身長は「遺伝」なのか?子どもの背を伸ばす「2つ」の要素

2018年10月06日

フィジカル/メディカル
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身長はすべて遺伝できまるわけではありません。身長を伸ばすためには日々の生活習慣が重要になってきます。成長期である子どもの背を伸ばすためにはどうしたらいいのでしょうか? 加藤晴康先生(立教大学 スポーツウエルネス学科 教授)が医学的観点からお答えしていきます。

再構成●ジュニサカ編集部 著●加藤晴康 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部

幼児・小学生のための身長をグングン伸ばすための本』から一部転載


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Q. 背が伸びるために必要な要素は何ですか?

回答
睡眠と栄養、それにつきます。


夜には細胞分裂のスイッチをオンにする準備を

 背を伸ばすために必要なのは、睡眠と栄養です。一般的に言われていることですが、その二つにつきるでしょう。とくに大切なのは睡眠です。しっかりと睡眠をとれば、熟睡中に多量に「成長ホルモン」が分泌されます。これは成長期に骨を伸ばすための大切なホルモン。軟骨に働きかけて骨にして成長させ、背を伸ばします。この成長ホルモンは夜間の熟睡中、一定の決まった時間になるとたくさん分泌されます。いつ寝るか、どれだけ寝るかで分泌量が大きく変わってくるのです。
 
 なぜ、成長ホルモンは、深夜にたくさんの量が分泌されるのでしょうか?
 
 皆さんの中には、日中より夜間に体の痛みを感じたり、具合の悪いところに敏感になったりする現象を経験したことがあると思います。つまり人体では、夜間の、成長ホルモンが分泌されている間に、さかんに細胞分裂が起こっているのです。そして、熟睡中に骨を伸ばしたり、傷の修復を行っています。
 
 なぜ、夜間なのか。それにはこんな説があります。

 細胞分裂では、細胞内の遺伝子がコピーされて増えていきます。遺伝子のコピー時にはどうしても遺伝子に傷がつきやすいという問題があります。そのため、細胞分裂はできるだけ守られた状態で作業を行いたい。日中は、紫外線や宇宙線などの影響があります。紫外線などの光は、人にとって必要である反面、遺伝子を傷つける可能性もあるもの。だから、細胞分裂はそれらを完全にシャットアウトできる深夜を選んで行われている……。一説ですが、かなり説得力のある話だと思います。

身長

日内リズムが乱れると体が狂う

 成長ホルモンが夜間に分泌されることでわかるように、人体の一つひとつの細胞は、いつ夜で、いつ朝かということをしっかり意識し、時を刻んでいるのです。夜になれば陽が沈んでいることを認識し、深夜にぐっすりと熟睡する。朝日を浴びれば目覚めます。

 このリズムは、日内リズム(サーカディアンリズム)ともいわれています。こうした人体生理にそった生活をすることは、健康な生活を送る上で、大きな意味があります。生活が不規則になり、日内リズムが乱れてしまうと、体が狂います。不健康になり、成長も停滞してしまいます。
 
 身長を伸ばしたいのであれば、まずは、夜は早く寝て深夜には熟睡し、細胞分裂をするスイッチをオンにしてあげる準備をしないといけません。遅くまでゲームをしたり、遅くに食事をしているようだと、細胞分裂のスイッチは入りません。

 次に重要なのは、しっかり食事(栄養)をとることです。成長期にダイエットをしない。スポーツをしている場合は、練習のしすぎで栄養面で不足しないように気をつけます。
 
 また、原料だけあっても、原料は使われないと意味がありません。石炭だけたくさんあっても、石炭を炉にくべる人がいなければ機関車は動かないのと同じです。では

 栄養は何によって使われるかというと、それが、成長ホルモンなのです。成長ホルモンが、細胞に指令を出し、それぞれの細胞が原料を使うわけです。
 
 つまり、栄養を活動状態にするには、体の細胞が元気に働いていないといけません。そのためにも、規則正しい生活習慣というものがやはり一番大事になってくるのです。
 
 朝しっかり食事をとると、「朝が来た」と細胞の時計が正確に働きます。食事時間をきちんと作ることで日内リズムが作られていきます。これらの規則正しい生活活動が、成長ホルモンの分泌を促しているのです。

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Q. 親が小さくても背が伸びる可能性はある?

回答
遺伝の影響は90パーセント。でも遺伝だけではありません。


 90パーセントは遺伝と言われているとおり、たしかに両親の身長と子どもの最終身長は関係があります。両親ともに身長が低い、という場合に、子どもが将来どれだけ背が伸びるかを予測した場合、確率的に言うと、平均身長を超える可能性はあまりない、ということになります。
 
 両親の身長を使って、子どもの最終的な身長を予測する計算式があります。
 
 かなり昔から日本体育協会が出しているものです。この計算式で求められる数字は目標身長と言われています。
 
 男の子の場合は、(父の身長+母の身長+ 13・0)÷2+2・0 。女子の場合は、(父の身長+母の身長
-13・0)÷2+ 2・0 となります。
 
 しかし、これはあくまで予測される最終身長の平均値です。この数センチ前後の幅の中におさまっているのが普通ですが、それより低くなることがあれば、高くなることもある。必ずしも、この例にあてはまるわけではありません。
 
 両親ともに背が低い場合は、子どもが平均より高くなる(伸びる)可能性は少なくなるものの、両親が小さくてもある程度、高くなる場合もあります。お父さんが高くてお母さんが低い、もしくは、お父さんは低いけれどお母さんは高い、などという場合はもちろん子どもの背が高くなる可能性はより大きいでしょう。
 
 また、たとえば遺伝の影響を考えて、背が高くなりそうにないから、と好きなスポーツを断念したりする必要はありません。
 
 親の身長で出した目標身長は、将来のことを考えるときに過度な期待をしない、冷静な判断するための材料、としておく一方で、目標身長で子どもの可能性をふさがないようにしてほしいと思います。
 
 遺伝のみでは決まらないので、成長期には十分に睡眠、栄養をとって、体が伸びる能力を最大限に引き出しましょう。

 


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