特殊なレギュレーションもあります。それについてはどう思いますか?」

南里「『U-11プレミアリーグ』も今シーズンから3ピリオド制に変更しました。実は、リーグ立ち上げ当初から3ピリオド目まで試合をしていたんです。でも、3ピリオド目は勝敗と無関係でした。チームの勝負に関係のないトレーニングマッチを繰り返したところで、控えにいる選手の試合経験にはつながらないという思いが指導者たちの中にずっとあり、今シーズンから3ピリオド目を公式戦として組み込みました。

 その理由は、3ピリオド目は試合の強度がすごく低かったからです。それならば、そこも真剣勝負の場にして控えにいる選手たちも15分しっかり試合に出た方が選手としての経験が大きい!

 昨シーズンまでも選手交代はありましたが、出場した時間が3分という場合もあったわけです。そういうことを考えるならプレータイムを確保する意味で『15分は必ず試合に出場する』というようなレギュレーションに切り替えた方がいいと、運営サイドで一致し今シーズンからの変更となりました。

 選手がしっかりと公式戦に出場したという経験を積む。それがあるから「自分も勝負のかかった試合に出場している一員だ」という意識でトレーニングにも真剣さが増すはずです。失敗したとしても、もう一度トレーニングでやり返してやろうと、また頑張るわけです。結果として、チーム全体の底上げにもつながっていきます。

 これまで通りに前後半の勝負をしてしまうと、指導者も勝たなきゃいけない意識にとらわれ、少数精鋭で試合に臨んでしまいますから。そうなると、3ピリオド目のトレーニングマッチは、子どもたちの精神的なことを考えても試合経験としては半減してしまいます。

 運営サイドとしては『ベンチにいる選手を全員出す中で、結果まで求めなければいけないのかな』と。そうすることで、指導者の力も上がります。そして、保護者も嬉しい!せっかく子どもの応援に行ったのに出場が2分なんて悲しいですよ。でも、15分かもしれませんが、ちゃんと公式戦に出ることは子どもも保護者も前向きになっていきますし、チャレンジする姿勢に変わっていくと思うんです。

 クラブにとっては3ピリオド制で公式のリーグ戦を経験したことがないので、どうしてもうまくいかないことがたくさん出てきます。でも、育成年代では公式戦に出場することが大事で、U-11プレミアリーグもここから整備していくのであれば 『いかに公式戦に近い状況を作り出していくか』が私たち運営サイドの課題でもあります。

 現在は、5年生を対象としたリーグ戦しか運営していませんが、今後は4年生、3年生ぐらいまでは年間を通じたリーグ戦を作っていくことも考えています。

 当然、6年生になれば前後半制になって、よりサッカーに近い環境になります。段階を踏む意味で私たちは3ピリオド制にしたし、今シーズンからはオフサイドラインをペナルティラインに設定しました。そうすることでハイプレス、ハイラインを取ることができなくなります。

 そうするとどうなるかといえば、一人ひとりのプレーエリアが広がります。ちょっと前に出たぐらいではオフサイドにならないからフォワードは思い切ってディフェンスの背後を取る動きを自然にしていくわけです。すると、ディフェンスも背後を取られたくないからそこで戦術を覚えていきます。

 必然的に、8人制でもチーム一人ひとりのプレーエリアとプレーする時間が出来上がっていくので、戦術的な駆け引きが生まれてきます。そういう意味では、スペインがやってきた育成というのは非常に参考になるな、と。

 私は自分のチームでもリフレインしながらやるので、すごくいいなと実感しています。もちろん、いろんな価値観があると思いますが、普段試合に出場していない子どもたちが非常にトレーニングの強度が上がり、成長してきたのを感じているところです」

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