息子が所属するU9のアシスタントコーチとしてできること【子育て奮闘記vol.2 by「中野吉之伴 子どもと育つ」】
2018年12月16日
コラム
我が子への感情は別物だ
歯がゆい思いになるのは愛情の裏返しとも言えるし、信頼・期待をすごくしているからでもある。でも、それがこの負担にならないように気を配らなければならない。言われたとおりにできると思うのがそもそもの間違いなのだから。
そうした話をバスティアンにするようにしている。彼自身の努力もあって、少しずつ怒鳴る頻度は減ってきている。監督はバスティアンだから、彼の練習メニューを尊重する。自分から「こっちの方がいいよ」とは言わない。バスティアンが持ってくる練習メニューをより楽しく、より効果的に行えるようにサポートするのがこのチームにおける私の役割だ。
そして、このチームにおいて自分の立ち位置は緩和剤になることだと思っている。バスティアンが引き締め、私がゆるめる。練習中は集中する、休憩中は思いっきりふざける。ケンカがあったら話を聞く。そういう役割分担ができた方がお互いにやりやすい。
この前の練習で、最後のミニゲームの時にちょっと激しい競り合いで一人の子が泣きだした。マティだった。もう一人の子は「ファウルじゃないよ」と言っている。確かに正当なチャージでの競り合いだったが、でもファールではないから問題ないわけでない。仲間が泣いているのに、自分の正当性を主張することが正しいとは思わない。私はみんなにも聞こえるように大きな声で話した。
「ファウルでなければ何をやっていいわけではないんだ。お互いに思いやりがなければならない。みんな一生懸命にサッカーをやっていたら、ケガをしてしまうこともある。でも、ケガをしていいわけじゃないだろう?そうした時は一度落ち着こうよ。味方でも相手チームでもケガをした子をいたわって、深呼吸して、『よし、またここからがんばろう』と気持ちを入れ替えよう」
子どもたちはうなづいて、倒れている子に手を差し伸ばしていた。マティがFKを蹴るところからミニゲームを再開ということに。涙をぬぐってグッと顔を上げたマティを見て、私はその場から離れようとした。と次の瞬間、直接ゴールを狙ったそのシュートが私の背中に見事直撃。「ぬぉあああ」大げさに倒れる私。そんな私の様子を見て笑い出す子どもたち。振り返ると「わざとじゃないよ」と両手を動かしながら、でも笑いをこらえているマティがいた。
「おい、助けてくれるんじゃないのか?」
そういいながらも私も笑っていた。こういう空気感がいいじゃないか。本気でサッカーできて、感情をぶつけられて、感情を抑える時間があって、そして笑顔があって。何もしなくていいなんてことはない。でも、何かをしなければならないなんて義務があるわけじゃない。「人間性が」とか、「社会性が」なんて押しつけは重荷にしかならない。お互いを大事にし合う。そこで生まれてくるものが本物なのだと、私は思うのだ。
<関連リンク>
・中野吉之伴 子どもと育つ
<プロフィール>
中野 吉之伴(指導者/ジャーナリスト) twitter@kichinosuken
1977年、秋田生まれ。 武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成年代指導のノウハウを学ぶためにドイツへ渡る。現地でSCフライブルクU-15チームでの研修など様々な現場でサッカーを学び、2009年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)。2015年から日本帰国時に全国でサッカー講習会を開催し、よりグラスルーツに寄り添った活動を行う。 2017年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」を配信スタート
▼主な指導歴
「フライブルガーFC(元ブンデスリーガクラブ)U-16監督/U-16・18総監督」/「FCアウゲン(U-19・3部リーグ)U-19ヘッドコーチ/U-15監督」/「SVホッホドルフ/U-8コーチ」
▼著書・監修本
「サッカードイツ流タテの突破力」(池田書店 ※監修/2016年)/「サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン ※著者/2016年)/「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社 ※著者/2017年)
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